冬至を前に高まる「団らん」と「運気」 東アジア各地で広がるあたたかな冬至ムーブメント
一年でいちばん昼が短く、夜が長くなる冬至は、日本や中国をはじめ東アジアの国々で古くから大切にされてきた節目です。太陽の力が弱まりきったあと、再び力を取り戻していく日とされ、「一陽来復(いちようらいふく)」――悪い流れが終わり、良い運気が戻ってくる日と考えられてきました。
近年、この冬至をきっかけに、子どもたちが伝統文化を学んだり、地域のつながりを深めたり、さらには「運気アップ」を願う占い記事が注目を集めたりと、さまざまな話題が生まれています。本記事では、今話題になっている「冬至」関連ニュースを軸に、あたたかな冬の風景をお届けします。
冬至とはどんな日? 太陽と「運気」の転換点
まずは、あらためて冬至の基本から確認してみましょう。暦の上で冬至は二十四節気のひとつで、太陽が黄道上で最も南に位置する瞬間(冬至点)を含む日を指します。この日は一年のうちで最も昼の時間が短く、夜が長くなります。
2025年の冬至は12月22日(月)で、日本の暦や生活情報サイトでも「この日が冬至」として紹介されています。古くから冬至は「太陽の力がいちばん弱い日」であると同時に、「ここから再び太陽の力が強くなっていくスタートの日」と考えられてきました。そのため、太陽の偉大なエネルギーが復活する日として、「一陽来復=新しい一年が生まれ変わる日」とされ、運気の切り替わりのタイミングとしても大切にされてきたのです。
日本の冬至の定番「ゆず湯」と「かぼちゃ」
日本の冬至といえば、やはりゆず湯とかぼちゃ料理が定番です。
- ゆず湯:江戸時代から広まった風習で、冬至の日に湯船にゆずを浮かべて入浴します。香りの強いゆずには邪気を払う力があるとされ、体を清めて無病息災を祈る意味が込められています。
- かぼちゃ・小豆料理:冬至にはかぼちゃの煮物や小豆粥などを食べる地方が多く、かぼちゃは保存がきき、ビタミンも豊富で冬を乗り切るための知恵でもあります。赤い色の小豆には厄除けの力があると信じられ、邪気払いの意味で食べられてきました。
また、冬至には「運が付く」とされる“ん”の付く食べ物を食べる習慣も知られています。かぼちゃの別名「南瓜(なんきん)」や、にんじん、れんこん、だいこん、みかんなど、「ん」の付く食材を七種類食べると幸せになる、という言い伝えもあります。これは、ことば遊びを通じて「運」を呼び込もうとする、昔からの人々の願いが形になったものと言えるでしょう。
中国や華人社会の冬至:「汤圆」で家族団らん
一方、中国本土や華人社会では、冬至は「冬至節」としてとても重要な節句のひとつです。中国では「十月一、冬至到、家家戸戸吃水餃(冬至にはどの家でも餃子を食べる)」という言葉が知られ、餃子や「冬至団」と呼ばれる汤圆(タンユエン/湯円)を家族で食べる習慣があります。
汤圆は、日本の白玉団子のような、もちもちとした甘い団子のデザートで、多くは丸い形をしており、家族の円満や幸福、団らんを象徴しています。丸いかたちには「一家が丸くおさまる」「円満に年を越す」といった願いが込められ、冬至の食卓を彩る大切な存在です。
ニュース1:学生たちが汤圆作りで文化を学ぶ 「新华小学」冬至前の特別授業
今話題となっているニュースのひとつが、「学生搓汤圆学文化 新华小学提前庆冬至」という話題です。これは、中国語圏の小学校である新华小学が、冬至を前に子どもたちに汤圆作りを体験させる授業を行った、という内容です。
この取り組みでは、子どもたちが白玉粉をこねて丸め、自分の手で汤圆を作りながら、冬至の由来や意味を学んだと伝えられています。教師や地域の年長者が、冬至の歴史や、なぜこの日に団子を食べるのかをやさしく説明し、子どもたちは楽しみながら伝統文化に触れました。
汤圆作りの授業には、次のような狙いがあるとされています。
- 伝統文化の継承:冬至に湯円を食べる意味や家族団らんの大切さを、体験を通じて子どもたちに伝える。
- 食育・生活力の向上:粉からこねて丸める作業を通して、食べ物のありがたみや、家庭料理への関心を高める。
- クラスメイトとの交流:みんなで生地を分け合い、形を見せ合いながら作ることで、自然と会話が生まれ、協調性も育まれる。
冬至は、単なる季節の節目ではなく、こうした学校の授業を通じて、子どもたちが自分たちのルーツや文化に誇りを持つきっかけにもなっています。
ニュース2:森梅青さんと芭蕾华小校友会 汤圆ワークショップで広がる冬至の輪
もうひとつ話題になっているのが、「森梅青与芭蕾华小校友联办 汤圆制作工作坊节庆气氛浓」というニュースです。こちらは、森梅青さんと芭蕾华小の卒業生グループが協力して開催した、汤圆作りのワークショップに関する話題です。
このワークショップは、冬至の時期に合わせて行われ、子どもから大人まで幅広い世代が集まりました。参加者たちは、講師の説明を受けながら色とりどりの汤圆を作り、完成した団子をその場で茹でて味わったといいます。会場には笑い声があふれ、まさに「节庆气氛浓(お祭りムードが濃い)」イベントとなりました。
こうした市民参加型のワークショップには、次のような魅力があります。
- 世代を超えた交流:卒業生や地域の大人が、子どもたちに作り方を教え、思い出話を語り合うことで、世代間のつながりが生まれる。
- コミュニティの活性化:学校や校友会が中心となってイベントを開くことで、地域の人々が集い、顔の見える関係が育つ。
- アイデアあふれるアレンジ:カラフルな生地や中身の工夫など、伝統をベースにしながら現代的なアレンジも楽しめる。
日本でも、冬至にかぼちゃ料理やゆず湯だけでなく、「お団子作り」などのワークショップを開くことで、子どもたちが季節行事に興味を持つきっかけになるかもしれません。中国の汤圆文化と日本のだんご文化をあわせて紹介すれば、国境を越えた「丸いごちそう」を楽しむイベントとしても広がりそうです。
ニュース3:冬至に「財運アップ」? 财神に呼ばれる4つの干支が話題
三つ目の話題は、「冬至财神点名4生肖!第1名贵人帮赚钱全面加速」という、いわゆる運勢・占い系ニュースです。中国語圏では、冬至を「運気の切り替わり」のタイミングとしてとらえ、この日を境に運勢が変わると考える人も少なくありません。こうした背景の中、冬至に財運の神さまである财神(ツァイシェン)から「名前を呼ばれる」ように、特に運気が上がるとされる4つの干支が注目を集めているのです。
記事では、冬至以降に仕事運や金運が上向きになりやすいとされる干支をランキング形式で紹介し、とくに第1位の干支については「贵人(助けてくれる人)に恵まれ、仕事もお金もすべてが加速する」として、多くの読者の関心を集めました。具体的な干支の名前や細かな診断内容はメディアごとに異なるため、ここでは触れませんが、「冬至=運気のスタート」という考え方が根底にあります。
日本でも、冬至は「一陽来復」で運気が反転する特別な日として紹介されることが多く、神社で「一陽来復守り」が授与されたり、家の玄関にお札を貼る風習も見られます。中国語圏の「冬至财神」や干支占いの人気は、そうした感覚と通じる部分があり、「新しい節目の日に、少しでも前向きな気持ちでスタートしたい」という思いが反映されていると言えるでしょう。
冬至がつなぐ「文化」「食」「運気」
ここまで紹介してきた三つのニュースを眺めると、冬至が持つさまざまな側面が浮かび上がってきます。
- 学校教育の場:新华小学の汤圆作りのように、冬至は子どもたちに伝統・歴史・食文化を教える教材にもなっています。
- 地域コミュニティの場:森梅青さんと芭蕾华小校友によるワークショップのように、人と人をつなぎ、世代を超えた交流を生む機会にもなっています。
- 運気を意識する場:冬至财神と干支の話題に代表されるように、「ここから良くなる」という前向きな気持ちを持つきっかけにもなっています。
そして、その真ん中にあるのが、どの文化圏でも共通して大切にされている「食」と「団らん」です。日本ではかぼちゃや小豆料理、ゆず湯、中国や華人社会では汤圆や餃子といった料理を囲み、家族や友人と団らんの時間を過ごします。丸くてあたたかい団子や、湯気の立つお風呂は、寒い季節に心までほぐしてくれる存在です。
日本の冬至を、ちょっとだけ豊かに楽しむヒント
最後に、今回のニュースからヒントを得ながら、日本での冬至をもう少し楽しく過ごすアイデアをいくつかご紹介します。
- 子どもと一緒に「冬の七草」ならぬ“ん”の付く食材探し:冷蔵庫を開けて、「ん」の付く食材を親子で探してみましょう。にんじん、だいこん、れんこん、みかんなど、見つけた食材で献立を考えると、ちょっとしたゲーム感覚で運気アップにもつながります。
- 簡単団子づくりでミニ「汤圆体験」:白玉粉と水だけで作れる白玉団子に、あんこやきなこを合わせれば、家で気軽に「丸い幸せスイーツ」が楽しめます。中国や華人社会の汤圆文化を話題にしながら作ると、子どもにとっても良い学びの機会になります。
- ゆず湯+ひと言メッセージ:ゆず湯に入る際、ゆずの皮に小さく「福」「楽」などの漢字を書いて(食用インクやシールなどで)、家族で見せ合うのも一案です。江戸時代から伝わるゆず湯の風習に、ささやかな現代的アレンジを加えることで、記憶に残る冬至になるでしょう。
- 一年をふり返る時間に:冬至は「一年が生まれ変わる日」とも言われます。この一年にあった出来事や、感謝したいことを家族で一つずつ話してみるのも、穏やかな冬至の過ごし方です。
かつては農耕と深く結びつき、太陽の動きを敏感に感じ取っていた人々にとって、冬至は生きる上で欠かせない節目でした。現代では、照明や暖房で季節の変化を感じにくくなっている一方で、こうした伝統行事は、私たちに季節のリズムを思い出させてくれます。
新华小学の教室で楽しそうに汤圆を丸める子どもたち、森梅青さんたちが開いたワークショップで笑顔を交わす参加者たち、そして財運アップのニュースにちょっと胸を躍らせる人々――。それぞれの冬至の過ごし方には違いがあっても、「あたたかく新しいスタートを切りたい」という願いはきっと共通です。
今年の冬至、あなたもゆず湯やかぼちゃ、そして“丸い”お団子を楽しみながら、心と体をゆっくり温めてみてはいかがでしょうか。




