年末商戦が引き金に。ヤマト運輸と佐川急便が全国で配送遅延を相次いで発表

物流業界が悲鳴をあげている。11月末から12月初旬にかけて、日本を代表する大手配送企業ヤマト運輸と佐川急便が相次いで配送遅延の発生を公表した。年末商戦の波状攻撃と高速道路工事の影響が重なり、全国的な物流の停滞が起きているのだ。

ブラックフライデーとお歳暮が荷物を激増させた

そもそもなぜこんなことが起きたのか。その背景にあるのが、アメリカ生まれの大セール「ブラックフライデー」だ。11月末に開催された大規模なオンラインセールにより、e-コマース各社に注文が殺到。さらに、これからお歳暮シーズンを迎えようとする時期と重なり、配送業者の処理能力は一気にオーバーフロー状態に陥った。

佐川急便は「急激な物量の増加に伴い、全国的にお荷物のお届けに遅れが生じている」と発表。通常時よりも格段に増えた荷量の前では、日時指定配達であっても遅延する可能性があるという深刻な状況である。ヤマト運輸も「一時的な荷量の増加」を理由に、一部地域での配送遅延を認めた。

高速道路工事が追い打ちをかける

だが問題はそれだけではない。ヤマト運輸の発表によれば、配送遅延の原因は「一時的な荷量の増加や高速道路工事の交通規制の影響」と複合的だという。高速道路の工事に伴う交通規制は、ただでさえパンク状態の物流ネットワークにさらなる負荷をかけている。サービスセンターも混雑し、電話がつながりにくい状況も報告されている。

佐川急便は、配達予定を知らせる「配達予定通知」をスマートクラブやLINEで一時的に配信停止する対応を取った。これは、予定通りに配達できない可能性が高いため、顧客に誤った情報を提供しないようにするための判断だと考えられる。

ユーザーはどう対応すべきか

このような状況の中、消費者に求められるのは「早めの発送」という意識の転換だ。年末商戦やお歳暮の配送を予定している場合、通常よりも日数に余裕を持つことが絶対条件となってきた。特に年末年始は帰省による交通渋滞も予想されるため、さらなる遅延リスクが高まっている。

配送業者側も対応を急いでいる。各社は「日数に余裕をもった利用」を呼びかけ、顧客への周知に力を入れている。ただし、これはあくまで応急措置。根本的な解決には、業界全体の体制強化が必要な状況が浮き彫りになっている。

アメリカ生まれのセール文化が日本の物流を揺さぶる

ここで注目したいのは、このような事態を引き起こした「ブラックフライデー」という文化的背景である。アメリカ発祥の感謝祭翌日の大セールは、今や日本のe-コマース業界の一大イベントとなっている。しかし、それがもたらす副作用は深刻だ。

この波状的な大型セールへの対抗策として、ヨーロッパでは「グリーンフライデー」という新しいコンセプトが生まれつつある。これは、消費の過剰性を抑制し、環境に配慮した持続可能なセール文化を目指す取り組みだ。無限に拡大する消費需要と、それを支える物流業者の疲弊のバランスをどう取るのか。この問題は、日本の流通業界が真摯に考えるべき課題として浮上してきている。

年末への懸念と業界の課題

現在、配送遅延は「一時的」とされているが、これからクリスマスを経て、さらにお正月に向けて荷物量は増加し続ける。ヤマト運輸も佐川急便も「年末に向けて荷物量の増加傾向が続くことが予想される」と警告している。交通渋滞も避けられない中、物流業界の対応能力は限界に近づきつつある状況だ。

配送業者の従業員の労働環境も厳しくなっている。短納期での大量配送を求める消費者と、それを実現しようとする企業努力との間で、最も負担を被っているのは現場の配送スタッフたちだ。このような構造的な問題に対して、業界全体、そして消費者側の意識改革が急務となっている。

年末年始の買い物を予定している人は、この現状を理解した上で、余裕を持った利用を心がけることが大切である。配送業者への負荷軽減は、結果的に自分たちの荷物が確実に届くことにもつながるのだ。

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