沖縄戦後80年、ベトナム戦争終結50年を迎えて開催される特別展

沖縄県那覇市の沖縄県立博物館・美術館では、2025年11月22日から2026年1月18日まで、沖縄戦の終結から80年、ベトナム戦争の終結から50年というふたつの歴史的節目を迎えるにあたり、企画展「沖縄戦後80年・ベトナム戦争終結50年祈念『ベトナム、記憶の風景』」が開催されています。この展示会は、芸術を通じて過去と未来を静かに見つめ直し、戦争の記憶と平和への願いをテーマにした特別な企画となっています。

展示内容と見どころ

充実した作品ラインアップ

会場には、ベトナムにゆかりのあるアーティストによる絵画や写真など120点が展示されており、多角的にベトナムの歴史と文化を紹介しています。展示では、ベトナムの建国の父と呼ばれ、経済の中心都市の名前にもなったホー・チ・ミンを表現した絵画が紹介されるほか、沖縄県出身の報道写真家・石川文洋さんが戦争が激化したベトナムで4年間にわたって撮影した住民や軍人などの貴重な写真が展示されています。

平和への問いかけを表現した作品

展示作品の中でも特に注目されるのが、「平和な母」と題された作品です。この作品は、およそ200種類の迷彩柄のドレス像で構成されており、「平和の実現」について見る人に問いかける内容となっています。戦争と平和というテーマを、芸術的かつ創意工夫に富んだ表現方法で伝えることで、来館者の心に深く響く体験をもたらします。

ベトナム近現代美術の全体像

本展は福岡アジア美術館からの巡回展であり、植民地支配から戦争、統一、そして現代へと続くベトナムの歩みを4つの章と特別展示を通して紹介しています。ベトナムにルーツを持つ、あるいはベトナムと深く関わるアーティストが近代以降に手がけた作品とともに、沖縄県立博物館・美術館の所蔵品からベトナムに関連する選りすぐりの作品が出品されています。

芸術遺産の保存に焦点を当てた特別展示

また、三谷文化芸術保護情報発信事業財団が進める「グエン・ファン・チャン絵画保存修復プロジェクト」にも焦点があてられています。ベトナム農村の暮らしを描き続けたグエンの作品16点を、15年かけて修復した成果が展示される予定です。これにより、芸術遺産の保存という観点から展覧会の意義がさらに広がります。

沖縄会場の特別展示として、「沖縄戦後美術―記憶と抵抗の表現」と題した展示も予定されており、米軍基地問題やベトナム戦争との関わりを背景にした沖縄の美術作品が紹介されます。

関連イベントで深く学べる

シンポジウム開催

展示会に合わせて、シンポジウム「50年と80年-ベトナムと沖縄が語る芸術と平和」が2025年11月23日(日)午後2時から午後5時まで開催されました。このシンポジウムには、報道写真家の石川文洋さんがリモートで参加し、福岡アジア美術館学芸員の桒原ふみさんや沖縄県立博物館・美術館主任学芸員の豊見山愛さんが登壇しました。沖縄大学教授の若林千代さんがファシリテーターを務め、深い議論が展開されました。定員80人で参加費は無料、当日先着順での参加が可能でした。

学芸員によるキュレータートーク

展示期間中の2026年1月10日(土)午後2時から午後3時30分まで、沖縄県立博物館・美術館主任学芸員の豊見山愛さんによる「学芸員によるキュレータートーク」が開催されます。このトークでは、展示の構成や各作品の背景にある物語などについて、専門家による詳細な解説が聞けます。こちらも美術館企画ギャラリーで開場午後1時30分から参加可能です。

沖縄とベトナムの歴史的繋がり

この展示会は、単なる美術展示にとどまりません。沖縄とベトナムというふたつの地域は、戦争と平和、そして復興という共通の歴史的経験を持っています。沖縄戦は1945年に終結し、ベトナム戦争は1975年に終結しました。どちらも多くの犠牲者を出し、その痛みと悲しみは今なお人々の心に刻まれています。

本展は、芸術による記憶の継承と平和への願いをテーマに、沖縄とベトナムの記憶を未来へとつなぐことを目指しています。沖縄とベトナムというふたつの地域の歴史と文化が交差する地点に立ち、深い共感と理解を育む場となることが期待されています。

展示会の基本情報

  • 展示会名:沖縄戦後80年・ベトナム戦争終結50年祈念「ベトナム、記憶の風景」
  • 開催期間:2025年11月22日(土)~2026年1月18日(日)
  • 開催場所:沖縄県立博物館・美術館 企画ギャラリー1、企画ギャラリー2
  • 住所:沖縄県那覇市おもろまち3-1-1
  • 参加方法:当日先着順

平和への願いを共有する機会

この「ベトナム、記憶の風景」展は、単に過去の戦争を回顧するだけではなく、戦争が人々に与えた影響と、その中で生まれた芸術、そして平和への願いを現代に伝える重要な企画です。120点の作品を通じて、戦争の悲しみと人間の強さ、そして平和の大切さが、見る人の心に深く届くでしょう。

2026年1月18日までの開催となっていますので、この機会にぜひ沖縄県立博物館・美術館を訪れ、戦争の記憶と平和への願いを象徴する素晴らしい美術作品の数々をご鑑賞ください。沖縄とベトナムの歴史と文化が交差する特別な空間で、平和について深く考えるひとときを過ごすことができます。

参考元