早稲田大学が留学生の学費値上げを検討 背景に何があるのか?
早稲田大学が、外国人留学生に限って学費の引き上げを検討していることが明らかになりました。
日本国内で最も多くの留学生を受け入れている大学だけに、この動きは大きな注目を集めています。また、東北大学が留学生の学費を1.7倍に引き上げる方針を示すなど、他大学にも同様の議論が広がっており、広島大学や早稲田大学などもその流れの中で検討を進めているとされています。
ここでは、早稲田大学が学費値上げを検討する背景や、国内の他大学の動き、そして今後の留学生受け入れにどのような影響が出る可能性があるのかを、できるだけわかりやすく解説します。
早稲田大学が公表した「留学生学費値上げの検討」とは
早稲田大学は12月5日、外国人留学生の学費を値上げする方向で検討していると公表しました。
ただし、
- 具体的な値上げ幅(いくら上がるのか)
- 値上げを行う時期
については、まだ未定であり、今後も慎重に検討を続けると説明しています。
さらに重要な点として、現時点では
- すでに在学している留学生は値上げの対象外とされていること
が挙げられます。つまり、検討されているのは、今後入学してくる留学生に対する学費の新たな水準であり、現在学んでいる留学生の負担をただちに増やすものではないと説明されています。
国内最多、早稲田大学の留学生数
早稲田大学は、日本の大学の中でも、とりわけ留学生受け入れに積極的な大学として知られています。
日本学生支援機構の調査によると、2024年5月1日時点で早稲田大学に在籍する留学生の数は5,562人にのぼり、これは国内で最多の人数です。
これだけ多くの留学生が学んでいるということは、国際色豊かなキャンパス環境が整っている一方で、大学側には
- 教育体制の整備
- 生活・相談支援の強化
- 多言語対応の事務体制
など、さまざまな面で大きな負担やコストが発生していることも意味します。
なぜ留学生の学費値上げを検討するのか
早稲田大学が留学生向けの学費値上げを検討している理由として、最大のポイントとされているのが「受け入れに伴うコストの増大」です。
具体的には、同大学では次のような取り組みを行ってきました。
- 日本語だけではコミュニケーションが難しい学生に対応するため、英語で対応できる職員やカウンセラーを新たに雇用
- 「日本語教育研究センター」で、日本語を学べるカリキュラムやサポート体制を整備
- 留学生の生活・学習相談、就職支援など、各種サポートの充実
こうした取り組みはいずれも、留学生が安心して学び、生活できる環境をつくるために重要なものですが、その一方で多額の支出が伴うのも事実です。
大学側はこれまで、こうしたコストを大学全体の運営費などで負担してきましたが、
- 物価や人件費の上昇
- 国からの運営費交付金や補助金の伸び悩み
- 設備更新や教育内容高度化への投資の必要性
などを背景に、現在のままの学費水準で留学生支援を続けることが難しくなっている側面があると説明されています。
東北大学「1.7倍」など、他大学にも広がる動き
今回の早稲田大学の動きは、単に一つの大学だけの問題ではありません。ニュースでは、東北大学が留学生の学費を1.7倍に引き上げる方針を打ち出したことが話題となっており、それをきっかけに、広島大学や早稲田大学など、他の大学でも留学生の学費水準を見直す動きが出ていると報じられています。
こうした背景には、
- 各大学で留学生向け支援体制を整えるための追加コストの増加
- 大学全体としての財政状況の厳しさ
- 「誰がどの程度、そのコストを負担するのか」という公平性の議論
など、構造的な問題があります。
とくに、英語で授業を行うコースや専攻を設けたり、多言語での事務対応を行ったりするには、専門の教員や職員の確保が必要です。そのため、留学生受け入れに積極的な大学ほど、こうした費用負担が大きくなりやすいという構図があります。
早稲田大学が強調する「慎重な検討」と「支援継続」
一方で、早稲田大学は今回の学費値上げの検討について、あくまで
- 金額・時期は未定であり、
- 今後も慎重に検討を続ける
という姿勢を明確にしています。
また、同大学は長年にわたり、留学生に対してさまざまな支援を行ってきました。
- 英語対応の事務窓口やカウンセリング体制
- 日本語学習の支援
- 奨学金制度や授業料減免制度
など、多様な取り組みは今後も重要であり、「学費の見直し」と「支援の充実」をどのように両立させていくのかが焦点となります。
在学中の留学生への影響は?
現時点で公表されている内容の中で、多くの留学生や関係者にとって安心材料となっているのが、
- 現在在学している留学生は値上げの対象外とされていること
です。
もし学費が大きく変わる場合でも、すでに在学している学生に対しては、入学時に想定していた学費水準を尊重し、途中からの突然の負担増とならないようにする配慮が示されています。
一方で、2026年度以降に入学を検討している留学生にとっては、
- どの程度の学費になるのか
- 奨学金や減免制度はどうなるのか
- 他大学との費用比較をどう考えるか
といった点が、進学先を選ぶうえでより重要な検討材料になっていくと考えられます。
「国際化」と「負担の公平性」のはざまで
今回の動きは、日本の大学が掲げる国際化戦略とも強く関わっています。
多くの大学は、「海外から優秀な留学生を受け入れ、キャンパスの多様性を高めること」が将来の発展にとって重要だと位置づけています。
一方で、そのために必要な
- 英語による授業の拡充
- 留学生支援スタッフの配置
- 日本語教育や生活サポート
には、相応の経費がかかります。
その負担を、
- 日本人学生と留学生でどのように分担するのか
- 国や自治体の支援をどの程度あてにできるのか
- 大学独自の財源(寄付金や事業収入など)でどこまで賄えるのか
といった点は、大学経営における大きな課題です。
留学生の学費を引き上げる動きは、「留学生自身にも一定の負担を求めることで、受け入れ体制を維持・強化する」という発想に基づいていると考えられますが、同時に、
- 経済的に余裕のない留学生が日本留学をあきらめてしまうのではないか
- 日本の大学の魅力が相対的に下がってしまうのではないか
といった懸念の声も出ています。
今後のポイント:情報収集と制度の確認が重要に
今後、早稲田大学が具体的にどの程度の学費引き上げを行うのか、そしていつから適用するのかは、大学からの正式な発表を待つ必要があります。
留学を検討している人や、その家族にとっては、
- 大学の公式サイトや説明会での情報
- 奨学金や授業料減免制度の有無・条件
- 他大学との費用や支援制度の比較
を丁寧に確認していくことが、これまで以上に重要になっていきそうです。
また、早稲田大学のように多くの留学生を受け入れる大学では、「学費の値上げ」と同時に、
- 経済的負担の大きい学生への配慮
- 支援制度の拡充や情報提供のわかりやすさ
といった観点が、これまで以上に問われることになるでしょう。
日本の大学全体としても、「留学生を積極的に受け入れる」ことと、「財政的な持続可能性」や「学生間の公平性」をどう両立させるのかという議論が、これからさらに深まっていくと考えられます。



