インテル対コモ、躍進クラブが挑むセリエA上位決戦――ファブレガス監督「世界で最高の試合を見せたい」

セリエA第14節で行われるインテル対コモは、今季のイタリアリーグを象徴する「伝統の強豪対、新興勢力」という構図のビッグマッチとなります。3位のインテル5位のコモが激突する上位対決は、タイトル争いだけでなく、セリエA全体の勢力図を占う一戦として大きな注目を集めています。

コモを率いるセスク・ファブレガス監督は試合前の会見で、「世界で最高の試合を見せたい」と意気込みを語り、自身に浮上していたインテル監督就任の可能性や、昨夏に「ほぼ決まりかけていた」という移籍話にも触れました。クラブとして歴史的な躍進を遂げているコモと、それを迎え撃つインテル――この試合は、単なる勝ち点3以上の意味を持つゲームになりそうです。

躍進するコモ、昇格組からセリエA上位へ

今シーズンのコモは、開幕からの13試合で24ポイントを獲得し、5位につける躍進ぶりを見せています。昇格組としてセリエAに戻ってきたクラブが、短期間でここまで順位を上げるのは決して簡単なことではありません。

メディアによると、コモは第13節終了時点で公式戦12試合負けなしと、安定した結果を残しており、戦術面とメンタル面の両方で充実した状態にあります。特定のスター個人に依存するのではなく、組織的な守備と素早いトランジションを軸とした「チームとしての強さ」が際立っていると評価されています。

さらに、コモは移籍市場での積極的な補強と、若手有望株の発掘でも注目されています。アルゼンチン代表MFニコ・パスは、その象徴的存在で、ここまでのリーグ戦7試合で4得点4アシストと、チームの得点の多くに関わる活躍を見せています。このパフォーマンスにより、インテルを含むビッグクラブから強い関心を集める存在となっています。

ファブレガス監督の哲学とインテルへの特別な思い

コモを率いるセスク・ファブレガス監督は、現役時代にアーセナルやバルセロナなどで活躍した世界的MFとして知られます。その知見を土台に、コモではポジショナルプレーと緻密なビルドアップを取り入れた、現代的なフットボールを構築していると伝えられています。

今夏、インテルを4シーズン率いたシモーネ・インザーギ前監督の後継者候補として、ファブレガスの名前が複数メディアで取り沙汰されました。本人はインテル戦前のインタビューで、次のように語っています。

「(インテル行きの)この話をするつもりはない。現在は関心がなく、この質問はつらい気持ちになる。私はコモにいて全力を尽くし、身を削っているんだ。明日は素晴らしいパフォーマンスを見せ、成長を続けるために勝ちに行くつもりだ。世界で最高の試合を見せたい

さらにファブレガスは、インテルへのリスペクトも強調しています。

「サンシーロへは、UCLのインテルの試合を見にかなりよく行く。インテルは最も強いチームだからね。『インテルを分析している』と言うことを恥じるつもりはない。私はインザーギのインテルをリスペクトしていた。選手たちは目を閉じても、みんながどこにいるのか分かっているようだった」

このコメントからは、対戦相手への最大限の敬意と、自身のクラブへの強い忠誠心の両方が伝わってきます。インテルへの関心を聞かれて「今は話したくない」としつつも、「コモで身を削っている」と語る姿勢は、選手やサポーターにとっても大きな安心材料といえるでしょう。

実現しなかった「ほぼ決まりかけていた」移籍と、コモの眼力

ファブレガス監督は、インテル戦を前に、今夏の移籍市場で「ほぼ決まりかけていた」補強話があったことも明かしています。名前が挙がったのは、現在ビッグクラブに在籍する選手たちで、当時はコモへの加入に近づいていたといいます。

具体的な選手名として、記事ではスチッチルイス・エンリケといった選手が紹介されています。彼らは最終的にビッグクラブへと移籍していきましたが、ファブレガスはこの経緯をポジティブに捉えています。

「彼らがその後、ビッグクラブへ移籍したのだから、コモの見る目は優れているという印だ」

つまりコモは、いわば「ビッグクラブが本格的に注目する前」の段階で有望株を発掘できているという自負を持っているということです。実際に、ニコ・パスのような若手を発掘し、チームの中心選手に育て上げていることも、その証左といえるでしょう。

インテルとコモ、それぞれの今季の立ち位置

インテルは今季、ここまで27ポイントを獲得して3位につけており、スクデット争いにしっかりと絡んでいます。クラブとしての経験値、選手層の厚さ、タイトル争いのプレッシャーに慣れたメンタリティは、依然としてリーグトップクラスです。

一方のコモは、13試合を終えて24ポイントで5位。ヨーロッパカップ出場圏内をうかがう位置につけており、「昇格組」ではなく、完全に「上位クラブの一角」として扱われ始めています。両者の勝ち点差はわずか3ポイントで、この直接対決の結果次第では、順位表の並びが大きく変わる可能性もあります。

また、インテルは総合力と層の厚さで上回る一方、コモはチームとしての勢いと、負けなしが続く自信と一体感を武器にしています。この「経験とクオリティのインテル」対「勢いと組織力のコモ」という構図が、勝負の行方をより読みにくくしています。

ナポリ対ユヴェントスと並ぶ、第14節の焦点カード

セリエA第14節では、インテル対コモ戦と並んで、ナポリ対ユヴェントスというビッグマッチも組まれています。この節は、タイトル争いの行方を占う上で非常に重要な一節と捉えられており、イタリア国内外で高い注目度を集めています。

メディアのプレビューによると、ユヴェントスはナポリとの「大一番」を制することができれば、優勝争いにより深く絡んでいける可能性があるとされています。インテルもまた、コモ相手に取りこぼすわけにはいかず、上位勢の足並みを揃えるためにも勝利が求められる状況です。

ナポリ対ユヴェントスについては、テレビ放送やネット配信の予定も詳細に案内されており、この第14節全体が「セリエAの今季を占う重要な週末」と位置づけられていることが分かります。その中で、インテル対コモが「新興勢力の真価を問う試合」として位置づけられている点は、コモにとってもクラブの歴史に残るゲームとなるでしょう。

インテルとコモをめぐる移籍市場の視線

ピッチ上の対決と同時に、両クラブは移籍市場

その中で大きく報じられているのが、インテルがニコ・パスの獲得に向けて、移籍金5800万ユーロ(約101億円)を準備していると伝えられたニュースです。スペイン紙の報道によれば、インテルはすでに1年前からニコ・パスに注目しており、副会長ハビエル・サネッティがニコ・パスの父親と食事をともにする姿が目撃されていたとも報じられています。

つまり、今回のインテル対コモ

「世界で最高の試合」を目指す、静かな決意

ファブレガス監督はインタビューの中で、「明日は素晴らしいパフォーマンスを見せ、成長を続けるために勝ちに行くつもりだ」と語り、勝利への意欲とともに「成長」というキーワードを強調しました。これは、1試合だけの結果ではなく、シーズンを通じてのクラブの進化を常に意識している姿勢を表しています。

同時に、「世界で最高の試合を見せたい」という言葉には、単にスコアだけではなく、内容面でファンを魅了したいというエンターテインメント性への意識

伝統ある強豪インテルと、躍進を続けるコモ。両者がサン・シーロで相まみえるこの一戦は、セリエA第14節の中でもひときわ大きな意味を持つ試合です。結果がどう転んだとしても、この試合が今季セリエAの物語の重要な一章として語り継がれることになりそうです。

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