「マルハン」が仕掛ける“制服革命”と「MIRACLE WORLD」誕生――エンタメの常識が変わり始めた
パチンコ業界最大手のひとつであるマルハンが、従業員およそ1200名の声を反映させた「制服改革」を進めています。これは単なるユニフォームの変更ではなく、「個性」と「多様性」を尊重する新しい働き方を目に見える形で示す、大きな一歩です。同じタイミングで、大阪・なんばエリアにはアートとテクノロジーが融合したデジタルアート拠点「MIRACLE WORLD(ミラクルワールド)」がオープンし、街全体が新しいエンターテインメントの姿を模索し始めています。
1200人の声から生まれた「制服革命」とは
マルハン東日本カンパニーは、従来の「決まった制服を皆が同じように着る」という“当たり前”を見直し、従業員一人ひとりの個性や違いを最大限尊重することを目的に新制服を開発しました。プロジェクトにはアルバイトから経営陣まで、約1200人がアンケートや座談会を通じて参加し、「現場の声」を徹底的に取り入れた点が大きな特徴です。
この制服改革は、2023年から同社が進めてきた「東日本スタイル」という取り組みの延長線上にあります。ヘアスタイルやネイルなど身だしなみルールの緩和を行い、従業員が自分らしく働ける環境づくりを進めてきましたが、その集大成のひとつとして「新制服」が位置づけられています。
新制服のコンセプト:一体感と個性の両立
新しい制服のキーワードは、「一体感」と「個性」の共存です。全員が同じイメージを共有しつつ、その中で自分らしさも表現できるよう、デザインや素材、着こなしの自由度にさまざまな工夫が盛り込まれています。
- カラーバリエーション:一般職は「エッセンシャルネイビー」、マネージャー職は「クラスグレー」を基調に設計。職位の違いがひと目でわかりつつ、落ち着いたトーンで上品な印象を与える構成になっています。
- ジェンダーレスなデザイン:男女共通で着こなせるデザインを採用し、幅広い世代・性別の従業員が「自分らしく」着られることを重視しています。
- 自己表現の余地:スカーフやベルト、靴、靴下などの小物は、ベースカラーと大きくぶつからなければ色を自由に選べる仕様に。これにより、統一感を保ちながらも、従業員一人ひとりがさりげなく個性を出せるようになっています。
こうした工夫について、プロジェクトリーダーの飯田崇寛氏は「新制服は、一体感と個性の共存を象徴するもの」と語り、「従業員の“好き”を尊重することで、お客様にもポジティブなエネルギーを届けられる」とコメントしています。
動きやすさ・機能性の追求:「最高に動きやすい」現場目線
制服改革では見た目だけでなく、機能面へのこだわりも徹底されています。現場からは「動きやすさ」や「収納のしやすさ」など、日々の業務に直結する要望が数多く寄せられました。
- 高機能素材の採用:生地には「SOLOTEX®4WAYダブルクロス」や「デュアルファイン®」といった素材を採用し、伸縮性と動きやすさ、さらに吸汗速乾性を両立しています。
- 収納力あるポケット:ホール業務で必要なアイテムを効率よく持ち運べるよう、ポケットの数や配置を見直し、「必要なものをすぐ取り出せる」設計に。これにより作業効率が上がり、細かなストレスの軽減につながっています。
実際に着用している従業員からは「最高に動きやすい」「ポケットが増えて本当に便利になった」といった声が多く寄せられており、「業務中のストレスが減った」という具体的な評価が上がっています。
髪色・小物も自由に――“好き”を着こなす職場づくり
新制服プロジェクトと合わせて、髪色や身だしなみのルールも見直しが行われました。これまで制限されがちだったヘアカラーについても、赤や青といった鮮やかな色を含めて自由度を大きく広げ、「働く人の意欲的な自己表現」を後押ししています。
また、前述の通りスカーフ・ベルト・靴・靴下といった小物も、基本的には色を自由に選べるようにしており、制服の土台の上に「自分らしさ」を重ねる楽しみが生まれました。社内では「#好きを着こなせ」というハッシュタグのもと、従業員同士が着こなしの写真を共有し合う動きも生まれています。
「これ可愛い!」「こんなアレンジを真似してみたい」といったやりとりが活発になり、店舗を越えたコミュニケーションが広がっているといいます。制服が、単に「仕事着」ではなく、「毎日が少し楽しみになる要素」として機能し始めているのがわかります。
制服改革がもたらす社内外への影響
マルハン東日本カンパニーは、今回の制服改革を通じて、従業員の働く意欲の向上と、顧客視点に立った接遇品質の強化を目指しています。従業員が自分らしく、誇りを持って働ける環境を整えることで、その前向きな気持ちがお客様への接客にも自然と表れていくという考え方です。
同社は企業パーパスとして「人とつながりの力で、人生100年時代に生きるヨロコビを創造する」という言葉を掲げており、制服改革はその具体的な取り組みのひとつでもあります。制服をきっかけに、コミュニケーションが活性化し、職場全体に一体感と活気が生まれていることは、目に見える成果といえるでしょう。
ホールスタッフの姿は、お客様にとって「店舗の雰囲気そのもの」を象徴する存在です。そこに「個性」と「多様性」を認めるメッセージが込められていることは、パチンコ店のイメージ刷新という意味でも大きな意義を持っています。
アートとテクノロジーが交差する「MIRACLE WORLD」誕生
一方で、大阪・ミナミエリアでは、エンターテインメントの新たな拠点として「MIRACLE WORLD(ミラクルワールド)」が誕生しました。場所は大阪・なんばの千日前商店街エリアで、2025年12月5日にグランドオープンしています。
「MIRACLE WORLD」は、アートとテクノロジーが融合した“超現実”の世界をコンセプトにしたデジタルアート施設で、光や音、映像などを駆使した没入型の体験空間が特徴です。来場者は、ただ作品を「見る」だけでなく、身体を動かし、映像と反応し合うようなインタラクティブな仕掛けを通して、非日常の世界に入り込むことができます。
ミナミエリアにはこれまでも、劇場やライブハウス、飲食店など多様なエンタメ施設が集積してきましたが、「MIRACLE WORLD」はそこにデジタルアートという新しいジャンルを持ち込む存在として注目されています。商店街の一角に誕生したことで、観光客だけでなく、買い物や食事を楽しむ人々にとっても、ふらりと立ち寄れる新スポットとなりそうです。
ミナミの街が「デジタルアート拠点」へ
千日前商店街は、昔ながらの飲食店や娯楽施設が並ぶエリアとして親しまれてきましたが、近年はインバウンド需要の高まりもあり、国内外の観光客でにぎわう場所になっています。そこに「MIRACLE WORLD」が加わることで、ミナミエリアがデジタルアートの発信地として進化していく可能性が高まっています。
従来の「見る」「聴く」中心のエンタメから、「体験する」「没入する」スタイルへと移行する流れは、世界的にも加速しています。なんば・千日前にオープンしたこの施設は、そのトレンドを象徴する存在といってよいでしょう。家族連れ、カップル、友人同士など、世代を問わずに楽しめる内容であれば、地域全体の回遊性向上や、周辺店舗への波及効果も期待されます。
制服改革とデジタルアート拠点――共通する「体験価値」の重視
一見、パチンコホールの「制服改革」と、ミナミに誕生した「MIRACLE WORLD」は別々のニュースに思えます。ところが、背景にある考え方には共通点が見えてきます。
- 人を主役にする発想:マルハンの制服改革は、働く人の「個性」と「多様性」を尊重し、従業員一人ひとりを主役に据える取り組みです。「MIRACLE WORLD」は、来場者が作品世界の中に入り込み、自らの身体や感覚を通じてアートを体験する場として設計されています。
- “体験価値”の重視:制服を通じた自己表現や社内コミュニケーションの活性化は、働く人にとっての体験価値を高めるものです。同様に、デジタルアート空間での没入体験は、訪れた人の心に残る新しい価値を生み出します。
- 常識を少しずつ書き換える動き:パチンコ店の「画一的な制服」という常識を変えようとするマルハンの取り組みと、商店街に「デジタルアート拠点」を生み出す試みは、ともに既存のイメージを一歩先に進めるチャレンジと言えます。
どちらも、エンターテインメントやサービスが「モノ」から「コト」、さらには「ヒト」へと重心を移していく流れの中に位置づけられる動きです。働く人・訪れる人の体験を中心に据え、その周辺に場や仕組みをデザインしていく。今後、こうした取り組みは、さまざまな業界へさらに広がっていくかもしれません。
これからのエンタメと働き方のヒント
マルハンの制服改革が示したのは、「制服」というごく日常的なものにも、企業の価値観やメッセージを込められるということです。従業員の声を丁寧に拾い上げ、デザインや機能に反映させるプロセスそのものが、組織の風土を変えるきっかけにもなります。
また、「MIRACLE WORLD」のようなデジタルアート施設は、技術と表現を掛け合わせることで、人の感情や想像力を揺さぶる新しい体験を生み出しています。そこには、街の魅力を高め、地域の人々や観光客をつなぐ力も期待されています。
働く人が「自分らしくいられる」こと、訪れた人が「心からワクワクできる」こと。どちらも、これからのエンタメやサービスにとって欠かせない要素です。マルハンの制服革命と「MIRACLE WORLD」の誕生は、その流れを象徴するニュースとして、今後も注目を集めていきそうです。



