BYD「ドルフィン」が100万台販売を突破、グローバル戦略を加速

中国の大手自動車メーカーであるBYDが、コンパクト電動ハッチバック「ドルフィン」の販売台数が100万台に達したと発表しました。このマイルストーンは、BYDの海洋シリーズにおいて「宋プラス」「シーガル」に続く3番目のモデルとなります。12月3日に報道されたこのニュースは、BYDの電動車市場における圧倒的な存在感を示す重要な成果として注目を集めています。

ドルフィンが記録した快挙

ドルフィンの100万台達成は、BYDの戦略的な商品開発と市場への対応力の高さを象徴しています。このコンパクトEVは、手頃な価格帯で高い性能を備えた大衆向けモデルとして、中国国内および海外市場で高い支持を獲得してきました。

ドルフィンシリーズの成功は、単なる数字の達成に留まりません。世界中の顧客に対して、最先端技術、効率的なパッケージング、そして安全性を兼ね備えたコンパクトEVの新たな体験を提供することに成功しました。このモデルが100万台を突破したことで、コンパクトEV市場におけるベンチマークとしての地位をさらに確固たるものにしています。

BYDの2025年における販売成績

BYDの2025年の成績は、ドルフィンの成功だけに留まりません。同社全体の販売実績は、業界全体に対する大きなインパクトをもたらしています。

1月から11月の乗用車向け純電気自動車(BEV)販売台数は206万6,000台を超え、単年で200万台を超えたのは世界初となりました。これは、電動車市場における新しい時代の到来を示す歴史的な瞬間です。かつてテスラが独占していた領域に、BYDが確実に足を踏み入れています。

1月から3月の四半期では、BYDの販売台数が前年同期比60%増の100万804台となり、初めて100万台を四半期で突破しました。この成長率の高さは、BYDの製品力の向上と市場戦略の成功を物語っています。純電気自動車(BEV)は39%増の41万6388台、プラグインハイブリッド車(PHEV)は76%増の約56万9710台という内訳で、複数のパワートレーン戦略による成功が見られます。

海外展開の加速と戦略

BYDの注目すべき動きは、積極的なグローバル化戦略です。1月から11月の海外販売台数は、すでに90万台を突破し、年内に100万台の大台を超える公算が大きいとされています。9月の海外向け販売台数は7万1,256台で、前年同月比で2倍以上という驚異的な成長を記録しました。

欧州市場では、BYDはすでに9車種を販売しており、2025年内に小型BEV「ドルフィン サーフ」を発売する計画を立てています。業界分析機関のS&Pグローバル・モビリティの予測によると、BYDの欧州販売台数は2025年に18万6,000台へと倍増し、2029年には40万台を超えると見通されています。

日本市場に対しても、BYDは戦略的なアプローチを展開しています。日本法人は4月1日、日本で販売されているドルフィンと電動SUV「アット3」の価格を約30万円引き下げると発表しました。これは日本市場での初めての大幅な価格引き下げであり、日本での事業拡大に対する強い決意を示しています。

2025年の販売目標と見通し

BYDは2025年の販売目標を550万台(うち海外80万台以上)に設定しています。この野心的な目標に対して、同社は着実に成果を上げています。

もっとも、9月の販売台数が1年半ぶりに前年割れ(前年同月比5.5%減)となるなど、若干の課題も浮上しています。9月の乗用車販売は39万3,060台で前年同月比5.9%減となりました。年末目標の達成には、残り約134万台の販売が必要で、今後3ヶ月間で平均月45万台を販売する必要があります。

ただし、業界関係者の間では、年末は自動車販売の繁忙期であることに加え、2026年から新エネルギー車に購入税が再課税されることから、年内に需要が前倒しで高まるとの見方もあります。こうした要因により、BYDが通年目標を達成する可能性は十分あるとも考えられています。

グローバル市場における立場の変化

BYDの2025年の成績は、世界の電動車市場における勢力図を大きく変えつつあります。かつてテスラが2023年に記録した納車台数は180万8,581台でした。BYDが206万6,000台を達成したことで、単に追いついただけではなく、余裕を持って競合他社を上回る立場を確立しています。

この変化は、単なる販売台数の逆転ではなく、大衆向けEV市場における主導権の交代を意味しています。BYDの成功は、中国の電動車技術と製造能力が世界水準に達したことを証明するものです。

ドルフィンの特徴と成功の理由

ドルフィンがこれほどまでの成功を収めた理由は、その卓越した価値提案にあります。コンパクトなボディサイズながら、最先端の電動技術と効率的なパッケージングを備えることで、多くの消費者のニーズを満たしています。

海洋シリーズの中でも、ドルフィンは特に価格競争力が高く、初めてEVを購入する消費者にとって理想的な選択肢となっています。環境への配慮と実用性を兼ね備えた製品として、世界中の市場で受け入れられています。

次世代のドルフィンモデルでは、航続距離と充電性能、そして寒冷地での耐久性がさらに強化される見通しです。これは「最後のひと押し」を求める主流層の需要に応える改良として期待されています。

日本市場での展開

BYDは日本市場においても着実な成長を遂げています。2023年1月の国内販売開始から2025年6月末までの累計登録台数が5,305台に達しており、6月の月間登録台数は512台を記録して、2ヶ月連続で過去最高を更新しました。

特に「ビッドシーライオン7」は5月度の登録台数が240台を超え、既販の3モデル(ドルフィン、アット3、シール)の販売増を牽引しています。日本市場でのブランド認知の向上と製品ラインナップの充実により、BYDの日本での事業は拡大局面を迎えています。

今後の展望

BYDのドルフィン100万台達成は、単なる一企業の成功事例ではなく、世界の自動車産業における構造的な変化を示唆しています。電動化の急速な進展に対応する能力、コスト競争力、そして市場ニーズへの対応力において、BYDが世界的なプレイヤーとしての地位を確立していることが明らかになりました。

今後、BYDは欧州や日本などの先進市場での販売拡大、次世代技術の開発、そしてサプライチェーンのグローバル化をさらに推し進めることで、世界の電動車市場における主導的な役割を担っていくと予想されます。ドルフィンの成功はその第一歩であり、BYDの壮大な戦略の一部に過ぎません。

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