UBSがマイクロン・テクノロジー(MU)の業績予想を引き上げ AI時代を支える半導体3つの注目トピック
この記事では、半導体メモリ大手マイクロン・テクノロジー(ティッカー:MU)に対するUBSの業績予想引き上げのニュースを軸に、ASMLとTSMC、そしてAI・量子コンピューティング関連の小型株という、いま市場で話題になっている3つのトピックをやさしく整理してお伝えします。
難しい専門用語はできるだけ避けつつ、「なぜ今これらの企業が注目されているのか」を、投資初心者の方にもイメージしやすいように解説していきます。
1. UBSがMU(マイクロン)のEPS予想を引き上げた理由
UBSがマイクロン・テクノロジー(MU)のEPS(1株当たり利益)予想を引き上げた背景には、主にDRAMとNANDフラッシュメモリの価格改善があります。
DRAMとNANDは、スマートフォン、PC、サーバー、そして最近では生成AI用サーバーにも欠かせないメモリ部品です。AIの学習や推論では、膨大なデータを素早く読み書きする必要があり、そのために高性能メモリへの需要が急増しています。
半導体メモリの市況は、需要と供給のバランスによって価格が大きく変動します。数年前までは供給過多で価格が下落し、各社の業績を圧迫していましたが、生産調整の進展とAIサーバー向け需要の拡大により、DRAM・NANDともに価格が持ち直してきています。
その結果、UBSはマイクロンの収益力が以前の想定よりも強まると判断し、EPS予想を引き上げたとみられます。
特にAIサーバー向けの高帯域メモリ(HBMなど)や高性能DRAMは、GPUやAIアクセラレータとセットで導入されることが多く、単価も高めです。こうした分野での需要が、マイクロンの収益性改善への期待につながっています。
2. ASML vs. TSMC ―「どちらがより魅力的なAI銘柄か」を考える視点
次に話題となっているのが、「ASMLとTSMCのどちらがより有望なAI関連株か」という議論です。
どちらもAI半導体のサプライチェーンにおいて非常に重要な役割を担っていますが、ビジネスの中身は大きく異なります。
2-1. TSMC:AIチップを実際に「つくる」世界最大のファウンドリ
TSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)は、世界最大の半導体受託製造会社(ファウンドリ)です。NVIDIAやAMD、Qualcommといった設計専業メーカーのチップを実際に製造しており、AI向けGPUやAIアクセラレータの生産を担う中心的存在とされています。
決算でもAI関連需要の大きさがはっきりと表れています。2025年1〜3月期には、売上が前年同期比で35.3%増の255.3億ドル、営業利益率は約48.5%と非常に高い水準を記録しました。
売上の58%が3nm・5nmといった先端プロセスによるもので、7nmまで含めると73%が7nm以下と、AI向けを含む先端チップの比率がきわめて高い状態です。
TSMCは、AIチップの需要を直接的に反映する企業とみなされており、AIブームの恩恵をダイレクトに受けている代表的な銘柄といえます。
2-2. ASML:最先端チップ製造に不可欠な露光装置をほぼ独占
一方のASMLは、オランダに本拠を置く半導体製造装置メーカーで、特にEUV(極端紫外線)リソグラフィ装置で世界的な独占的地位を持っています。
このEUV装置がなければ、TSMCを含む主要半導体メーカーは3nmなどの最先端プロセスでチップを量産することができません。
2025年1〜3月期のASMLの売上は、前年同期比46.4%増の77.42億ユーロと好調で、営業利益率も35.4%と高い水準となっています。装置販売だけでなく、すでに設置した装置の保守・メンテナンスサービスからも安定した収入を得ている点が特徴です。
ASMLは、AIチップを「つくる」企業ではありませんが、AIチップをつくるTSMCなどが設備投資をするときに必ず頼る相手であり、「AI製造インフラ」を支える存在と言えます。
2-3. どちらが「より良い」AI株なのか?見方の違い
ASMLとTSMCは、どちらもAIの普及に欠かせない企業ですが、「どちらがより魅力的か」は投資家の視点によって変わるところです。
- TSMC:
AIチップ需要の増減が業績により直接的に反映される。AIサーバー向けGPUやアクセラレータの増産が続く局面では、売上・利益の伸びが目立ちやすい。 - ASML:
AIブームを受けた各社の設備投資の増減が業績に効いてくる。短期的には変動が出やすい一方で、最先端リソグラフィ市場でほぼ独占的なポジションを持ち、構造的な強さがある。
TSMCは、アメリカ市場でも「AIブームの現在地」を知る上での重要指標としてたびたび取り上げられており、2024年7〜9月期の好決算が、AI投資の勢いが依然として強いことを示したという分析もあります。
一方でASMLは、設備認定や納入タイミングの影響で四半期ごとの数字がぶれやすいものの、長期的なAI・HPC需要を背景に高水準の売上と利益を維持していると評価されています。
3. AI&量子コンピューティング関連、2026年に向けた「小型株」への視線
3つ目のニュースは、「AIと量子コンピューティングの次の勝者となりうる小型株」に関する話題です。ここでは、個別銘柄を挙げた詳細な推奨ではなく、どういったタイプの企業に注目が集まりやすいのかという観点で整理します。
3-1. AIブームは続くが、成長ペースには濃淡も
アナリストの多くは、生成AIを含むAIブームが中長期的には続くと見ています。ただし、設備投資と半導体需要の伸び方には段階的な違いがあり、2025年まで高い伸びが続いたあと、2026年には成長ペースがやや鈍化するとの予想も出ています。
このような環境の中で、市場では「すでに大きく評価された大型銘柄」だけでなく、これから本格的に成長が注目される小型株にも目が向けられています。特に、AIサーバーの効率化や量子コンピュータの実用化に欠かせない技術を持つ企業は、テーマ性の強さから取り上げられやすい傾向にあります。
3-2. 小型のAI・量子関連企業に共通する注目ポイント
2026年に向けて「次の勝ち組候補」として名前が挙がることの多い小型株には、次のような特徴があるケースが多いとされています。
- AIインフラの効率化に貢献する技術:
冷却技術、電力効率の改善、先端パッケージング、インターコネクトなど、AIデータセンターの運用コスト削減に直結する分野。 - 量子コンピュータ関連の基盤技術:
量子ビットの制御、誤り訂正、量子ネットワーク、専用材料などのコア技術を持つ企業。 - 特定のニッチ分野で高いシェア:
市場規模はまだ小さくても、特定用途で世界的な存在感を持つ企業は、将来の拡大余地が意識されやすい。
こうした小型株は、TSMCやASMLのような巨大企業に比べると、業績や株価の振れ幅が大きくなりがちです。その一方で、技術的なブレイクスルーや大型顧客との契約によって一気に注目される可能性もあり、テーマ投資の観点からウォッチされることが増えています。
4. 「MU・ASML・TSMC・小型株」をどう位置づけて考えるか
ここまで見てきたように、今回話題になっているニュースは、いずれもAI時代の半導体サプライチェーンに深く関わっています。
- MU(マイクロン):
DRAM・NAND価格の回復とAIサーバー需要を背景に、収益改善期待が高まっているメモリメーカー。 - TSMC:
NVIDIAなどのAIチップ製造を担う中核ファウンドリで、AI需要を最も直接的に反映する企業のひとつ。 - ASML:
TSMCなどの最先端チップ製造に不可欠なEUV露光装置を供給し、AIインフラの「土台」を支える存在。 - AI&量子関連の小型株:
冷却・電力効率・先端パッケージ・量子基盤技術など、次の効率化・高性能化を支えるニッチ分野に強みを持つ企業群。
このように整理してみると、ニュースで取り上げられている企業やテーマは、「AIの処理を担うチップ」・「そのチップを作る設備」・「メモリや周辺技術」という、AIエコシステムのさまざまなレイヤーにまたがっていることがわかります。
投資という観点では、それぞれリスクとリターンの特性が異なるため、「どれが一番良い」というよりも、自分がどのレイヤーに注目したいのか、どの程度の変動リスクを許容できるのかによって、選び方が変わってきます。
この記事が、ニュースで名前を見かけることの多いMU・ASML・TSMC、そしてAI&量子関連の小型株について、「どのような立ち位置の企業なのか」を整理する一助になれば幸いです。



