祈りと笑顔に包まれた伊勢原市の秋 伊勢原大神宮「新嘗祭」とロボット剣道で輝く中学生
神奈川県伊勢原市では、この秋も地域の伝統と子どもたちの活躍が、人々の心をあたたかくつないでいます。伊勢原大神宮の「新嘗祭(にいなめさい)」では、五穀豊穣に感謝する厳かな祈りと、境内いっぱいに響く笑い声が広がりました。また、市内の伊勢原市立中沢中学校の生徒が「ロボット剣道」の大会で2連覇を達成し、地域に明るい話題を届けています。
本記事では、晩秋の伊勢原市で行われた新嘗祭の様子と、ロボット剣道で全国の舞台に立つ中学生の活躍を、できるだけわかりやすくご紹介します。
伊勢原大神宮とは―「伊勢原」の地名ゆかりの神社
伊勢原大神宮は、伊勢原市に鎮座する神社で、「伊勢原」という地名発祥の杜ともいわれる、地域の中心的な存在です。伊勢神宮の御祭神をお祀りし、内宮と外宮を備えた社殿構成が特徴で、「大神宮さん」の愛称で市民に親しまれています。
境内には、内宮と外宮を表現したシンボルマークも掲げられており、丸と四角・赤と白、人と自然といった対になるものを調和させ、「万事円満」を祈る思いが込められています。結婚や安産、家内安全など、人生の節目ごとに、多くの人が訪れる場所です。
「新嘗祭」とはどんなお祭り?
新嘗祭は、その年に収穫された新しいお米や穀物(新穀・初穂)を神さまにお供えし、五穀豊穣と日々の恵みに感謝するお祭りです。毎年11月23日の「勤労感謝の日」に、全国の神社で執り行われています。
もともと新嘗祭は、天皇が新穀をお供えし、自らも食すことで、神さまとともに収穫を喜ぶ重要な祭祀とされてきました。その精神は、今も各地の神社に受け継がれており、「働くこと」「食べること」「生きること」への感謝を新たにする日となっています。
伊勢原大神宮の年間祭事の中でも、新嘗祭は秋を締めくくる大切なお祭りのひとつとして位置づけられています。
晩秋の空の下で執り行われた伊勢原大神宮「新嘗祭」
伊勢原大神宮では、2025年11月23日、澄み渡る晩秋の空のもと、新嘗祭と恒例の餅つきが行われました。境内には、氏子や地域の家族連れが集まり、厳かな祈りとあたたかな交流が一日を通して続きました。
神事では、その年に収穫された新米などの新穀が、丁寧に神前にお供えされます。宮司による祝詞奏上や玉串奉奠など、古くからの作法に沿って進められ、集まった人々も静かに頭を垂れて、日々の暮らしを支える「食」のありがたさをかみしめていました。
伊勢神宮にならう「外宮先祭」の作法
伊勢原大神宮の新嘗祭で特徴的なのが、「外宮先祭(げくうせんさい)」という作法です。これは、本家である伊勢神宮の習わしにならい、外宮での神事を先に行い、その後に内宮の神事を行うという順序を大切にしていることを指します。
伊勢神宮では、衣食住や産業の守り神を祀る外宮、皇室の御祖神を祀る内宮という二つの宮があります。伊勢原大神宮もこれにならい、外宮と内宮が設けられており、人々の暮らしを支える「食」や産業への感謝をまず外宮で捧げ、その後、内宮で国家や人々の安寧を祈るという流れを守っています。
こうした作法は、単に伝統を受け継ぐだけでなく、「日々の糧への感謝があってこそ、豊かな社会や平和な暮らしが成り立つ」という考え方を、地域に伝えているともいえるでしょう。
境内に響く「よいしょ!」 笑顔あふれる餅つき
厳粛な神事のあとは、境内の雰囲気が一気に和やかになります。伊勢原大神宮では、新嘗祭に合わせて、毎年恒例の餅つきが行われています。
蒸したてのもち米を入れた臼からは、真っ白い湯気が立ち上り、そこに杵を振り下ろす「ドン」という音が境内に響きます。「よいしょ!よいしょ!」という威勢のいい掛け声に合わせて、大人も子どもも一体となって餅をつく姿は、見ている人の心まで温かくしてくれます。
参拝に訪れた家族連れや地域の人たちが足を止め、笑顔でその様子を見守り、子どもたちが初めて杵を持つ姿に歓声が上がる場面もあったといいます。つき上がったお餅は、小さく丸められ、参加者にふるまわれたり、神さまへのお供えとして奉納されたりして、「実り」をわかち合うひとときとなりました。
神さまに感謝を捧げた食の恵みが、人と人のつながりを改めて感じさせてくれる――そんな一日となったことが、地域のニュースでも伝えられています。
年末へ向けた「師走大祓」も予定
伊勢原大神宮では、12月21日には師走大祓(しわすおおはらえ)が執り行われる予定です。これは、過去半年間にたまった罪や穢れを、人形(ひとがた)に移して祓い清め、心身ともに清々しい状態で新しい年を迎えるための神事です。
新嘗祭で「食」の恵みに感謝し、師走大祓で心を整える。伊勢原大神宮の行事は、伊勢原市の人々の一年を優しく区切ってくれる節目となっています。
ロボット剣道で全国2連覇 伊勢原市立中沢中・杉山大知さん
一方、伊勢原市では、若い世代の頑張りも大きな話題となっています。そのひとりが、伊勢原市立中沢中学校に通う杉山大知(すぎやま だいち)さんです。杉山さんは、ロボット剣道の大会で2連覇という快挙を成し遂げました。
ロボット剣道は、小型のロボットにセンサーやモーターを組み込み、プログラミングによって動きを制御しながら、剣道のように打ち合いを行う競技です。相手の動きを読み取り、どのタイミングで攻撃し、どう守るかといった高度な戦略が求められます。
杉山さんは、中沢中学校の技術・科学関連の活動の中でロボット制作に取り組み、試行錯誤を重ねながら、自ら設計したロボットを大会へと送り出してきました。その結果、前回大会に続いて今回も優勝し、見事2連覇を達成しました。
ロボットの動きを安定させるためのプログラム調整や、センサーの感度を微妙に変えながら、何度もテストを繰り返したといいます。こうした地道な努力が実を結び、県内外の強豪が集まる中で頂点に立つことができました。
地域が支える中学生の挑戦
伊勢原市立中沢中学校では、教員や仲間たちが、杉山さんの活動を日頃から支えてきました。放課後の時間を使った練習や部活動での議論だけでなく、地域の大人たちもアドバイスを送り、ロボットづくりに必要な素材や環境を整えるなど、周囲の協力も大きな力となりました。
大会での2連覇という結果は、杉山さん自身の努力だけでなく、そうした学校・家庭・地域が一体となったサポートの賜物でもあります。ニュースでは、杉山さんが「応援してくれたみんなのおかげです」と感謝を口にしていた様子も紹介され、伊勢原市民からは「次の挑戦も楽しみ」「市の誇り」といった声が上がっています。
伝統行事と最先端の挑戦が共存する伊勢原市
伊勢原市では、伊勢原大神宮の新嘗祭に代表されるような、古くからの伝統や信仰が今も大切に受け継がれています。地域の人々が集まり、祈り、笑い合い、餅をつき合う光景は、変わらない日本の秋の原風景といえるでしょう。
同時に、ロボット剣道のような新しい分野で、中学生が世界に挑戦する姿もあります。最先端の技術と、仲間とともに工夫を重ねる学びの場が、伊勢原市の学校から生まれていることは、地域の大きな誇りです。
伝統と革新、祈りと挑戦――その両方が共存していることこそが、今の伊勢原市の魅力といえるかもしれません。
これからの季節、伊勢原市で広がる「ご縁」
伊勢原大神宮では、新嘗祭のあとも年間を通して多くの祭事が続きます。年末の師走大祓、年越しの参拝、新年の元旦祭など、節目ごとに多くの人が訪れます。また、夏には太鼓やダンス、吹奏楽が楽しめる大納涼まつりも開かれ、地元の魅力がギュッと詰まった催しとして人気を集めています。
伊勢原市には、こうした行事をきっかけに、人と人が出会い、「ご縁」を深めていく土壌があります。神社での参拝や祭り、学校での学びや部活動、地域行事やボランティア活動など、さまざまな場面で生まれるつながりが、まち全体をあたたかく支えています。
今年の秋、新嘗祭で捧げられた祈りと、多くの笑顔。そして、ロボット剣道で全国の舞台に立つ中学生のまぶしい姿。そうした一つひとつの出来事が、「伊勢原に住んでいてよかった」「またここに来たい」と思えるまちづくりにつながっているのではないでしょうか。
これからも伊勢原市では、伝統を大切に守りながら、新しい挑戦を続ける人々の活躍が続いていきます。その中で、私たち一人ひとりが、季節ごとの行事や子どもたちの成長に目を向け、温かく見守り合うことが、まちの未来をより明るいものにしていくのかもしれません。


