警視庁に“2つのサッカー部” J1経験者も支える「治安」と「セカンドキャリア」の新しい形

警視庁には、実は2つのサッカー部が存在します。ひとつは長い歴史を持つ「警視庁サッカー部」、もうひとつはより新しい形で活動する「蹴球倶楽部」です。どちらも警察官や職員が所属するチームですが、その役割や雰囲気、目指すものには少しずつ違いがあります。さらに、このうち「蹴球倶楽部」にはJ1クラブ出身の元プロ選手も参加しており、サッカー選手のセカンドキャリアの受け皿としても注目されています。

この記事では、警視庁にある2つのサッカー部の特徴や活動内容、そしてなぜ今、これほど関心を集めているのかを、できるだけわかりやすくお伝えします。

警視庁にサッカー部がある理由とは?

まず、なぜ警視庁にサッカー部があるのでしょうか。背景には、大きく分けて次のような理由があります。

  • 職員の体力向上・健康維持のため
  • チームワークや規律を育てる組織内の人材育成
  • 地域の大会や社会人リーグへの参加を通じた地域とのつながり強化
  • スポーツを通じた警察活動の理解促進・イメージ向上

警察官の仕事は、日々のパトロールや事件・事故対応など、強い体力と集中力が求められます。サッカーのようなチームスポーツは、単に身体を鍛えるだけでなく、「仲間と連携して動く」「冷静に状況判断をする」といった能力も磨けるため、組織としても大きなメリットがあります。

伝統ある「警視庁サッカー部」 社会人リーグでの戦い

1つ目のチームが、長年活動している「警視庁サッカー部」です。東京都内の社会人リーグに所属し、これまで関東リーグに在籍していた経験もあるなど、一定の実績を持つ競技志向の強いチームとして知られています。

リーグ戦は、通常は週末を中心に行われ、警察官や職員たちは日々の勤務の合間を縫ってトレーニングを続けています。練習は勤務時間外に実施されることが多く、業務との両立は決して簡単ではありません。それでも、選手たちは「警察官である前に一人のサッカー選手でもある」という思いを持ち、真剣にボールを追いかけています。

このチームは、いわば警視庁の中でも「競技スポーツ」としてのサッカーを追求する側面が強く、組織の看板を背負って公式戦に臨む存在として位置づけられています。

もうひとつのチーム「蹴球倶楽部」とは

2つ目のチームが、ニュースでも話題になっている「蹴球倶楽部」です。名前からもわかるように、こちらはやや柔らかく親しみやすい印象があり、警察官や職員に加えて、元プロサッカー選手も参加している点が大きな特徴です。

蹴球倶楽部は、単に「強いチーム」を目指すだけでなく、サッカーを通じて人と人をつなぐ場としての役割も重視しているとされています。警視庁の職員だけでなく、サッカーに関わってきたさまざまな人材が集まり、練習や試合を通じて交流の輪を広げているのです。

J1出身者も所属 セカンドキャリアの新しい選択肢

特に注目されているのが、この蹴球倶楽部にJ1クラブ出身の元プロ選手が所属しているという点です。プロサッカー選手の多くは、30代前後で第一線を退くケースも少なくありません。その後の「セカンドキャリア」をどのように築くかは、長年、サッカー界全体の課題とされてきました。

警視庁の蹴球倶楽部に参加することで、元プロ選手たちは次のような形で新たなキャリアを歩むことができます。

  • 警察官・職員としての安定した職業を得る
  • これまでのサッカー経験を活かし、チームの中心選手や精神的支柱として貢献する
  • 若手職員や地域の子どもたちに、技術や経験を伝える役割を果たす
  • 社会人としての第二のスタートを切りつつ、好きなサッカーを続けられる環境を持つ

単純に「引退後に趣味でサッカーをする」というレベルを超え、組織の一員として責任ある仕事に就きながら、競技者としても高いレベルを維持するという点で、非常にユニークな取り組みです。

2つのチームが並立する意味

警視庁にサッカー部が2つある背景には、「競技」と「交流」、「組織強化」と「セカンドキャリア支援」という、複数の目的をバランスよく追求する狙いがあると考えられます。

  • 警視庁サッカー部:社会人リーグなどで結果を追い求める、より競技志向の強いチーム
  • 蹴球倶楽部:元J1戦士も加わり、セカンドキャリアの場や交流の拠点として機能するチーム

どちらもサッカーを通じて組織や地域社会に貢献していますが、そのアプローチは少しずつ異なります。こうした多層的なスポーツ活動を持つことによって、警視庁という大きな組織の中で、より多くの人が自分に合った形でスポーツに関わる道が開かれていると言えるでしょう。

リーグ最終戦を迎えた7日 チームにとっての節目

ニュースでは、7日にリーグの最終戦が行われたことも伝えられています。シーズンの締めくくりとなる最終戦は、選手たちにとって一年間の成果を確かめる大切な場です。

特に、蹴球倶楽部や警視庁サッカー部のように、本業を持ちながらプレーする社会人チームにとって、シーズンをやり切ること自体が簡単ではありません。勤務状況やシフトの都合で、全員がそろって練習できないことも多く、怪我のリスクとも常に隣り合わせです。

それでも、最終戦までチームとして戦い抜くことは、現場での粘り強さや責任感ともつながっています。元プロ選手にとっても、新しい環境で迎えるシーズン終了は、プロ時代とはまた違った感慨があるはずです。

元Jリーガーがもたらす“目に見えない”効果

蹴球倶楽部に所属するJ1出身者の存在は、ピッチ上でのプレーだけでなく、チーム全体の雰囲気や考え方にも大きな影響を与えます。

  • 練習の質や強度が高まり、周囲の選手のレベルアップにつながる
  • プロとして培った自己管理能力が、職場での仕事にも活かされる
  • 「試合への準備」「メンタルコントロール」といった目に見えにくいノウハウが共有される
  • 若い警察官・職員にとって、身近なロールモデルとなる

こうした効果は、単に勝敗だけでは測れません。所属する選手一人ひとりの成長や、組織全体の雰囲気づくりにおいて、元プロ選手の存在は非常に貴重です。

「警察×スポーツ」がひらく新しい可能性

警視庁に2つのサッカー部があるという事実は、警察組織とスポーツの関係が変化しつつあることも示しています。これまでも、柔道や剣道、駅伝など、警察とゆかりの深い競技は多くありましたが、そこにサッカーのような世界的スポーツが加わることで、若い世代との接点も広がっていきます。

また、プロ選手のセカンドキャリアという観点から見ても、公的機関である警視庁が受け皿の一つとなることには大きな意味があります。安定した職場で経験を活かせるだけでなく、「安心・安全を守る」という社会的に重要な仕事に関わることができるからです。

今後、こうした取り組みが広がれば、アスリートと社会をつなぐ新しいモデルケースとして、他の自治体や企業にも影響を与えていく可能性があります。

選手たちが見つめるこれから

警視庁の2つのサッカー部は、それぞれが異なる役割や目標を持ちながらも、共通してサッカーを愛し、人と社会のためにプレーするという姿勢を大切にしています。

ピッチの上では一人の選手として全力で走り、職場に戻れば一人の警察官・職員として市民の安全を守る。その二つの顔を持つ彼らの姿は、スポーツと仕事、そして人生のバランスを考えるうえで、多くの人にとって参考になるはずです。

J1クラブ出身の元プロ選手たちも、かつてはスタジアムで多くの観客に声援を送られていた存在です。今はユニフォームの色や背負うエンブレムこそ変わりましたが、「自分にできるベストを尽くす」という根本的な姿勢は変わっていません。

警視庁のサッカー部と蹴球倶楽部が、これからも地域や社会とサッカー界をつなぐ架け橋として、静かに、しかし着実に歩み続けていくことが期待されています。

参考元