メタマスクが「予測市場」に本格参入──ポリマーケット連携でウォレット内取引が現実に

暗号資産ウォレットとして世界的に利用されているMetaMask(メタマスク)が、ついに予測市場の世界へ踏み出しました。
分散型予測市場の大手であるPolymarket(ポリマーケット)と提携し、スマホのメタマスクアプリだけで、政治やスポーツ、暗号資産価格など、現実世界の出来事を「予測して取引」できる機能を提供し始めています。

同じタイミングで、バイナンス傘下のTrust Wallet(トラストウォレット)も予測市場へのアクセス機能をローンチし、ポリマーケットなどに対応する計画を明らかにしました。
さらに、バイナンスの創業者CZ(チャンポン・ジャオ)と元社員がタッグを組み、新たな予測プラットフォームpredict.funを立ち上げる動きも伝えられており、暗号資産業界では「予測市場」が一気にホットなテーマとなっています。

メタマスクが実装した「ウォレット内予測市場」とは?

メタマスクが今回発表したのは、モバイルアプリ内から直接ポリマーケットの予測市場に参加できる機能です。 これにより、ユーザーは以下のような体験が可能になります。

  • メタマスクアプリを開くだけで、予測市場の一覧を閲覧
  • 関心のあるテーマ(選挙結果、スポーツ試合の勝敗、ビットコイン価格など)を選んで、その場でポジションを購入・売却
  • EVM互換チェーンのトークンを使い、ワンタップ入金で即座に予測市場へ参加
  • KYC(本人確認)や複雑なオンボーディング手続きは不要
  • 市場が決着した際の利益は、メタマスクのウォレットに直接反映される

これまでは、予測市場を利用するには専用のdAppにアクセスし、ネットワーク切り替えやブリッジなど、慣れない操作が必要でした。
しかし今回の統合によって、「いつも使っているウォレットアプリの中ですべて完結する」ことが大きな変化となっています。

ポリマーケットとの連携内容:使い勝手と特徴

メタマスクと連携するPolymarketは、分散型予測市場として世界的に利用されているプラットフォームです。 今回の統合により、次のような特徴が生まれています。

  • 現実世界のイベントにベット:選挙や政策決定、スポーツの結果、暗号資産価格の行方などの結果に基づく市場に参加可能
  • 「群衆の知恵」を価格に反映:多くの参加者の判断が価格となり、予測の「確からしさ」を示す指標として機能
  • セルフカストディを維持:資産や秘密鍵は引き続きユーザー自身が保管し、第三者に預ける必要はない
  • 高速な注文執行:モバイルアプリからシームレスにオンチェーン取引が実行されるよう設計

また、メタマスク独自の報酬プログラム「MetaMask Rewards」とも連動し、
予測市場での取引ごとにポイントが付与される仕組みも用意されています。
このポイント制度は、すでに始まっているトークン展開やステーブルコイン「mUSD」など、メタマスクが進めるエコシステム拡大の一部として位置づけられています。

なぜ今、「予測市場」なのか──その背景と意味

予測市場とは、将来の出来事の結果を対象とした市場で、
「どちらの候補が勝つか」「ある日までにビットコイン価格がいくらを超えるか」などを、トークン化されたポジションの売買を通じて予測する仕組みです。

ここで重要なのは、価格そのものが「多くの人がどう考えているか」を表す指標になる点です。
特定の専門家の予測だけでなく、世界中の参加者の知見や情報が集約されることで、
一部の調査やアンケートよりも高い精度の予測を示す例も報告されています。

メタマスクがこの分野に踏み込んだ背景には、いくつかのポイントがあります。

  • DeFiから「ソーシャル・フィナンス」へ:単なる資産運用やスワップにとどまらず、現実の出来事と連動した参加型の金融体験が求められている
  • オンチェーン金融プラットフォーム化:メタマスクは永続契約取引(Hyperliquidとの連携)なども展開しており、個人向けオンチェーン金融のハブを目指している
  • ユーザー基盤を生かした新たな収益機会:すでに世界中に広がるユーザー数を、ポリマーケットなどの流動性に接続することで、新たな経済圏を作り出す狙いがある

一方で、予測市場は多くの国・地域で「賭博」と「金融商品」の間に位置するグレーゾーンの側面も指摘されています。
今回のメタマスクの動きは、規制当局からの注目も集める可能性が高く、今後のルール整備や地域制限などの動向にも関心が集まっています。

Trust Walletも予測市場対応へ──ウォレット同士の競争が激化

バイナンス傘下のTrust Walletも、ポリマーケットなど複数の予測市場プラットフォームへアクセスできる機能をローンチする方針を発表しました。
これにより、メタマスクとトラストウォレットという主要ウォレット同士が、「予測市場への入り口」として競い合う構図が生まれつつあります。

これまでウォレットは、「資産を保管し、送金し、dAppに接続するためのツール」というイメージが強いものでした。
しかし今後は、

  • どれだけ多様な金融サービスへシームレスにアクセスできるか
  • ユーザーが興味を持つコンテンツや体験をどれだけアプリ内に取り込めるか

といった点が重要な差別化要因になっていきそうです。

CZと元社員の「predict.fun」──因縁の和解?

さらに業界では、バイナンス創業者のCZ(Changpeng Zhao)と、過去に対立が取り沙汰された元社員が手を組み、予測プラットフォーム「predict.fun」を立ち上げる動きも報じられています。

詳細なサービス内容はこれから明らかになる部分も多いものの、
「元上司と元部下の“因縁の和解”」「予測市場ブームへの新たな参入」といった文脈で大きな話題となっています。
メタマスクやTrust Walletがウォレットを起点とした予測市場アクセスを強化する一方で、
predict.funのような専用プラットフォーム型のサービスも増えていく可能性があります。

メタマスク利用者にとってのメリットと注意点

今回のメタマスクとポリマーケットの統合により、一般ユーザーにとっては次のようなメリットが生まれます。

  • アプリ1つで完結:ネットワーク切り替えや別サイトへのアクセスなしで予測市場に参加できる
  • セルフカストディで安心感:秘密鍵や資産はこれまで通り自分のウォレットで管理できる
  • 少額から参加しやすい:暗号資産を使って柔軟な金額設定でポジションを持つことができる
  • イベントを「見る側」から「参加する側」へ:選挙やスポーツを、より主体的に追いかけるきっかけになる
  • 報酬ポイントも獲得:MetaMask Rewardsとの連携により、取引ごとにポイントをためられる

その一方で、いくつかの注意点もあります。

  • 価格変動リスク:予測が外れれば、投入した資金を失う可能性がある
  • 規制面の不確実性:地域によっては利用が制限される、または将来的にルールが変わる可能性がある
  • 感情的な取引:スポーツや政治など感情が入りやすいテーマでは、冷静な判断が難しくなることもある

メタマスク側も、予測市場へのアクセスは承認された地域のユーザーを対象に提供するとしており、
利用可能かどうかは、居住地域や適用される規制によって異なります。

ウォレットは「金融の玄関口」へ──広がるWeb3の使い道

メタマスクは、これまでにも以下のような機能や展開を進めてきました。

  • 分散型取引所(DEX)と連携したスワップ機能
  • Hyperliquidを基盤とした永続先物取引のアプリ内提供
  • 独自ステーブルコイン「mUSD」のローンチと決済ネットワークへの統合
  • 報酬プログラム「MetaMask Rewards」の開始

そこに今回、ポリマーケットとの連携による予測市場機能が加わったことで、メタマスクは単なる「ウォレットアプリ」から、
個人のオンチェーン金融プラットフォームへと明確に進化しつつあります。

予測市場の統合は、ユーザーにとっては「ちょっとした興味から参加できるエンタメ性の高い金融体験」であると同時に、
Web3の世界でお金と情報がどのように結びついていくのかを体感できる入り口にもなっています。

今後の展望:予測市場は日常の一部になるのか

現時点では、メタマスクの予測市場機能はまだ始まったばかりです。
しかし、

  • MetaMask × Polymarket のウォレット内予測市場
  • Trust Wallet による予測市場アクセス機能のローンチ
  • CZと元社員による predict.fun の立ち上げ

といった動きを見ると、予測市場が今後の暗号資産・Web3業界において、
重要なユースケースのひとつとして位置づけられていく可能性は高いといえます。

スポーツ観戦や選挙のニュースをただ「見る」だけでなく、
結果に対する自分の考えをポジションとして表現し、その成否によって報酬が得られる──。
そうした体験が、メタマスクのような身近なウォレットアプリを通じて普及していけば、
予測市場はより多くの人にとって、日常的な金融行動の一部になっていくかもしれません。

メタマスクが切り開いたこの一歩は、Web3ウォレットの役割を大きく広げるだけでなく、
「お金」「情報」「予測」をめぐる私たちの関わり方そのものを変えていく可能性を秘めています。

参考元