アスクル、ランサムウェア攻撃から約1か月半でネット注文再開 法人向け通販サービスが本格復旧へ

オフィス用品の大手通販企業アスクルは、2025年12月3日にウェブサイト上での注文受け付けを再開しました。これは10月19日に発生したランサムウェア攻撃によるシステム障害から約1か月半ぶりの重要な進展となります。同社は今後も順次、対応商品を拡大していく予定で、本格的な復旧に向けて着実に歩を進めています。

ランサムウェア攻撃の影響と復旧の経過

アスクルは10月19日16時30分頃、ランサムウェア感染によるシステム障害を確認し、ウェブサイトからの新規注文受け付けを停止しました。この障害は倉庫管理システム(WMS)に影響を及ぼし、物流センターの入出荷業務全体が停止する事態に至りました。その後、同社はファクスのみの限定的な注文対応に切り替え、顧客への対応を継続していました。

約1か月半の間、アスクルの復旧チームと情報セキュリティの専門家が連携し、システムの安全性に関する対策を講じてきました。12月3日の再開により、ウェブサイトでの注文が可能になるとともに、段階的に利用可能な商品を拡大していく方針が示されています。

段階的な復旧と制限事項

12月3日午前9時から再開されたサービスは、当初は一部の商品に限定されています。アスクル側は、ご購入可能な商品を順次拡大していくことを明示しており、今月中旬ごろには倉庫管理システムを使った従来の出荷方法への復帰を見通しています。現在のところ、出荷作業は引き続き手作業で対応されており、自動化システムの完全復旧はもう少し時間が必要な状況です。

また、アスクルのウェブサイト上では、利用できないサービスも一部存在します。具体的には、勤務管理システムの「Touch On Time」やセーフティサービスの「Safetylink24」、従業員情報管理システムの「NAMEROOM」、そして各種引き取りサービスについては、現在のところ利用できない状態が続いています。カスタマーサポートについても、営業時間を月曜から土曜日の午前9時から午後6時に縮小しており、日曜祝日は休業となっています。

グループ企業への波及と復旧状況

ランサムウェア攻撃の影響は、アスクルの関連企業にも波及しました。アスクルのグループ会社で3PL(第三者物流)事業を手がけるASKUL LOGISTが、大型百貨店チェーンの良品計画に対して物流業務を委託していたため、良品計画の「無印良品ネットストア」も受注が停止されていました。

しかし、12月1日に良品計画は「無印良品ネットストア」の一部商品の受注・出荷業務を再開したと発表しました。再開対象となったのは、キャリーケースやマットレスなどのベッド用品といった大型商品、冷凍食品など6つのカテゴリで、合計1822品目が対象となっています。これに伴い、店舗での大型家具の商品取り寄せや注文受付も同日から再開されました。良品計画は、全商品の受注・出荷再開を12月中旬に予定しており、段階的な復旧を進めている状況です。

顧客情報流出の懸念と安全性対策

今回のランサムウェア攻撃に関連して、良品計画は11月14日に顧客情報が外部に流出した可能性があることを公表しています。これは利用者にとって非常に重大な問題であり、セキュリティ対策の強化が急務となっていました。

こうした状況を踏まえ、アスクル側は情報セキュリティ体制の抜本的な見直しを実施しています。12月3日のウェブサイト再開にあたり、アスクル側は専門家と連携しつつシステムの安全性に関する対策を講じており、安全にご注文いただけることを確認している旨を明示しています。ただし、現在のトライアル出荷は障害発生が確認されている倉庫管理システムを使用しない手運用による出荷スキームとなっており、従来とは異なる対応が続いている状況です。

経営への影響と市場反応

このランサムウェア攻撃は、良品計画の経営成績にも影響を及ぼしています。良品計画の11月度の既存店売上高が2カ月ぶりに前年割れとなり、株価も続落する状況となっているようです。ネットストアの停止期間が売上減少に直結したと考えられており、企業の危機管理体制の重要性が改めて浮き彫りになっています。

今後の展望と復旧スケジュール

アスクルは今回の事象を受け、単なるシステム復旧にとどまらず、情報セキュリティ体制の全面的な強化に取り組むことを表明しています。注文可能な商品は順次拡大される予定であり、今月中旬ごろには従来の倉庫管理システムを使った出荷方法への完全復帰を目指しています。

利用可能な商品数については、12月3日の時点で約1450万アイテム超に拡大することが予定されており、段階的ながらも着実な復旧が進行中です。アスクル側は「一日も早い全面復旧を目指し、全社一丸となって取り組んでまいります」とのコメントを発表しており、顧客からの信頼回復に向けた真摯な姿勢が窺えます。

このランサムウェア攻撃事件は、大型企業であってもサイバー攻撃による被害を完全には防ぎ切れないことを示す事例となりました。同時に、こうした危機的状況下での迅速な対応と段階的な復旧プロセスが、企業の持続可能性や信頼性にいかに重要であるかを改めて認識させる出来事となっています。

アスクルと良品計画は、この試練を乗り越えるべく、セキュリティ体制の強化と顧客サービスの復旧に全力で取り組んでいます。完全な復旧が実現されることで、両社の信頼がどの程度回復されるのかについては、今後の経営成績とサービス品質の向上が重要な指標となるでしょう。

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