SNS映え求め、危険な撮影行為が急増
東京・港区の明治神宮外苑では、秋の紅葉シーズンを迎え、黄金色に染まったイチョウ並木が見頃を迎えています。美しい景色を求めて多くの観光客が殺到していますが、同時に深刻な問題も浮上しています。SNSで映える写真を撮ることを優先させるあまり、赤信号の横断歩道上で撮影し続けたり、車道の真ん中に出て写真を撮ったりするなど、危険な行為が相次いでいるのです。
取材班が現場で確認したところ、多くの人が撮影のため横断歩道で足を止めており、信号が赤に変わっていても撮影を続ける人々の姿が見られました。その影響で、車が左折できない状況にまで陥っていたといいます。さらに驚くべきことに、女性2人組が車道の真ん中で堂々と写真撮影をしているという極めて危険な光景も目撃されました。
警備員も対応に追われる現状
現場に配置された警備員は、危険な行為を目撃するたび「下がってください!」「車来てます!入ってください!」と声を上げ、人々を誘導し続けています。しかし、観光客の数があまりに多く、完全には対応しきれていない状況です。
実際に車道に出ていた撮影者に話を聞くと、明確な理由を答える人はほとんどいません。「人が多かったから」「別にあんまり理由はない」といった返答が聞かれるなど、危険性を十分に認識せずに撮影行為に及んでいる実態が明らかになっています。
六本木けやき坂での新たな対策
一方、六本木けやき坂でも過去に同様の問題が発生していました。2024年は、横断歩道の信号が青に変わるたび、来場者が車道に出てイルミネーションを撮影する危険な行為が相次いでいたのです。この教訓を活かし、2025年はより厳格な対策が取られています。
2025年は警備体制が大幅に強化され、前年の3倍となる6人の警備員が配置されました。これまでは2人態勢での対応でしたが、混雑する時期が年々早まってきていることから、イルミネーションスタート時から警備態勢を整えています。
具体的な対策として、信号が青になると車道に人が出られないよう警備員が規制線を張り、信号が点滅し始めると横断歩道にいる人々を一斉に誘導する体制が敷かれています。また、横断歩道上には規制線が張られ、人々が歩道に誘導されていく仕組みも整備されました。
年々増す混雑への対応課題
イルミネーション施設を運営する企業によると、年々混雑する時期が早まってきているため、安全管理がますます重要になってきています。2025年からは、シーズン開始直後から警備態勢を強化し、約3倍に増やされた警備員で対応する方針が取られています。
街の利用者からも好意的な評価が聞かれており、「警備員が多い方が見通しが良くなる」「みんなが立ち止まって撮影しているので、警備の存在は必要」といった声が上がっています。
撮影マナーの課題
今回の問題は、単なる警備員の増員では根本的に解決しない側面も明らかになっています。多くの撮影者が危険性を十分に認識していない、または認識していても「SNS映えする写真」という目標を優先させてしまっているからです。
横断歩道や車道での撮影は、自分自身の命を危険にさらすだけでなく、周囲の人々や車両運転手にも大きなストレスと危険を与えます。特に交通量の多い都市部では、わずかな注意散漫が重大事故に繋がる可能性があります。
安全で楽しい撮影のために
紅葉やイルミネーションの美しさを楽しむことは、多くの人にとって重要な体験です。しかし、その体験が他者の命や安全を脅かしてはいけません。横断歩道では信号をしっかり守る、車道には絶対に出ない、周囲の人の流れを妨げないといった基本的なマナーの徹底が急務です。
神宮外苑やけやき坂などの施設運営者による警備体制の強化は重要な対応ですが、最終的には訪問者一人ひとりの安全意識の向上が不可欠です。今回の報道を機に、撮影マナーに対する社会全体の認識が高まることを期待したいところです。



