日本版GPS衛星「みちびき5号機」を乗せたH3ロケット8号機、いよいよ打ち上げへ

日本の新しい主力ロケット「H3ロケット」8号機が、準天頂衛星システム「みちびき5号機」を載せて、鹿児島県・種子島宇宙センターからまもなく打ち上げられます。今回の打ち上げは、H3ロケットにとって6機連続成功を目指す重要なミッションであり、日本版GPSと呼ばれる「みちびき」シリーズの拡充という点でも、大きな節目となります。

打ち上げの日時と場所

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、「H3ロケット8号機」による「みちびき5号機」の打ち上げについて、詳しい日時を次のように発表しています。

  • 打ち上げ日:2025年12月17日(水)
  • 打ち上げ時刻:11時10分00秒(日本標準時)
  • 打ち上げ時間帯:11時10分00秒~11時24分30秒
  • 打ち上げ予備期間:2025年12月18日(木)~2026年1月31日(土)
  • 打ち上げ場所:種子島宇宙センター 大型ロケット発射場(鹿児島県)

予備期間は、天候や機体の状況などで打ち上げができない場合に備えて設けられています。期間中の打ち上げ時間帯は、日ごとに別途設定されることになっています。

延期を乗り越えて迎える「本番」

もともと「みちびき5号機」の打ち上げは、もう少し早い時期に予定されていましたが、H3ロケット8号機の第2段に搭載された機器(IMU:慣性センサユニット)に確認が必要な事象が見つかったため、一度延期されていました。

JAXAは調査を行い、その結果原因を特定し、対策処置を完了したと発表。これを受けて、2025年12月17日を新たな打ち上げ日として再設定しています。 安全性と信頼性を最優先する姿勢が、ここからもうかがえます。

発射地点へ移動したH3ロケット8号機

打ち上げ前日となる12月16日夜、H3ロケット8号機の機体は、種子島宇宙センター内の組立棟から発射地点へと移動しました。

報道によると、機体の移動作業は16日午後9時に開始され、全長約57メートルにもなるロケットが、約30分ほどかけてゆっくりと発射地点へ運ばれたということです。 夜の種子島で、巨大なロケットが静かに移動する様子は、いよいよ打ち上げ本番が近づいていることを実感させる光景です。

読売新聞の動画でも、組立棟から姿を現し、発射台へ向かうH3ロケット8号機の様子が伝えられています。 こうした最終準備は、機体と地上設備の状態を細かく確認しながら慎重に進められています。

H3ロケットとは? 日本の新しい主力ロケット

H3ロケットは、JAXAと三菱重工業が開発した、日本の新しい主力ロケットです。従来の「H-IIA」ロケットの後継として開発され、コストの低減と打ち上げ能力の向上、そして高い信頼性の両立を目指しています。

H3ロケット8号機は、そのシリーズの1機であり、今回のミッションでは準天頂衛星システム「みちびき5号機」を宇宙へ届ける役割を担います。今回の打ち上げが成功すれば、H3シリーズとして6機連続の成功という節目を迎えることになり、日本の宇宙輸送能力の安定性を国内外に示す機会にもなります。

「みちびき」とは? 日本版GPSの要となる衛星

今回の主役のひとつが、H3ロケット8号機に搭載される「みちびき5号機」です。みちびきは、内閣府やJAXAなどが進める準天頂衛星システム(QZSS)の一部で、「日本版GPS」と呼ばれています。

みちびきは、日本やその周辺地域の上空に長くとどまりやすい特殊な軌道を利用し、カーナビやスマートフォンの位置情報をより正確にするための測位信号を送る衛星です。 アメリカのGPS信号と組み合わせて利用することで、都市部のビル街や山間部など、これまで誤差が大きくなりがちだった場所でも、より正確な位置情報を得やすくなります。

さらに、「みちびき」は災害時の情報発信にも役立つとされています。 通信インフラが被害を受けた際に、みちびきの機能を使って重要な情報を広く届ける仕組みが整えられており、防災・減災の観点からも期待が高まっています。

「みちびき5号機」の役割と今後の計画

今回打ち上げられるみちびき5号機は、日本版GPSのサービスを強化し、システム全体の信頼性を高めるための重要な1機です。打ち上げ後は、予定どおりであれば打ち上げから約29分後にロケットから分離し、所定の軌道へ投入される計画です。

政府は将来的に、準天頂衛星システム「みちびき」を7機体制とすることを目指しており、その一環として2026年2月にも追加の「みちびき」を打ち上げる計画があると報じられています。 7機体制が整うことで、アメリカのGPSなど他国の測位システムに依存せず、日本独自の測位が可能になることを狙っています。

これにより、日常生活で使われるスマートフォンの地図アプリから、自動運転、農業、建設、物流といった産業分野まで、より高精度で安定した位置情報サービスを提供できるようになると期待されています。

打ち上げライブ配信への注目

今回のH3ロケット8号機の打ち上げは、テレビ局やインターネット配信などを通じてライブ中継が行われる予定です。ニュースでは「【ライブ】H3ロケット8号機打ち上げ ~鹿児島・種子島宇宙センター~」といった形で紹介されており、多くの人がリアルタイムで空へ向かうロケットの姿を見守ることになりそうです。

ロケットの打ち上げは、専門的な技術の結晶であると同時に、一般の人々にとっても心が高鳴るイベントです。打ち上げの瞬間、エンジン点火から離昇、そして雲の上へと消えていくまでのわずかな時間には、技術者たちの長年の努力と、日本の宇宙開発の未来への期待が凝縮されています。

「信頼性」を重視したH3ロケット8号機のミッション

ニュースでは、H3ロケット8号機の打ち上げ責任者が、「より信頼性を高めた」とコメントしていることも伝えられています。H3ロケットは、開発当初からコストと信頼性のバランスを追求してきたロケットであり、1回1回の打ち上げが、その評価を積み上げていく大切な機会となっています。

今回の打ち上げに向けては、第2段のIMUに関する事象が見つかった際も、拙速に進めるのではなく、原因をきちんと調査し、対策を施したうえで再設定を行うというプロセスがとられました。 この慎重な姿勢が、ロケットの「信頼性」を高めていく基盤になっています。

H3ロケット8号機の成功は、今後の商業衛星打ち上げや、さらなる「みちびき」衛星の打ち上げ、さらには将来の月・惑星探査ミッションなど、多様な宇宙計画の実現にも良い影響を与えると考えられます。

私たちの暮らしと宇宙開発のつながり

ロケットや衛星というと、まだまだ「遠い世界の話」と感じる方もいるかもしれません。しかし、今回の「みちびき5号機」やH3ロケットのミッションは、実は私たちの日常生活と深く結びついている取り組みです。

  • スマートフォンの地図アプリやカーナビの位置情報の精度向上
  • 災害時の緊急情報配信の信頼性向上
  • 自動運転やドローン、農業機械などの高精度な測位が必要な分野での活用
  • 建設・測量・物流など、日本の産業を支えるインフラとしての利用

こうした多くの場面で、みちびきやH3ロケットによる宇宙開発の成果が役立っています。宇宙というと壮大なイメージがありますが、その技術は私たちの身近な「便利さ」や「安全・安心」を静かに支えているのです。

打ち上げ成功への期待

H3ロケット8号機の打ち上げは、日本の宇宙開発の信頼性をさらに高めるとともに、日本版GPS「みちびき」システムの充実という点でも大きな意味を持つミッションです。

ロケットが予定どおり11時10分に種子島の発射台から飛び立ち、およそ29分後に「みちびき5号機」を軌道へと送り届けることができれば、H3ロケットは6機連続成功という実績を重ねることになります。

多くの人々が見守るなかでの挑戦は、技術者たちにとって大きなプレッシャーでもありますが、その先には、日本と世界の宇宙利用をさらに広げていく可能性が広がっています。これからも、日本のロケットと衛星が、私たちの暮らしと未来を静かに支えていく存在であり続けることが期待されます。

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