東京スカイツリーのお膝元「とうきょうスカイツリー駅」に新駅舎誕生 アートと歴史が交差する新たな玄関口に

東京スカイツリーへ向かう多くの人が利用する東武スカイツリーライン「とうきょうスカイツリー駅」で、新駅舎と新しい下りホームの運用が始まりました。さらに、東京スカイツリーのデザイン監修も務めた故・澄川喜一(すみかわ・きいち)氏による陶板レリーフ作品「TO THE SKY」が、新駅舎に移設されて公開されています。

長年親しまれてきた旧ホームは95年の歴史に幕を下ろし、駅を取り巻く風景は大きく生まれ変わりました。新しい駅舎は、単なる交通の拠点にとどまらず、アートと街並みが溶け合う「まちの顔」として、これからの東京スカイツリー観光を支えていきます。

新駅舎・新ホームがスタート 95年の旧ホームに別れ

東武鉄道と墨田区は、とうきょうスカイツリー駅の新駅舎(新東口改札)と新下りホームの供用を開始しました。対象となるのは、東武スカイツリーライン下り方面のホームと改札で、初列車から新設備での運用が始まっています

これに伴い、これまで使われてきた現東口改札と現下りホームは、前日終電をもって使用を終了。昭和初期からおよそ95年間にわたり人々を送り迎えしてきた「昭和の面影」を残すホームが、静かにその役目を終えました。

長い年月を経た駅のホームは、レトロな雰囲気をたたえた「昭和の遺産」として鉄道ファンや地域住民からも親しまれてきましたが、新しい高架化事業と駅舎移設により、その歴史は一区切りを迎えた形です。

駅舎ごと“東へ大移動” 150メートル移設のねらい

今回の新駅舎・新ホーム整備は、「東武伊勢崎線(とうきょうスカイツリー駅付近)連続立体交差事業」の一環として行われました。駅と線路を高架化することで、周辺の踏切渋滞の解消や地域交通の円滑化を図る大規模なプロジェクトです。

この事業の特徴的なポイントが、駅そのものの「大移動」です。とうきょうスカイツリー駅の新駅舎と新下りホームは、これまでの位置から約150メートル東側(曳舟方面)へ移設されました。駅の場所が動くという、日常的にはあまり経験しないダイナミックな変化が起きています。

移設によって期待される効果は、大きく分けて次の2点です。

  • 地域交通の改善:踏切の渋滞や周辺道路の混雑を緩和し、歩行者・自転車・車の動きがスムーズになること
  • 利便性の向上:駅の位置が変わることで、東京スカイツリータウンや周辺の観光・ショッピングエリアへの動線が見直され、より利用しやすくなること

墨田区も、「新駅舎は曳舟方面へ約150m移設され、利便性向上と地域交通の改善が期待される」として、公式に案内を行っています。利用者にとっては、普段の感覚で駅を目指すと改札の位置が「ずれて」感じられるかもしれません。特に下り線を利用する方は、改札の場所が大きく変わっているため、案内表示をよく確認する必要があります。

新駅舎のデザインは「スカイツリーと一体の映えスポット」

新しいとうきょうスカイツリー駅は、機能面の向上にとどまらず、デザイン面でも大きな特徴を備えています。東武鉄道と墨田区の発表によると、新駅舎は次のようなポイントを持っています。

  • 新東口・西口のどちらからでも上下ホーム(1番線・2番線)にアクセス可能で、乗り換えや移動がしやすい構造
  • 外観デザインには、伝統的な木造家屋の手法「下見張り」を応用し、板状のパネルを重ねたような意匠を採用
  • 上層に行くほどパネルのサイズを小さくすることで、自然と視線が「東京スカイツリー」へ向かうよう工夫されたデザイン

この「下見張り」をモチーフとした外観は、どこか懐かしさを感じさせながらも、近未来的な印象もあわせ持っています。記事では「単なる駅ではなく、スカイツリーと一体化した“映えスポット”になりそう」と評されており、観光客にとっても撮影したくなるような新たなビューポイントになりそうです。

スカイツリーの足元にふさわしい、開放的でモダン、かつ日本らしさを感じさせる駅舎として、まちの新しいシンボル的存在になることが期待されています。

新駅舎を彩る陶板レリーフ「TO THE SKY」とは

新駅舎の誕生とともに大きな話題となっているのが、陶板レリーフ作品「TO THE SKY」の移設・公開です。この作品は、日本交通文化協会が東武鉄道の依頼を受けて、とうきょうスカイツリー駅新駅舎へ移設したもので、2025年12月7日から一般公開されています。

「TO THE SKY」は、彫刻家であり東京スカイツリーのデザイン監修者でもある故・澄川喜一氏がデザイン・監修を手がけた陶板レリーフです。作品の概要は次の通りです。

  • 作品名:TO THE SKY
  • 設置場所:東武スカイツリーライン とうきょうスカイツリー駅 新東口改札内
  • 公開日:2025年12月7日(日)から一般公開
  • サイズ:縦3.0m × 横4.0m × 2面という大きな壁面作品
  • デザイン・監修:澄川喜一氏

このレリーフは、もともと2012年の東京スカイツリー開業にあわせて、当時の駅1階コンコースに設置され、多くの人に親しまれてきました。駅舎移設にともない、新たな駅空間に受け継がれる形で、新駅舎内に移設されています。

空へ伸びるスカイツリーと「業平」の伝統を重ねた表現

「TO THE SKY」は、その名の通り空へ向かって伸びていく東京スカイツリーの姿をテーマにした作品です。同時に、作品が設置されているこの地・業平(なりひら)に残る日本の伝統的なイメージも組み合わせて表現されています。

作品のコンセプトは、「世界一の高さを誇る電波塔としてのスカイツリー」と「古くから受け継がれてきた日本の伝統文化」を一つの画面の中で響き合わせることです。現代的な超高層タワーと、歴史や文化が折り重なる下町・墨田区という土地柄が、レリーフという形で象徴的に示されています。

新駅舎に設置されたことで、東京スカイツリーを訪れる国内外の観光客や、日々駅を利用する人たちは、移動の合間にアート作品を間近で鑑賞できるようになりました。駅という日常空間の中で、ふと立ち止まって文化・芸術の価値に触れられるのも、この作品の魅力のひとつです。

専門家の手で修復・再設置 「公共財」として次世代へ

「TO THE SKY」の移設にあたっては、作品を制作したクレアーレ熱海ゆがわら工房が担当し、専門的な工程を経て再設置が行われました。

具体的には、駅舎移転工事に合わせて、陶板レリーフを慎重に取り外し、修復と保管を行った上で、新駅舎に再び設置するという流れです。ひとつひとつの陶板を扱う繊細な作業が必要となるため、製作を手がけた工房が責任をもってメンテナンスを行っています。

日本交通文化協会は、この作品を「後世に残すべき重要な公共財産」と位置づけており、適切な修復を経て新駅舎に受け継いだとしています。駅を利用する人々の目を楽しませ、都市に彩りとにぎわいをもたらすパブリックアートとして、今後も長く活躍することになりそうです。

新駅舎は「アートを楽しむ駅」へ

新しくなったとうきょうスカイツリー駅は、ただ乗り降りをするだけの場所から、「アートを楽しむことのできる駅」へと役割を広げつつあります。新東口改札内に足を踏み入れると、高さ3メートル、幅4メートルの陶板レリーフが2面にわたって広がり、その迫力を間近で感じることができます。

スカイツリーを訪れる途中、あるいは帰り道に、少し足を止めて作品を眺めてみると、「空へ向かうタワー」と「伝統が息づく下町」という、このエリア特有の魅力がより深く感じられるかもしれません。

新駅舎のデザインそのものも、視線を自然と東京スカイツリーへ誘導する工夫が凝らされているため、駅舎の外観とレリーフ作品が一体となって、スカイツリーの存在感を際立たせているとも言えます。

観光客も地元の人も、新しい「玄関口」を楽しめる時代に

とうきょうスカイツリー駅は、東京スカイツリータウンや周辺商業施設へのアクセス拠点として、年間を通じて多くの人が利用する駅です。その玄関口が、高架化による利便性向上アート作品の再公開によって、これまで以上に魅力的な場所になりつつあります。

レトロな雰囲気を残す旧ホームが役目を終えたことには、惜しむ声もあります。しかし一方で、近未来的で開放的な新駅舎と、澄川氏の想いが込められた「TO THE SKY」というアート作品が、新たな時代の駅の姿を象徴しているとも言えるでしょう。

東京スカイツリーを訪れる際には、タワーだけでなく、ぜひ「とうきょうスカイツリー駅」というもうひとつの見どころにも目を向けてみてください。ホームや改札を行き交う日常の中に、歴史の移ろいと芸術の息吹が感じられるはずです。

参考元