「幸せを運ぶ鳥」コウノトリ、高知・四万十市と香川・まんのう町に相次ぎ飛来

高知県四万十市と香川県まんのう町に、国の特別天然記念物であるコウノトリが相次いで飛来しました。
「幸せを運ぶ鳥」として親しまれるコウノトリの姿に、地元の人たちは驚きと喜びの声をあげています。
四万十市では9年ぶりの確認、まんのう町では約20羽もの群れが見られたとされ、各地で話題となっています。

四万十市に9年ぶりのコウノトリ飛来

高知県四万十市では、2025年12月2日の夕方、四万十川の赤鉄橋近くの芝生広場に1羽のコウノトリが姿を現しました。
国の特別天然記念物であるコウノトリが四万十市で確認されたのは2016年以来、9年ぶりのことです。

その姿を目撃した地元の人たちは、その大きさと迫力に驚かされたといいます。
帰宅途中の子どもたちも足を止め、めったに見られないコウノトリをじっと見つめていたと報じられています。

コウノトリは全身が白っぽく見える一方、翼を広げたときやお尻に近い部分には黒い羽があり、その特徴的な姿に気づいたという小学生の声も伝えられています。
「普通の鳥だったら全部白いけど、お尻のほうが黒かったので珍しいと思った」といった感想が紹介され、子どもたちにとっても印象深い出会いとなったようです。

石川県生まれの若いメス「J0953」と判明

四万十市に飛来したコウノトリは、足についている足環(あしわ)の番号から、個体の情報が分かりました。
足には「J0953」という文字が確認され、コウノトリの保護や野生復帰を進めている兵庫県立コウノトリの郷公園が取り付けたものだとされています。

この番号から、このコウノトリは2025年6月に石川県珠洲市で生まれたメスであることが判明しました。
まだ若い個体であり、これから繁殖期を迎える前の「旅」の途中に四万十市へ立ち寄った可能性が高いと専門家は見ています。

目的は「餌場探し」 全国を飛び回る若鳥

コウノトリの郷公園によると、今回四万十市に現れたメスのコウノトリは、およそ3年後に繁殖期を迎えるとされています。
そのため今は、将来安全に暮らし、子育てをすることができる環境を探して、全国各地を飛び回っている時期だということです。

専門家は、「四万十市に飛来した個体はまだ若く、餌場を探して降り立った可能性が高い」と説明しています。
水田や河川敷、湿地帯など、エサとなる小魚やカエル、昆虫などが豊富な場所を見つけるために、広い範囲を移動していると考えられています。

もし四万十市周辺の環境が気に入り、餌が豊富で安全に過ごせると判断すれば、将来的に繁殖地となる可能性もあるとされています。
コウノトリのヒナが自然豊かな高知で育つ姿が見られる日を期待する声も上がっています。

見かけたときは「そっと150メートルほど離れて」

コウノトリの郷公園は、野外でコウノトリを見かけた場合のマナーについても呼びかけています。
驚かせたり、追いかけたりしてしまうと、コウノトリがその場所を「危険な場所」と感じ、二度と戻ってこなくなる可能性があります。

そのため、もしコウノトリを見つけた際には、およそ150メートルほど離れた場所から静かに見守ってほしいとしています。
双眼鏡や望遠カメラなどを使えば、十分に観察や撮影を楽しむことができます。

また、近づきすぎてしまうと、エサをとるのをやめてしまったり、ねぐらを移動してしまったりするおそれもあるため、「静かに、距離を保つ」ことが大切です。

香川・まんのう町には約20羽が飛来

一方、四国では高知だけでなく、香川県まんのう町でもコウノトリの飛来が確認されています。
報道によると、まんのう町では約20羽のコウノリが一度に飛来したと伝えられており、その壮観な姿が地域の話題になっています。

この群れについては、過去にこの地域で繁殖したペアの家族なのかどうかは、現時点でははっきり分かっていないとされています。
ただし、同じエリアに複数羽が集まっていることから、エサ環境が良く、コウノトリにとって魅力的な場所である可能性が高いと見られています。

四国でこれだけ多くのコウノトリが確認されたことは、生息環境の改善や、長年続けられてきた保護活動の成果としても注目されています。

コウノトリとはどんな鳥?

コウノトリは、体長およそ1メートルにもなる大型の鳥で、白い体と黒い翼、長い足とくちばしが特徴です。
日本ではかつて各地で見られましたが、環境の変化などにより数が減り、野生では一度絶滅したとされています。

その後、兵庫県豊岡市を中心に保護・増殖・放鳥の取り組みが進められ、徐々に野外で見られるコウノトリが増えてきました。
現在では、兵庫県だけでなく、石川県や福井県、四国地方を含む各地で飛来や滞在が確認されるようになっています。

また、コウノトリはその姿や昔話などの影響から、「赤ちゃんを運んでくる鳥」「幸せを運ぶ鳥」としても知られています。
今回の四万十市への飛来も、地元の人々に「幸せなニュース」として受け止められており、地域に明るい話題を提供しました。

地域の自然環境とコウノトリ

コウノトリが安心して暮らせる環境には、豊かな水辺と、生きものの多様性が欠かせません。
田んぼや川、ため池などに小魚やカエル、昆虫などが豊富にいることが、コウノトリにとっての「良い餌場」となります。

四万十市は、「日本最後の清流」とも呼ばれる四万十川を中心に、今も自然豊かな景観が残る地域です。
そうした環境が、石川県からはるばる飛んできた若いコウノトリを引きつけた可能性があります。

香川県まんのう町でも、農地やため池などの水辺環境が整っており、約20羽ものコウノトリが集まるだけの餌資源があると考えられます。
このように、コウノトリの飛来は、地域の自然環境の豊かさを映し出す「鏡」のような存在ともいえます。

人とコウノトリが共に暮らすために

コウノトリが各地に姿を見せるようになった背景には、長年続けられてきた保護活動に加え、人の暮らし方の見直しも関係しています。
農薬の使い方を工夫したり、水田に水を張る時期を調整したりすることで、田んぼに生きものを戻そうとする取り組みが、各地で進められています。

こうした取り組みは、コウノトリだけでなく、カエルやトンボ、小魚など、さまざまな生きものたちにとっても暮らしやすい環境づくりにつながっています。
その結果として、コウノトリが「ここなら住めそうだ」と感じる場所が少しずつ増えてきているのかもしれません。

今回の四万十市やまんのう町での飛来は、人と自然が共に生きる地域づくりの大切さを改めて考えるきっかけにもなっています。

静かに見守ることが未来のヒナたちにつながる

コウノトリは、私たちにとってうれしいニュースを届けてくれる存在である一方、とてもデリケートな野生動物でもあります。
写真を撮りたくなったり、もっと近くで見たくなったりする気持ちは自然なものですが、近づきすぎないことが何より大切です。

専門家が呼びかけているように、150メートルほど距離を保ち、静かに見守ることが、コウノトリにとって安心できる環境を守ることにつながります。
その積み重ねが、やがて四万十市やまんのう町などで、コウノトリが巣をつくり、ヒナを育てる未来へとつながっていきます。

「幸せを運ぶ鳥」と呼ばれるコウノトリが、これからも四国の空をゆったりと飛び続けられるように、地域全体で静かに見守る気持ちを大切にしていきたいですね。

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