「カイリ」が魅せた執念のリング アレクサ・ブリス戦と“ラストタイム・イズ・ナウ”が彩ったSmackDown
12月5日(現地時間)放送のWWE SmackDownは、「ジョン・シナ引退ロード」の大一番となるトーナメント決勝戦に加え、女子戦線でも重要な一戦が組まれました。その中で、日本人スターカイリ・セイン(Kairi Sane)が、アレクサ・ブリスと激しくぶつかり合い、視聴者の心に強い印象を残しました。
今回は、今話題になっているこのSmackDownの出来事を、「カイリ」に焦点を当てながら、わかりやすく振り返っていきます。
カイリ・セイン vs アレクサ・ブリス:主導権を握ったカイリの攻め
この日のSmackDownで、女子戦線の注目カードとなったのがアレクサ・ブリス vs カイリ・セインの一戦です。
試合は序盤からカイリが主導権を握る展開となりました。ブレイク中の時間帯には、カイリが試合を完全にコントロールしていたとレポートされています。 トップロープに登ったカイリは、コーナー上での打ち合いでも怯まず、ブリスの背中にクラブリングブロー(連打のような打撃)を浴びせ、さらにヘッドバットでアドバンテージを広げていきました。
そしてカイリは、得意の空中殺法に持ち込むべく、ツリー・オブ・ウォー(コーナーに逆さ吊りにする状態)にブリスを捕らえ、その体勢から攻め続けます。 続けざまに、トップロープからのフライング・ダブル・フットスタンプを決め、あと一歩で勝利というところまでブリスを追い詰めました。
さらに、カイリが代名詞ともいえるスライディングDを狙った場面もありましたが、この一撃はアレクサに回避されてしまいます。 このあたりから、試合の流れが少しずつ変わり始めます。
アレクサの反撃と「シスター・アビゲイル」へのカウンター
スライディングDをかわしたブリスは、防戦一方から一気に反撃に転じます。カイリのラリアットをかわし、掌底打ち、右ストレート、さらにニーリフトと連続技を叩き込みました。
ブリスはそこから低空ドロップキック、続いてランニング・ブロックバスターと、畳みかけるように技をつないでいきます。 そして、決め技として知られる「シスター・アビゲイル」を狙いますが、この場面で試合はさらに複雑な様相を呈します。
ブリスがシスター・アビゲイルの体勢に入った瞬間、セコンドについていたアスカがリングに介入し、カイリを救おうとする形でブリスの動きを妨害しました。 しかし、その混乱を完全には生かせず、試合の流れは二転三転していきます。
シャーロット、ナイア・ジャックス、ラッシュ・レジェンド…乱戦状態の結末
続く場面では、ブリス側の援護としてついていたシャーロット・フレアーがアスカをエプロンから引きずり降ろし、ビッグブートでダウンさせます。 これにより、セコンド同士も完全に乱戦状態に突入しました。
リング内では、カイリがお得意のスピニング・バックフィストをブリスに叩き込み、最後の勝負どころに持ち込みます。 さらに、カイリは決め技であるインセイン・エルボーを狙うべく、ブリスをコーナー付近に引きずり、トップロープへと登ります。
しかし、この大技が命運を分けました。カイリがインセイン・エルボーに飛び出した瞬間、ブリスはこれをカウンターで切り返し、今度こそシスター・アビゲイルを完璧に決めてピンフォール勝ちを収めます。 公式結果としても、「Alexa Bliss def. Kairi Sane(アレクサ・ブリスがカイリ・セインに勝利)」と記録されています。
試合直後には、さらにナイア・ジャックスとラッシュ・レジェンドが乱入し、ブリスとシャーロットを襲撃。 ブリスはレジェンドの強烈な前腕打ちを受け、シャーロットはナイアのサモアンドロップを浴びせられました。 その後、カイリもアスカも巻き込んだ大乱闘となり、女子ディビジョン全体の抗争がいっそう激しくなっていることを印象づけるエンディングとなりました。
「攻め続けるカイリ」としての存在感
この試合の結果だけを見れば、勝者はアレクサ・ブリスです。 しかし、試合内容を振り返ると、カイリが長時間にわたって主導権を握り、インセイン・エルボーを狙うところまで追い込んでいたことが分かります。
- フライング・ダブル・フットスタンプでのニアフォール
- スライディングDを軸にした流れるような攻撃
- スピニング・バックフィストからインセイン・エルボーへの黄金パターン
といった得意パターンを次々と繰り出し、「日本人ハイフライヤー」としての魅力をしっかりとアピールしました。負けはしましたが、「攻め続けるカイリ」という印象を多くのファンに残した試合だったといえるでしょう。
大会全体を彩った「ラストタイム・イズ・ナウ」決勝戦:グンター vs LAナイト
この日のSmackDownは、カイリの試合だけでなく、番組全体としても大きな節目となる構成でした。その中心にあったのが、「The Last Time Is Now(ラスト・タイム・イズ・ナウ)」トーナメント決勝、グンター vs LAナイトです。
このトーナメントは、ジョン・シナの「最後の試合」の対戦相手を決めるという、非常に特別な位置づけのもの。決勝まで勝ち進んできたのは、「リング・ジェネラル」ことグンターと、「メガスター」ことLAナイトという、いずれ劣らぬ人気と実力を誇る2人でした。
試合は、LAナイトが序盤からパンチとラフファイトで攻め込み、グンターを場外テーブルにたたきつけるなど、激しい肉弾戦となります。 一方のグンターも、ジャーマンスープレックスやショットガンドロップキック、さらには首への執拗な攻撃で反撃。
LAナイトはBFT(決め技)を決める場面もありましたが、グンターがロープブレイクで辛くも回避。 最終的には、グンターがスリーパー・ホールドや変形STF、グラウンディング・クラバットといった締め技でナイトを追い込み、タップアウトを奪って勝利しました。
この勝利により、グンターはジョン・シナの「最後の相手」になる権利を正式に獲得。番組ラストでは、カメラに向かってシナに対し強い言葉で宣戦布告し、「シナはついに、そして決定的に“諦める”ことになる」と言い放ってSmackDownは幕を閉じました。
その他の主な出来事:ドラグノフ、コーディ、そしてSmackDownの流れ
この日のSmackDownは、女子戦線やトーナメント決勝だけでなく、ブランド全体の今後を占うような出来事も多数起こりました。
- イリヤ・ドラグノフ vs カーメロ・ヘイズのUS王座戦では、トマソ・チャンパの介入もあり、ドラグノフがトルペド・モスクワとHボムで王座防衛に成功しました。
- コーディ・ローデスは、ストーリー上重要な存在であるドリュー・マッキンタイアの“復帰”を要求し、王者として番組を牽引する姿勢を示しました。
- 女子ディビジョンでは、カイリとブリスの一戦に加え、ジェイド・カーギル vs アルバ・ファイアなど、今後のタイトル戦線を占うカードも組まれていました。
こうした流れの中で、カイリ・セインはアスカやイヨ・スカイらとともに、SmackDown女子戦線の重要な一角を担う存在として描かれています。今回の試合でも、勝敗だけにとらわれず、「いま、ここで何を魅せるか」というレスラーとしての姿勢がはっきりと表れていました。
カイリの今後に期待が高まる理由
今回の試合では、結果としてカイリはアレクサ・ブリスに敗れましたが、内容的には「いつ勝ってもおかしくない」と思わせる十分な攻めと存在感がありました。
特に注目したいポイントは、次のような点です。
- トップロープからの技を中心に、攻めのバリエーションが豊富であること
- スピニング・バックフィストやフライング・ダブル・フットスタンプといった日本で培った技術が、アメリカの大舞台でもしっかり通用していること
- セコンドのアスカ、対戦相手のブリス、さらにはシャーロットやナイア・ジャックスなど、多くのスターが絡む中でも“画面の中心にいる”存在感を見せていること
今後、SmackDown女子ディビジョンがさらに混戦を極めるのは間違いありません。その中で、「勇気と覚悟を持って攻め続けるカイリ」が、どのようなポジションにたどり着くのか――ファンの期待は、ますます高まっていくことでしょう。
ジョン・シナのラストマッチへ向けて、男子戦線が大きく動く中でも、カイリ・セインという日本人スターの活躍は、確実にSmackDownの物語の一部になっています。今回の一戦は、その流れの中で非常に重要な「ワンシーン」として、今後も語り継がれていきそうです。



