SNS発祥の「エッホエッホ」が流行語大賞トップ10入り 一方で年間大賞は「働いて働いて……」に決定

2025年12月1日、東京都内で「現代用語の基礎知識選 2025 T&D保険グループ新語・流行語大賞」の発表・表彰式が行われました。今年の年間大賞は「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」に決定し、話題を呼んでいます。一方で、SNS発祥のネットミーム「エッホエッホ」がトップ10に選ばれるなど、今年の流行語大賞には多様性と議論の余地を示唆する結果となっています。

SNS発祥「エッホエッホ」がトップ10入り、その背景とは

今年のトップ10に選ばれた「エッホエッホ」は、2025年春にメンフクロウが走っているように見える1枚の画像から生まれたネットミームです。SNSユーザーたちがこの画像に「エッホエッホ」などの擬音語を付けて投稿したことで、X(旧Twitter)を中心に爆発的な広がりを見せました。受賞者はマルチアーティストのうじたまい氏と、X上で「エッホ」という文を投稿したうお座氏です。

このネットミームの受賞は、従来の流行語大賞とは異なる新しい時代を象徴しています。かつての流行語大賞は、テレビドラマや映画、著名人の発言など、メディアを通じて広がった言葉が中心でした。しかし近年、SNSの影響力が急速に高まる中で、一般ユーザーが生み出し、有機的に拡散される表現が流行語として認識されるようになってきたのです。

実際、2025年のノミネート30語には、楽曲中の歌詞・フレーズである「かわいいだけじゃだめですか?」や「ビジュイイいいじゃん」、人気コンテンツ発祥のワードである「見なよ…俺の○○を…(メダリスト)」「鬼になろう(鬼滅の刃)」など、多種多様なジャンルの言葉がノミネートされています。

年間大賞「働いて働いて……」が物議を醸す理由

一方で、今年の年間大賞に選ばれた「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」という表現には、複雑な背景があります。この言葉は、権力者の働き方や信条を反映したものとして注目を集めています。特に、高市氏など政治指導部が在宅勤務の増加と同時に、「働く」ことへのコミットメントを強調する姿勢との関連性が指摘されています。

流行語大賞が単なる言語現象ではなく、社会的・政治的なメッセージを含む可能性があるという点は、非常に興味深い問題です。過去には、流行語大賞に「巧妙なメッセージ」が含まれていると評された年もあり、今年の選出にもそのような意図が隠されている可能性について、メディアや評論家の間で議論が生じています。

流行語大賞の選出基準に対する違和感の正体

今年の流行語大賞の発表を受けて、多くの人々が「違和感」を感じています。その正体は何なのでしょうか。

第一に、年間大賞として選ばれた「働いて働いて……」という表現が、一般的な流行語というより、特定の政治家や指導層の信条を代弁するような性質を持っているという点です。通常、流行語大賞は、広く社会に浸透し、多くの人々が自然と使用するようになった言葉が選ばれます。しかし、この言葉は、権力者のメッセージ性が強く、必ずしも全国民が日常的に使用しているとは言えません。

第二に、SNS発祥の「エッホエッホ」のような、誰もが参加できるボトムアップ型のミームと、権力者の信条を反映したトップダウン型のメッセージとが、同じ流行語大賞の中に共存していることに、不整合を感じる人も多いのです。

第三に、過去の事例を参考にすると、流行語大賞が社会的・政治的なメッセージを含む傾向があることが、その透明性や公正性に関する疑問を生じさせています。流行語大賞の選出委員会が、どのような基準で言葉を選んでいるのか、その過程が十分に透明化されていないという問題もあります。

2025年の流行語大賞の全体像

2025年のトップ10には、「エッホエッホ」の他にも、以下のようなさまざまなジャンルの言葉が選ばれています。

  • 「トランプ関税」:経済産業大臣・赤澤亮正氏が受賞者として選ばれた、国際的な経済問題を反映した言葉
  • 「緊急銃猟/クマ被害」:ガバメントハンター田澤道弘氏が受賞者として選ばれた、社会的課題を反映した言葉
  • 「二季」:三重大学の立花義裕教授と滝川真央博士前期課程大学院生による、学術的な発見に関連する言葉
  • 「ミャクミャク」:2025年日本国際博覧会協会副事務総長の髙科淳氏が受賞者として選ばれた、博覧会関連の言葉
  • 「オールドメディア」:環境副大臣・参議院議員・作家の青山繁晴氏が受賞者として選ばれた、メディア論に関わる言葉

これらの言葉を見ると、政治家や公務員、学者など、権力層や知識階級に関連する言葉が数多く選ばれていることが分かります。一方で、「エッホエッホ」のように、一般のSNSユーザーが生み出したミームも混在しています。

SNS時代における流行語大賞の意義の変化

2025年の流行語大賞は、我々に重要な示唆を与えています。SNS時代において、流行語は単なる言語現象ではなく、社会的・政治的なメッセージ、そして一般市民の創造性と権力層のメッセージが交錯する場となっているのです。

かつての流行語大賞は、テレビを中心としたマスメディアが選別し、提示した言葉が中心でした。しかし、今日のような分散型メディア環境では、流行語は多元的な発生源を持つようになりました。SNSユーザーが有機的に生み出すミームがある一方で、政治家や企業が戦略的に発信するメッセージも、流行語として認識される可能性があるのです。

このような変化は、流行語大賞という制度そのものの意義や役割に対する問い直しを促しています。誰が流行語を定義し、どのような基準で選出するのか。そして、流行語大賞という権威的な制度が、特定のメッセージを社会的に正当化する役割を果たしていないか。こうした問題について、今後、より深い議論が必要とされています。

今後の流行語大賞に向けての課題

2025年の流行語大賞の発表を受けて、今後の課題が明確になってきました。第一に、流行語選出の透明性と公正性を確保することです。選出委員会が、どのような基準で言葉を選んでいるのか、その過程をより開放的にする必要があります。

第二に、ボトムアップ型のSNS発祥のミームと、トップダウン型の権力者のメッセージとの関係性を、より明確に区別・整理することです。これにより、流行語大賞の社会的信頼性が向上する可能性があります。

第三に、流行語大賞の多様性をより一層尊重することです。政治・経済・文化・学問など、さまざまなジャンルからの言葉が選出されることで、より豊かで多元的な社会言語の風景が形成されるでしょう。

2025年の流行語大賞は、「働いて働いて……」という年間大賞と、SNS発祥の「エッホエッホ」がトップ10に選ばれるという、一見矛盾した結果として、現代日本社会の複雑性を映し出しています。今後、流行語大賞がどのような役割を果たし、社会にどのような影響を与えていくのか。その動向から目が離せません。

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