国民民主・玉木雄一郎代表、「防衛のための所得増税」に慎重姿勢 ――「今ではない」と語る背景

国民民主党の玉木雄一郎代表が、防衛力強化の財源として検討されている所得税の増税について、「今は行うべきではない」との慎重な姿勢を示しています。政府・与党内で防衛費増額に向けた増税議論が進む中、野党の一角である国民民主党のトップが明確にブレーキをかけた形です。

この記事では、玉木代表の発言内容や背景、さらに国民民主党が掲げる経済・防衛政策との関係を、できるだけわかりやすく整理してお伝えします。

防衛費の財源としての「所得増税」に慎重な理由

報道によると、玉木雄一郎代表は9日の記者会見で、防衛力強化の財源として政府内で検討されている所得税の増税案について、「よく吟味、分析する必要がある」と述べ、拙速な増税には反対する考えを示しました。国会内で行われたこの会見では、現在の物価高や賃金の伸び悩みといった国民生活の状況を踏まえ、「国民の手取りをさらに減らすような議論は、タイミングとして適切ではない」との問題意識がにじみ出ています。

玉木代表は以前から、景気が十分に回復していない段階での増税には一貫して慎重な立場をとってきました。国民民主党の政策でも、「まず家計を温め、経済を成長させ、その結果として税収を増やす」というアプローチが強調されています。今回の防衛財源をめぐる議論においても、その基本的な考え方が変わっていないと言えます。

玉木代表「今は所得増税ではなく、他の財源を優先すべき」

玉木代表は、防衛費の増額そのものを頭ごなしに否定しているわけではありません。国民民主党は安全保障政策として「自分の国は自分で守る」という方針を掲げ、日本の防衛力強化や経済安全保障の強化に前向きな姿勢も示しています。そのうえで、

  • 防衛費増額の必要性は認める
  • しかし、その財源を所得税増税に求めるのは時期尚早
  • まずは法人税たばこ税など、別の選択肢を検討すべき

という立場に立っていると整理できます。

具体的な報道でも、玉木代表が防衛財源としての法人税やたばこ税の活用に言及し、所得税増税の前に他の手段を検討するべきだとの考えを示したと伝えられています(ニュース内容3に対応)。所得税は、サラリーマンや年金生活者を含め、多くの国民に直接影響する税目です。景気が本格回復していない中での増税は、消費を冷やし、結果として経済成長を妨げかねないという懸念があります。

国民民主党が掲げる「減税」との整合性

国民民主党は、公式の政策集で「減税」や「社会保険料の軽減」を前面に打ち出しています。特に、

  • 所得税・住民税の減税
  • 社会保険料負担の軽減
  • 家計を支えるための物価高対策

といった方針が明記されており、「国の懐より国民の懐を豊かにする」とのスローガンで家計重視の経済政策を訴えています。また、成長戦略として「令和の所得倍増計画」を掲げ、消費と投資の拡大により2035年に名目GDP1000兆円をめざすという大きな目標も示されています。

このように、もともと「減税を通じて経済を活性化し、その結果として税収を増やす」という考え方を採っている政党であるため、防衛費のためとはいえ、当面の家計に負担を与える所得増税には慎重にならざるを得ません。玉木代表の今回の発言は、党の基本方針との整合性をとったものだと言えるでしょう。

「日中の緊張」と防衛費増額の政治的な位置づけ

一方で、政界では安全保障環境の悪化を背景に、防衛費増額と増税を結びつける動きにも注目が集まっています。報道コラムでは、中国側の強い反発や過敏な反応を受けて、与党・自民党内の一部議員が日中の緊張を理由に防衛費増強や増税の必要性を訴えているとの見方も示されています(ニュース内容2に対応)。

こうした中で、玉木代表のように「防衛力強化は理解するが、そのためにすぐ所得増税に踏み切るべきではない」との立場をとる政治家は、与野党を通じて一定の存在感を持ち始めています。防衛費の拡大そのものは、近年の国際情勢を踏まえれば多くの政党が必要性を認めていますが、

  • どの程度の規模まで増やすのか
  • その財源をどの税目に求めるのか
  • 国民生活への影響をどう抑えるか

といった点については、政党や政治家によって意見が分かれているのが現状です。

「自分の国は自分で守る」国民民主党の防衛・安全保障観

国民民主党は、防衛政策の柱として「自分の国は自分で守る」という考えを掲げています。これは、

  • 主権と領土を守るための法整備(外国人土地取得規制法の制定など)
  • 領海・国境・離島対策の強化
  • スパイ防止対策や経済安全保障の強化

といった、幅広い安全保障政策を含むものです。さらに、エネルギー、食料、医薬品、半導体など、重要物資の国内調達を拡大することも「総合的な経済安全保障」の一環として位置づけられています。

このように、国民民主党も決して「防衛反対」ではなく、むしろ日本の安全保障体制を総合的に強化していこうというスタンスです。そのうえで、「どうやって財源を確保するか」という点で、所得税増税よりも前に検討すべき手段があるのではないか、と提案している形になります。

法人税・たばこ税活用案の意味

玉木代表が示唆している法人税たばこ税の活用は、次のような考えに基づいていると理解できます。

  • 法人税:企業の利益に対して課税する税金であり、景気動向にも左右されます。防衛産業や関連分野の成長によって企業収益が増えれば、法人税収も増える可能性があります。
  • たばこ税:嗜好品に対する税であり、健康面への影響も踏まえて増税が議論されてきた経緯があります。防衛財源として位置づけることで、目的税的な性格を持たせる案も考えられます。

一方で、これらの税も増税すれば経済活動や生活に影響を与えるため、「どの税なら大丈夫」という単純な話ではありません。ただし、国民の多くが負担する所得税に比べると、景気や賃金への直接的な影響度合いが異なることから、「まずはそちらを優先的に検討してはどうか」というのが玉木代表の問題提起だと考えられます。

家計と経済成長を重視する「増税なき税収増」路線

国民民主党の経済政策には、「増税なき税収増」というキーワードが登場します。これは、

  • 減税や社会保険料負担の軽減によって消費を喚起する
  • 成長分野への投資減税などで投資を増やす
  • その結果として賃金が上がり、経済全体が大きくなることで税収も増える

という流れをめざす考え方です。この路線に立つと、「まず増税ありき」で防衛財源を議論するのではなく、「どうやって経済を成長させ、その中から安定した財源を確保するか」を考えるべきだ、という順番になります。

もちろん、防衛費の増額は「待ったなし」と言われる側面もあり、成長を待ってからでは間に合わないという指摘もあります。しかし、玉木代表の今回の発言は、「必要だからといって、今のタイミングで所得税増税に飛びつくのは避けるべきだ」というブレーキの役割を果たしていると見ることができます。

政治資金問題や「正直な政治」との関係

国民民主党は、政策集で「正直な政治をつらぬく」というスローガンも掲げています。そこでは、

  • 裏金や「非公開かつ非課税のお金」を許さない
  • 献金の上限規制や受け手側の規制を強化
  • 政治資金規正法の再改正と、政治資金監視委員会による監視強化

など、政治資金をめぐる不正をなくすための方策が並んでいます。

この「正直な政治」というキーワードは、財源論にも通じる部分があります。国民に負担を求める以上、その使い道や必要性、優先順位をできるだけ丁寧に説明し、納得を得ながら進めることが不可欠です。玉木代表が「よく吟味、分析する必要がある」と強調した背景には、「財源論こそ、国民に対して正直であるべきだ」という思いもあると受け止めることができます。

今後の焦点:与野党協議と国民的議論

防衛力強化の必要性が高まるなかで、財源をどう確保するかは、今後も大きな政治テーマとなり続けます。与党内でも、

  • 所得税を含む増税で安定財源を確保する案
  • 歳出の見直しや特別会計の活用を優先すべきだという案

など、さまざまな意見があり、与野党を交えた本格的な議論が避けられない状況です。その中で、

  • 国民民主党・玉木代表のように「防衛は重視するが、増税、とくに所得税増税には慎重」とする立場
  • 日中関係など安全保障環境の悪化を強調し、防衛費と増税を一体で進めようとする立場(ニュース内容2)

が、今後どのようにぶつかり合い、折り合いをつけていくのかが注目されます。

いずれにしても、今回の玉木雄一郎代表の発言は、単に「増税反対」と叫ぶだけではなく、

  • 家計と経済成長を重視する減税・成長路線
  • 自国の防衛と経済安全保障を総合的に強化する方針
  • 政治や財源論における「正直さ」を求める姿勢

といった、国民民主党の政策全体の中で位置づけて理解することができます。防衛費のあり方とあわせて、私たち一人ひとりも「どのような形で負担し、どのように国を守るのか」を考える時期に来ていると言えるでしょう。

参考元