“尚弥と対戦した男”スティーブン・フルトンが計量失敗 前代未聞の「ライト級暫定王座戦」への変更でボクシング界に波紋
プロボクシング界で、極めて異例の出来事が起きました。かつて井上尚弥と対戦したスティーブン・フルトンが、オシャキー・フォスターとのWBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチ前日計量で体重超過。その結果、本来のスーパーフェザー級戦ではなく、急遽WBC世界ライト級暫定王座決定戦として行われることが発表され、多くのファンや関係者が困惑と怒りの声を上げています。
本来はWBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチのはずが…
試合は、米テキサス州サンアントニオのフロスト・バンク・センターで行われる興行の一環として組まれていたWBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチでした。
- 王者:オシャキー・フォスター(米国)
WBC世界スーパーフェザー級王者、戦績は23勝(12KO)3敗 - 挑戦者:スティーブン・フルトン(米国)
現WBC世界フェザー級王者で、戦績は23勝(8KO)1敗
もともとこの試合は、フルトンにとって「フェザー級王者として階級を上げ、スーパーフェザー級のベルトを狙う」という、いわば3階級制覇への足がかりとなる重要な一戦でした。
しかし、試合前日の計量で、この構図が一変してしまいます。
フルトンが約900グラムのオーバー 計量失格の詳細
前日計量での契約体重は、スーパーフェザー級リミットである130ポンド(約58.96キロ)でした。
- フォスター:130ポンドちょうどでパス
- フルトン:132ポンド(約59.87キロ)を計測し、2ポンド(約900グラム)超過
フルトンは2ポンドオーバー
実際、当初は「フルトンが勝利しても王座は空位」「フォスターが勝てば王座防衛」という、いわゆる変則世界戦として行われるとみられていました。
それがなぜか「ライト級暫定王座決定戦」に変更
ところが、その後のWBCの発表は、ボクシング界にさらに大きな衝撃を与えます。
WBCは時間を置かずに、この試合を「WBC世界ライト級暫定王座決定戦」として行うことを承認したのです。
- 本来の階級:スーパーフェザー級(130ポンド)タイトルマッチ
- 実際の計量結果:フォスター 130ポンド/フルトン 132ポンド
- WBCの裁定:このカードをライト級(135ポンド)暫定王座決定戦として開催
つまり、130ポンドで計量をクリアしたフォスターと、132ポンドのフルトンの試合が、「135ポンド上限のライト級」の暫定王座決定戦として認定された形です。
この「上の階級の暫定王座を、下の体重で争う」という状況に、多くの専門家やファンが「前代未聞」「あまりに不可解」
ボクシング関係者・ファンから「馬鹿げている」の声
この裁定をめぐり、海外メディアや関係者からも批判が噴出しています。
- 「ボクシング界が騒然」「前代未聞の対応に波紋が広がっている」と報じる日本メディア
- 米記者が「何してんだ」「こんな馬鹿げた話があるか」と強く批判したと報じる記事も登場
- 日本のボクシングファンからも「WBC何でもありすぎるだろ…」「ちょっと意味不明」「めちゃくちゃだろ」といった困惑の声が相次いだと伝えられています。
特に問題視されているのは、以下のような点です。
- 体重超過した側の試合を、むしろ「上の階級のタイトル戦」にしてしまったこと
- ライト級暫定王座戦としてすでに承認されていた別カードが、影響を受ける可能性があること
- タイトルの価値や、階級制度そのものの意味が揺らぎかねないという懸念
こうした経緯から、「フルトンへの温情なのか」「WBCの裁定はあまりに恣意的ではないか」といった疑問の声も上がっています。
元スーパーバンタム級王者・現フェザー級王者としてのフルトン
スティーブン・フルトンは、日本のファンにとっては井上尚弥のスーパーバンタム級2団体統一戦の相手としてよく知られています。
- 2023年7月:井上尚弥と対戦し、8回TKO負け。WBC・WBO世界スーパーバンタム級王座を失う
- その後フェザー級へ階級転向し、WBC世界フェザー級王者となる
- 今年2月:ブランドン・フィゲロアとの再戦で12回判定勝利、フェザー級で2階級制覇を達成
つまりフルトンは、もともとスーパーバンタム級→フェザー級→スーパーフェザー級
フルトン自身は、これまで「フェザー級のリミットである126ポンドまで体重を落とすことに苦労していた」とも語っており、減量面での負担が大きくなっていたことは事実です。 しかし、階級を上げて臨んだはずのスーパーフェザー級の契約体重をオーバーしたうえ、結果としてライト級暫定王座戦になってしまった今回の流れは、ファンの理解を得るにはあまりに複雑なものとなっています。
WBCライト級戦線への影響も
今回の「暫定王座決定戦」への変更は、ライト級のタイトル戦線にも影響を及ぼす可能性があります。
- WBC世界ライト級正規王者はシャクール・スティーブンソン
- スティーブンソンは、来年1月31日にテオフィモ・ロペス(現WBO世界スーパーライト級王者)への挑戦が決まっている
- ライト級2位リカルド・ヌニェスと4位ハディエル・エレーラによる暫定王座決定戦として承認されていた一戦は、今回の裁定により「正規王座決定戦に格上げされるか、もしくは単なる挑戦者決定戦に戻されるか」など、扱いが見直される見込みと報じられています。
WBCがフォスターvsフルトンをライト級暫定タイトル戦として急遽承認したことで、「本来のランキングや事前承認の意味が薄れてしまうのでは」との批判も出ており、「全く理解できない」という強い論調の記事も見られます。
ファンが感じる「タイトルの価値」の揺らぎ
今回のケースが特に物議を醸しているのは、単に「体重超過があったから」だけではありません。ボクシングファンが大切にしてきた「階級」「タイトル」「ランキング」
- 体重超過は本来ペナルティであり、選手・陣営の責任とされる事案
- ところが今回は、結果的に「より上の階級の暫定王座戦を与えられた」ようにも見える構図
- あらかじめ承認されていたライト級暫定戦のカードが、割を食う形になりかねない点
こうした理由から、日本のネット上でも、「タイトルの価値が下がる」「何でもありになってしまう」といった嘆きにも似た声が多く見られます。
井上尚弥と戦った実力者の“つまずき”としての計量失敗
とはいえ、フルトンが高い実力を持つ王者であることは疑いありません。井上尚弥との試合では8回TKO負けを喫したものの、それまで無敗でWBC・WBO世界スーパーバンタム級王座を保持していた実績があります。
また、フェザー級に上げてからは、ブランドン・フィゲロアに勝利してWBC世界フェザー級王者となり、2階級制覇を達成しました。 そのうえで、今回はさらに上のスーパーフェザー級に挑戦しようとしていたわけですから、チャレンジ精神自体は高く評価する声もあります。
しかし、階級を上げたにもかかわらずオーバーウェイト
今後への注目ポイント
今回の試合は、形式上はWBC世界ライト級暫定王座決定戦
- フォスターが敗れてもスーパーフェザー級王座は保持する見込みと報じられており、これもまた異例の状態です。
- ライト級王者スティーブンソンやランキング上位選手との関連性はどう整理されるのか
- WBCが今後、似たような事案にどう対応するかという「前例」になってしまう可能性
今回の騒動は、単なる「一選手の計量失敗」に留まらず、ボクシング界におけるタイトル制度や団体の在り方そのものに疑問符を投げかけるものとなっています。ファンとしては、階級やタイトルの重みが守られ、選手たちの努力が正当に評価される形での運営がなされることを、改めて願わずにはいられない出来事と言えるでしょう。



