全国で注目!おでん文化を守り続ける老舗の魅力に迫る

冬になると恋しくなるおでん。最近はコンビニでも一年中見かける定番メニューですが、日本各地には、地域ごとの個性あふれる「おでん文化」が根強く息づいています。
今回は、いま話題になっている静岡の老舗「静岡おでん おがわ」と、北陸・高岡でラーメンとともに守られてきたおでん文化に注目し、「昔ながらのおでん」の魅力をたっぷりご紹介します。

静岡浅間通りの名物店「静岡おでん おがわ」とは

戦後から続く駄菓子屋スタイルの静岡おでん

静岡市葵区・浅間通り商店街にある「静岡おでん おがわ」は、1948年(昭和23年)創業の老舗おでん店です。
静岡浅間神社の参道である浅間通りに店を構え、戦後の屋台時代から続く静岡おでん文化を今に伝える店として、地元の人はもちろん観光客にも親しまれています。

特徴的なのは、その「駄菓子屋スタイル」
いわゆる飲み屋街のおでん屋とは違い、日中から気軽に立ち寄れて、おにぎりや和菓子、かき氷などと一緒におでんを楽しめるお店です。
「青葉おでん街」や「青葉横丁」のような夜の飲み歩きスポットとは異なり、昼間におやつ感覚でおでんが味わえるのが大きな魅力です。

黒いだしに串刺しスタイル…静岡おでんならではの魅力

静岡おでんの一番の特徴は、真っ黒なつゆ
牛すじや練り物から出た旨味が溶け込んだ濃い色のだしで、見た目は濃そうですが、実際に口にすると意外にもまろやかで奥行きのある味わいが楽しめます。

また、具材はすべて串に刺して煮込むのが静岡スタイル。
会計のときには、串の本数や形で値段を計算する、昔ながらの仕組みが今も残っています。
テーブルに運ばれてきたおでんには、だし粉と青のりをたっぷりかけていただきます。
この「粉をかける」という食べ方も、静岡おでんならではの楽しみ方です。

一本100円中心、17種類のおでん種

「静岡おでん おがわ」では、約17種類のおでん種が用意されており、2025年12月現在も多くが1本100円という、うれしい価格帯を守り続けています。
糸こんにゃくやたまごが120円、牛すじや厚揚げが170円と、今の時代には驚くほど良心的な価格設定です。

看板メニューの一つが、静岡名物の黒はんぺん
魚のうま味がぎゅっと詰まった黒はんぺんを、黒いつゆでじっくり煮込んだ一本は、観光客にも大人気の定番です。

店内の雰囲気とメニューの楽しみ方

お店は、浅間通りの中町交差点・大鳥居側から少し歩いた右手にあり、暖簾と店先の自販機が目印です。
入口に扉はなく、店頭にはおにぎりなどが並ぶケースがあり、その奥におでん鍋が据えられています。

店内は奥に長く、テーブル席が並ぶ昔ながらの素朴な雰囲気。
長年の営業とメディア出演もあり、壁には有名人のサインがずらりと並んでいて、地域に愛されてきた歴史を感じさせます。

おでんは、セルフで取るのではなく、欲しい具材の名前を伝えて店員さんに取ってもらうスタイル
おにぎりや和菓子、助六寿司なども1個から注文でき、店内での飲食はもちろんテイクアウトも可能です。

かき氷とおでん、静岡ならではの「夏の楽しみ方」

「静岡おでん おがわ」では、なんとかき氷が年中楽しめるのも特徴です。
自家製シロップを使ったかき氷が用意されており、静岡らしいフレーバーから昔懐かしい味まで、幅広く揃っています。

夏になると、熱々のおでんと冷たいかき氷を交互に味わうのが定番の楽しみ方。
ラムネやブルーハワイをベースにした「富士山氷」など、見た目にも涼しげな一杯は、おでんの後口をさっぱりさせてくれるデザートとして人気です。
「冬はおでん、夏はかき氷」というイメージを軽やかに飛び越え、一年を通しておでんと甘味を一緒に楽しめるのが、おがわならではの魅力です。

観光と一緒に楽しみたい立地と営業時間

「静岡おでん おがわ」は、静岡浅間神社や駿府城公園に近く、観光散策の途中で立ち寄るのにぴったりのロケーションです。
JR静岡駅からは徒歩やバスでアクセスでき、浅間通り商店街の一角として、地元の人の日常にも根づいています。

営業時間は、おおむね10時〜18時30分で、具材がなくなり次第終了。
定休日は水曜日で、祝日の場合は営業する日もあります。
昼前から夕方まで、軽い食事やおやつ感覚でおでんを楽しめることから、子どもからお年寄りまで幅広い世代が訪れる店として親しまれています。

高岡市「まるなかや」が伝えるラーメン×おでん文化

初代直弟子の味と想いを受け継ぐ店

富山県高岡市には、ラーメンとおでんを一緒に楽しめる昔ながらの店として「まるなかや」が知られています。
ここでは、初代の直弟子が受け継いだ味と技を今に伝え、ラーメンとおでん、二つの文化を同時に楽しめる独特のスタイルが続いています。

戦後の食堂文化の中で、ラーメンとおでんを同時に出す店は各地にありましたが、高岡の「まるなかや」は、その流れを今も色濃く残す一軒です。
温かいラーメンの横に、おでんを数本つけて注文するスタイルは、地元の人にとってはおなじみの風景となっています。

ラーメンの脇で静かに光る「おでん鍋」

「まるなかや」の店内では、ラーメンを目当てに訪れたお客さんの目に、カウンターに据えられたおでん鍋が自然と入ってきます。
だしの香りが立ちのぼる鍋には、ちくわ、こんにゃく、大根、たまごなど、親しみのある具材が並び、注文ごとに一串、また一串と器に盛られていきます。

ラーメンを待つ間におでんで一杯、ラーメンと一緒に少しずつつまむ…そんな自由な楽しみ方ができるのも、「ラーメン×おでん文化」ならではの良さです。
寒い季節には、ラーメンとおでんの組み合わせが、体の芯から温めてくれます。

未来へつなぐ「食文化」としてのおでん

「まるなかや」のような店が大切にしているのは、単に味だけではなく、地域の暮らしと結びついた食文化としてのおでんです。
戦後の復興期、人々の心とお腹を満たしてきたラーメンとおでんの組み合わせは、今では高岡らしい日常のごちそうとして受け継がれています。

初代の直弟子として鍋を守る人たちは、「昔と変わらない味」をモットーに、出汁の取り方や煮込み加減など、細かな部分まで丁寧な仕事を欠かしません。
その積み重ねが、「また来たい」と思わせる、ほっとする一杯へとつながっているのです。

北陸三県で味わう「昭和のラーメン」とおでん

戦後から続く老舗の魅力

北陸三県には、戦後間もない時期から営業を続けてきた「昭和のラーメン」の老舗が今も残っています。
こうした店の中には、ラーメンだけでなくおでん鍋を常備し、昔ながらのスタイルを守っているところもあります。

記事で取り上げられた厳選3軒はいずれも、戦後から地元で愛され続けてきた店で、「ラーメンを食べに行ったら、おでんが想像以上においしかった」と話題になるほどの実力派ぞろいです。
ラーメン専門店と思って訪れた人が、思わずおでんにもはまってしまう…そんなうれしい驚きを体験できるのが、これらの老舗の共通点と言えます。

「最強のラーメン屋」でなぜおでんが評判なのか

北陸のラーメン店でおでんが高く評価される理由の一つに、出汁へのこだわりがあります。
ラーメンのスープ作りで培われた出汁の技術が、おでんのつゆ作りにも生かされているため、旨味の層が厚く、バランスのよい味わいに仕上がるのです。

また、長年にわたり常連客に愛されてきた店ほど、おでん鍋を一年中絶やさない傾向があります。
ラーメンをさっと食べて帰る日もあれば、おでんをつまみながらゆっくり過ごす日もある…そうした日常の選択肢としておでんが根づいていることが、「想像を超えた旨さ」を感じさせる背景にあります。

北陸だからこそ光る「おでんの温もり」

冬の寒さが厳しい北陸地方では、温かい汁物が日々の暮らしを支えてきました。
ラーメンとおでんの両方を出す食堂スタイルの店は、そんな気候の中で人々に寄り添ってきた、いわば地域の憩いの場でもあります。

カウンター越しに湯気の上がるおでん鍋を眺めながら、ラーメンをすすり、ときどきおでんを一口。
その時間そのものが、「昭和のラーメン屋」の空気を感じさせる、かけがえのない体験と言えるでしょう。

地域ごとに受け継がれる「おでん文化」のおもしろさ

静岡と北陸、おでんの楽しみ方の違い

ここまで見てきたように、静岡と北陸では、おでんの楽しみ方や位置づけに少しずつ違いがあります。

  • 静岡:黒いつゆ、串刺し、だし粉と青のり。駄菓子屋スタイルで日中から気軽に食べられる。
  • 高岡・北陸:ラーメン店や食堂のおでん鍋として併設され、ラーメンと一緒に楽しむ文化が根づいている。

どちらにも共通しているのは、戦後から続く老舗が、今も変わらず地元の人の生活に寄り添っているという点です。
値段や雰囲気、注文スタイルにそれぞれの地域性が表れていて、食べ比べると、より深くその土地の魅力を感じることができます。

「日常の一品」としての温かさ

おでんは、豪華さよりも、ほっとする安心感が魅力の料理です。
「静岡おでん おがわ」のように子どものおやつから大人のお酒の肴まで幅広く愛される店もあれば、「まるなかや」や北陸のラーメン店のように、ラーメンと組み合わせて楽しむ形もあります。

どのスタイルにも共通しているのは、誰もが気軽に立ち寄れて、あたたかく迎え入れてくれる場所であるということ。
一串100円からの小さな幸せを積み重ねてきた時間が、今の「おでんブーム」を支えていると言ってもよいかもしれません。

これからのおでんの楽しみ方

コンビニや家庭の鍋でもおなじみの存在になったおでんですが、今回ご紹介したような老舗のおでん文化に触れてみると、その奥深さにきっと驚かされます。
旅行先でふと目に入ったおでん鍋に近づいてみると、その土地ならではの歴史や、人々の暮らしが見えてくるはずです。

この冬は、静岡浅間通りの「静岡おでん おがわ」で黒いだしのおでんを味わってみたり、高岡や北陸の「昭和のラーメン屋」でラーメンとおでんの黄金コンビを楽しんでみたりと、「地域のおでん」を目的に旅をしてみるのもおすすめです。

一見シンプルに見える一串のおでんの向こう側には、何十年も続いてきた人々の営みと、店主たちの変わらぬ想いが静かに息づいています。
そんな物語に思いを馳せながら味わうおでんは、きっと、いつもより少しだけ特別に感じられることでしょう。

参考元