プラダがヴェルサーチェ買収を完了、約1400億円の大型M&A
イタリアの高級ファッションブランド、プラダが2025年12月2日、ヴェルサーチェの買収を正式に完了しました。この買収は4月に発表された契約に基づくもので、プラダグループにとって大きな転機となるニュースです。
プラダはアメリカの親会社カプリ・ホールディングスからヴェルサーチェの株式100%を取得する契約を2025年4月に結んでいました。買収額は約13億7500万ドル(日本円で約1993億円)と報じられており、ファッション業界でも注目度の高い大型の企業買収となっています。
買収完了の意義
ヴェルサーチェはイタリアンファッション界の象徴的なブランドです。独特の美学と大胆なデザインで知られており、プラダのポートフォリオを強く補完する存在として評価されています。プラダグループのCEOアンドレア・グエラ氏は、ヴェルサーチェについて「ファッション業界を形作り、華やかさを打ち出し、スーパーモデルを世に送り出し、ファッションを大衆文化に近づけ、音楽をファッションに取り入れたブランド」と高く評価しており、この買収がグループの進化における重要な一歩であると述べています。
プラダグループの会長兼業務執行役員パトリッツィオ・ベルテッリ氏も、創造性、クラフツマンシップ、伝統といった共通の価値観を持つヴェルサーチェをグループに迎えられることを喜んでいると表明しています。この買収により、プラダはファッション業界における自社の地位をさらに強化することになります。
ヴェルサーチェの独立性を尊重
買収完了後も、プラダグループはヴェルサーチェの独自のクリエイティブなビジョンと文化的ルーツを守ることを約束しています。ブランドの個性を完全に失わせるのではなく、プラダグループの製造力、リテール戦略、運営ノウハウといった強力な基盤を活用しながら、ヴェルサーチェを発展させていく方針です。
プラダグループは既にプラダ本体とミュウミュウという2つの主要ブランドを運営しており、ヴェルサーチェはこれらを補完する形で統合されます。各ブランドの組織構造を垂直統合し、業務手順やプロセスを強化していくことで、効率的な運営体制を築く予定です。
グループの今後の戦略
グエラCEOは、買収完了後の今後3年間は、ヴェルサーチェの統合に全面的に取り組むと表明しており、少なくともこの期間中は追加の買収計画がないと述べています。プラダグループにとって、ヴェルサーチェという大きなブランドを統合することは、相応の時間と集中力を必要とする重要な経営課題となるのです。
先週、プラダの後継者ロレンツォ・ベルテッリ氏は、グループが「機会があれば」さらなる買収を検討する可能性があると述べたものの、現在のところ具体的な買収案件はなく、ヴェルサーチェの統合が最優先事項であると強調しています。
カプリ・ホールディングスの戦略的判断
ヴェルサーチェを売却したカプリ・ホールディングスは、この売却によってバランスシートを強化し、傘下のマイケル・コースへの戦略的投資を加速させることができると考えています。カプリは長年にわたってヴェルサーチェを保有し、素晴らしいブランドの伝統を守り、発展させてきた企業として、この売却決定を下しました。
ファッション業界への影響
今回の買収完了により、プラダグループはさらに一層強固な立場をラグジュアリーファッション業界で築くことになります。プラダは既に上半期の売上高を前年比9%増、実質8%の成長を記録しており、ミュウミュウも93%の大幅増収を達成するなど、好調な業績を維持しています。ヴェルサーチェの統合により、グループ全体の売上高はさらに拡大する見通しです。
また、ヴェルサーチェは3月にクリエイティブディレクターのドナテラ・ヴェルサーチェが退任を発表していましたが、プラダグループの配下に入ることで、新たなクリエイティブチームのもと、ブランドの再構築が期待されています。
長期的な成長への期待
プラダグループの経営陣は、ヴェルサーチェが今後大きく成長する可能性を秘めたブランドだと考えています。業界全体の不確実性がある中でも、プラダグループは長期的な戦略ビジョンに集中し、自信を持って未来を見据えているとのことです。
この買収の完了は、ファッション業界における大きなマイルストーンとなり、プラダグループとヴェルサーチェの両ブランドが協力することで、今後のラグジュアリーファッション市場においてどのような新しい価値を創造していくのかが注目されます。


