ZOZOTOWNが示す「ファッション県民性」――20年分データが映す日本のオシャレ地図
ファッション通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」がサービス開始から20周年を迎え、2004年から2025年までの膨大な購買データを分析した「ファッション通販白書 by ZOZOTOWN」を発表しました。9億点以上の購入履歴から、日本人のファッションの変化や都道府県別の特徴的な傾向=「ファッション県民性」が浮かび上がっています。
この記事では、この白書の内容をもとに、「県民性」として表れた地域ごとのファッション傾向を中心に、20年間でどう買い物行動が変わってきたのかを、できるだけやさしく解説します。
20年で何が変わった?「ファッション通販白書」とは
「ファッション通販白書 by ZOZOTOWN」は、ZOZOTOWNがサービスをスタートした2004年12月15日から2025年7月31日までの購買データをまとめて分析したレポートです。
- 対象期間:2004年12月15日〜2025年7月31日
- 分析データ:過去20年間で蓄積された9億点以上の商品購入データ
- 視点:社会・地域・サービス・ユーザーなど、複数の切り口から購買行動の変化を分析
物価上昇、気候変動、ライフスタイルの多様化、景気の変動など、この20年で日本を取り巻く環境は大きく変わりました。その中で、洋服や靴、バッグの「買い方」も少しずつ姿を変えています。
ZOZOは、こうした変化を「ファッションは時代の気分を映す鏡」という視点で整理し、特設サイトで白書の内容を公開、さらに20周年を記念したクイズキャンペーンも実施するとしています。
キーワードは「ファッション県民性」
今回の白書で特に注目されているのが、購買データを都道府県別に分析「ファッション県民性」です。
ZOZOTOWNの購入傾向をエリアごとに見ることで、「あ、この県らしい!」と思わず納得してしまうような個性が見えてきたといいます。ZOZOの分析では、各都道府県に対して、印象的なキャッチコピーを添えるかたちで、ファッションの特徴を紹介しています。
- 東北や北国では「アウター」にまつわる独自文化
- 首都圏、とくに東京は「サステナブル志向」や古着活用
- 南のエリアでは「色づかいの派手さ・陽気さ」
こうした傾向が、単なるイメージではなく、実際の購買データから浮かび上がってきた点がポイントです。
大阪女性の「サンバイザー愛」は健在?話題の県民性ネタ
白書の発表を受けて話題になっているのが、大阪の女性とサンバイザーに関するエピソードです。業界メディアは、「大阪女性のサンバイザー愛は不滅!?」という見出しで、ZOZOTOWNの20年分のデータから浮かび上がったユニークな傾向を紹介しています。
詳細な数値までは公開されていませんが、「大阪=サンバイザー」という、これまで街のイメージとして語られることの多かったスタイルが、オンラインの購買傾向にも現れていることが注目されています。いわば、「ネタ」として語られてきた大阪の独特なオシャレ観が、データで裏付けられたかたちです。
このように、白書では大阪に限らず、各地域ならではのアイテムや色づかいの好みが見えており、「ファッション県民性」が定量的に確認できたとされています。
地域別に見えてきた特徴的なファッション傾向
白書では、すべての都道府県について詳細が公開されているわけではありませんが、プレスリリースなどから、いくつかの地域の特徴的なキーワードが紹介されています。
- 宮城県:「コートこそが勝負服!?」
モッズコート、トレンチコート、ステンカラーコートといったコート文化が独自進化していると分析されています。冬の寒さが厳しい東北都市ならではの、「アウターにこだわる」県民性が感じられます。 - 東京都:「サステナブルでファッショナブル!」
東京は、アイテムの買い替えと古着の活用を上手く組み合わせる、「買い物最先端」のスタイルが特徴として挙げられています。トレンドを追いながらも、リユースやサステナビリティを意識した消費行動がデータから読み取れるとされています。 - 沖縄県:「太陽に負けない陽気ファッション」
赤・金・シルバーといったカラフルなカラーが人気で、「カラフルさこそがアイデンティティ」と表現されています。強い日差しやリゾートムードに合う、明るい色づかいを楽しむ県民性が見てとれます。
これらはあくまで一例ですが、「寒さ」「都市生活」「南国の太陽」といった、その地域の環境や暮らし方が、そのままファッションの選び方にも反映されていることがわかります。
「物価は上がったのに服は安く?」20年の価格感覚の変化
白書では、「県民性」だけでなく、この20年での価格帯の変化にも触れています。面白いのは、日々の生活でさまざまな物価が上昇している一方で、ファッションの中心価格帯には少し違った動きが見られる点です。
たとえば、ZOZOTOWNで最も売れているカテゴリーであるTシャツの価格帯は、
- 2000年代後半:5,000円未満が主流
- 近年:3,000円未満が主流
というように、むしろ手ごろな価格帯にシフトしていると分析されています。これは、
- 取り扱いブランド数が大きく増えたこと
- ユーザー層が拡大し、幅広い価格帯の商品が揃うようになったこと
- デザインと価格のバランスに優れたアイテムが増えたこと
などが背景にあると、ZOZOはコメントしています。ユーザー側から見れば、「シーンや気分に合わせて服を選びやすくなった」という変化とも言えそうです。
「シーズンレス化」と「カジュアル化」も進行
さらに白書では、気候変動による季節感の変化や、働き方・ライフスタイルの多様化に伴うカジュアル化も、購買データに表れているといいます。
- Tシャツのシーズンレス化:
Tシャツが「夏だけのアイテム」ではなくなり、シーズンを越えて着用されるようになったことが指摘されています。インナーとして重ね着に使うなど、季節を問わないスタイリングが広がっているとみられます。 - バッグやシューズのカジュアル化:
ビジネスシーンでも、より快適さやカジュアルさを重視したアイテムが選ばれるようになったという傾向も紹介されています。リモートワークの増加や、オフィスのドレスコード緩和なども背景にあると考えられます。
こうした変化は、「どの季節に何を着るか」「仕事とプライベートの服をどれくらい分けるか」といった日々の感覚にも、大きな影響を与えていると言えるでしょう。
景気と「売れる色」の意外な関係
白書の中でユニークなポイントとして紹介されているのが、「景気がいいと黒が売れる?」という、新しい見方です。詳細なデータは白書内で示されていますが、景気の動向と、売れ筋アイテムのカラーとの間に、一定の関連性が見られたとされています。
黒はどんなスタイルにも合わせやすく、「失敗しない色」として選ばれることが多い一方で、「あえて黒を選ぶことで洗練された印象を出したい」という心理も働きます。そのため、景気や消費者マインドの変化が、「黒の売れ方」にも反映されているのかもしれません。
こうした分析からも、ファッションが単なる見た目だけでなく、その時代のムードや気分を映す存在であることがわかります。
データで見えてきた「ZOZOTOWNの20年」とこれから
2004年にサービスを開始したZOZOTOWNは、この20年で取り扱いブランド数やユーザー層を大きく拡大し、日本を代表するファッションECとして成長してきました。今回の白書は、その成長の過程で蓄積されたデータを振り返りながら、日本社会全体の変化も読み解こうとする試みです。
ZOZOは、この白書について、
- ファッションを通じて、社会・経済・生活の移り変わりを読み解く
- 時代の変化や価値観の多様化を、テクノロジーとデータで捉える
- 企業理念「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」の実現を目指す取り組みの一環
と位置付けています。
今回明らかになった「ファッション県民性」は、私たちがなんとなく抱いていた地域イメージを裏付けるものでもあり、「自分の住んでいる県はどんなオシャレ傾向なんだろう?」と楽しみながら読める内容でもあります。大阪のサンバイザー、宮城のコート、東京のサステナブル志向、沖縄のカラフルカラーなど、データで示されると、思わずうなずいてしまう人も多いのではないでしょうか。
ZOZOTOWNの特設サイトでは、こうしたデータをより詳しく見ることができ、20周年記念のクイズ企画では、20万円分のZOZOポイントが当たるキャンペーンも実施される予定です。ファッションが好きな方はもちろん、「県民性って本当にあるの?」と気になっている方にとっても、興味深い内容となっています。



