ビットコインの「4年サイクル」は本当に終わったのか?CZとグレースケールの発言から読み解く新局面
暗号資産(仮想通貨)市場ではいま、長年「常識」とされてきたビットコインの4年サイクルに大きな疑問が投げかけられています。
特に注目を集めているのが、
- 暗号資産取引所バイナンス創業者CZ(チャンポン・ジャオ)氏による「4年サイクルの終焉」発言
- 大手運用会社グレースケール(Grayscale)による「4年周期論は崩壊しつつある」「2026年にかけて新高値の可能性」というレポート
- 機関投資家向けリサーチで知られるバーンスタイン(Bernstein)が、市場の調整局面の中でもビットコインの新たな価格目標を示したこと
これらの発言やレポートが示しているのは、「半減期に合わせて4年ごとに上がって下がる」という単純なパターンでは、もはや現在のビットコイン市場を説明しきれないという見方です。ここでは、ニュース内容をもとに、わかりやすく丁寧に整理していきます。
ビットコインの「4年サイクル」とは何だったのか
まず、これまで多くの投資家に信じられてきた4年サイクルについておさらいします。
- ビットコインには、約4年ごとにマイニング報酬が半分になる「半減期」があります。
- 過去には
- 2012年11月
- 2016年7月
- 2020年5月
- 2024年4月
といったタイミングで半減期が発生してきました。
- 各半減期の後、1年以上にわたって価格が大きく上昇し、その後に急激な調整(暴落を含む弱気相場)が来る、というパターンが繰り返されてきたとされています。
このため、「ビットコインはおおよそ4年周期で動く」「半減期の前後で強気・弱気が決まる」という『4年サイクル説』が、多くの個人投資家やアナリストの間で広く浸透してきました。
しかし、2024年の半減期から時間がたち、2025年の相場を迎えた今、このモデルに明らかなズレが見え始めている、という指摘が増えています。
CZが語る「4年サイクルの終焉」とスーパーサイクルの可能性
こうした中で話題となっているのが、バイナンス創業者CZ(チャンポン・ジャオ)氏の発言です。
CZ氏は、2025年12月初旬に開催された「Bitcoin MENA 2025」というイベントに登壇し、従来の4年サイクル観について懐疑的な見方を示しました。
要点をまとめると、
- 現在のビットコイン市場は、過去と根本的に構造が異なる。
- かつてのように「半減期 → 上昇 → 暴落」という単純なパターンに当てはめるのは難しくなっている。
- マクロ経済環境が、暗号資産にとって徐々に追い風となりつつあることを強調している。
- そのうえで、2026年にも、これまでの予測が通用しない「スーパーサイクル」に入る可能性を示唆した。
ここでいう「スーパーサイクル」とは、従来のように「4年ごとに大きく上がって、その後に大きく下がる」といった波ではなく、より長期的で一方向の力強いトレンドが続く局面をイメージした表現です。
ただしCZ氏自身も、「どのような形になるかを断定できない」としており、あくまで可能性としての見解であることを強調しています。
グレースケールのレポート:4年周期論は崩れつつあり、2026年に新高値の可能性
4年サイクルの終焉を示唆しているのは、CZ氏だけではありません。暗号資産運用大手グレースケール(Grayscale)も、最新レポートの中で、同様の見解を示しています。
グレースケールの主張を、やさしく整理すると次のようになります。
1. 「4年周期説は誤りである」と明言
グレースケールはレポートの中で、従来信じられてきた「4年周期説」について、
「見通しには不確実性があるが、4年周期説は誤りであると考えている」
と明確に述べています。
その上で、ビットコインは「来年に新高値を付ける可能性がある」とし、2026年に向けて価格が過去最高値を更新する展開を想定しています。
2. なぜ4年サイクルは崩れつつあるのか
グレースケールが「4年サイクルはもはや通用しない」と判断する背景には、いくつかの構造的な変化があります。
- 市場構造の変化
ビットコイン市場は、初期の個人投資家中心の相場から、いまや機関投資家が本格的に参加する市場へと大きく変化しました。
大口投資家やファンドがポートフォリオの一部としてビットコインを保有することで、価格の動きは、以前よりもマクロ経済(金融政策やドルの動きなど)と密接に連動するようになっています。 - 規制環境の整備
各国で暗号資産に関する規制が徐々に整備され、ビットコインが「制度資産」としての位置づけを獲得しつつあります。
これにより、短期的な投機だけでなく、長期的な資産配分の一部としてビットコインが組み込まれるようになり、かつてのような極端なバブルと暴落の「振れ幅」が徐々に薄れている可能性があります。 - 半減期の影響が相対的に薄れている
もちろん半減期は今も続いていますが、すでに複数回の半減期を経験したことで、市場はこうしたイベントをある程度「織り込み済み」にしやすくなりました。
また、ビットコインの新規供給量そのものが初期よりもかなり小さくなっているため、「半減によるショック」のインパクトは相対的に小さくなっていると見る専門家もいます。
3. 2025〜2026年の見通し:「不安定だが、ファンダメンタルズと評価が収れん」
グレースケールは、2025年の値動きについて「一時的に不安定」になる可能性を認めつつも、最終的にはファンダメンタル(基礎的価値)とバリュエーション(市場での評価)が再び一致してくると述べています。
この「収れん」のタイミングが、
- 2026年にかけてのビットコイン新高値
- 4年周期では説明できない新しい価格形成モデルの本格化
につながる可能性がある、という見立てです。
バーンスタインが指摘する「調整局面の中の新ターゲット」
機関投資家向けリサーチ会社バーンスタイン(Bernstein)も、市場が調整局面にある中で、ビットコインの新たな価格ターゲットを示していると報じられています。
詳細な数字や条件はレポートごとに異なりますが、共通しているのは、
- 短期的には価格調整やボラティリティ(価格変動の大きさ)が続く可能性があること
- しかし中長期では、機関投資家の需要や規制環境の整備などを背景に、ビットコインに上昇余地が残されている、という見方
です。
これはグレースケールのレポートとも共通しており、
- 2025年は「乱高下」を伴う難しい相場
- それでも数年単位で見ると、ビットコイン市場の基盤はむしろ強固になりつつある
というメッセージを読み取ることができます。
「4年サイクルは終わった」の意味:暴落はもう来ないのか?
ここで多くの方が気になるのは、
「4年サイクルが終わったなら、もう大暴落は来ないの?」
という点かもしれません。
しかし、現在出ている見解を丁寧に読むと、専門家たちは決して「下落が起こらない」と言っているわけではありません。
- アナリストの中には、「ビットコインの伝統的な4年周期の市場サイクルはもはや有効ではない」としつつも、「世界的な金融政策の変化によって、新しいタイプの価格変動が生まれている」と述べる人もいます。
- また、2025年の相場では、すでにデッドクロス(50日移動平均が200日移動平均を下回る弱気シグナル)が出現し、短期的な下落局面が続いているとの分析もあります。
つまり、
- 「4年おきに同じパターンで暴騰・暴落する」という単純な周期性は崩れつつある一方で、
- ビットコインが依然として価格変動の大きい資産であることは変わらない
ということです。
ポイントは、
- これまでのように「半減期の後だから、そろそろ天井」「4年ごとに同じ動きをする」といった単純な時間軸だけに頼るのは危険になってきている
- 代わりに、マクロ経済・規制・機関投資家の動き・市場の流動性など、より多くの要因を見ながら相場を考える必要がある
という点にあります。
ビットコインは「マクロ資産」に近づいている
ビットコインのサイクルを語るうえで重要になっているのが、
「ビットコインはもはや、単なる投機的な暗号資産というより、マクロ経済に敏感な資産になりつつある」
という見方です。
ある分析では、ビットコインは今や、
- ドルの動き
- 世界的な流動性(マネーサプライ)
- 金利や金融政策
といった要因に強く影響されるマクロ資産に近づいていると指摘されています。
これは、株式市場や債券市場、金などと同じように、
- 景気拡大局面ではリスク資産として買われやすく
- 金融引き締めや景気後退局面では売られやすい
という性質を強めている、というイメージです。
こうした変化は、
- ビットコインETFの登場や、
- 機関投資家のポートフォリオに組み込まれる動き
などとも深く関係していると考えられています。
投資家にとって何が変わるのか
では、4年サイクルの終焉や新しいサイクル論は、一般の投資家にとってどのような意味を持つのでしょうか。
- 単純な「カレンダー投資」が通用しにくくなる
「半減期の◯ヶ月前に買って、◯年後に売る」といった、時間だけに基づいた投資戦略の有効性は、これまで以上に低下していく可能性があります。 - 情報の重要性が一段と高まる
マクロ経済指標、各国の規制動向、機関投資家の動きなど、伝統金融と同じレベルの情報を意識することが、今後のビットコイン投資ではより重要になってきます。 - 長期目線と分散がより大切に
価格の短期的な上下に振り回されず、数年単位での成長性や、ポートフォリオ全体のバランスを意識した投資がより重要になります。
一方で、グレースケールやCZ氏、バーンスタインなど、複数のプレイヤーが中長期的には強気な見通しを示していることも事実です。
ただし、それは「一直線に上がる」という意味ではなく、
- 調整や下落も織り込みつつ
- 市場構造の成熟とともに、長期的な成長曲線を描く可能性
に注目している、と理解するのが自然でしょう。
おわりに:CZとグレースケールが示す「次のビットコイン時代」
今回のニュースで浮かび上がってきたのは、
- CZ氏が「4年サイクルの終焉」を示唆しつつ、2026年にスーパーサイクル入りの可能性に言及したこと
- グレースケールが、公式なレポートの中で「4年周期説は誤り」と断じ、2026年にかけて新高値の可能性を指摘したこと
- バーンスタインが、市場の調整のさなかでも新たな価格ターゲットを提示し、中長期の成長余地に注目していること
です。
いずれも、
- ビットコインはもはや、単純な「半減期サイクル」で説明できる段階を超えた
- 機関投資家の参入や規制の整備などにより、伝統金融市場と結びついた新しいフェーズに入っている
という共通のメッセージを含んでいます。
これからのビットコイン市場を考えるうえでは、過去の「4年サイクル」というわかりやすい物差しに頼りすぎず、より多面的な視点でニュースやデータを追いかけていくことが、ますます大切になっていきそうです。


