イランがFIFAワールドカップ2026の抽選会をボイコット、米国のビザ発給制限に抗議
政治的対立がスポーツの舞台に波紋を広げる
イラン・サッカー連盟(FFIRI)は2025年11月28日、米国が代表団にビザを発給しなかったため、12月5日に米国の首都ワシントンで開催される2026年FIFAワールドカップ北中米大会の組み合わせ抽選会をボイコットすることを明らかにしました。この決定は、スポーツと政治の対立という複雑な問題を世界に投げかけることになりました。
ビザ発給拒否の背景
イラン・サッカー連盟によると、メフディ・タージ連盟会長を含む複数の関係者がワールドカップ組み合わせ抽選会への参加のためにビザを申請していましたが、米国務省はこれらのビザ発給を厳しく制限しました。連盟の広報担当者は、この措置について「ビザが発給されない問題はスポーツの領域を超えている」としてFIFA(国際サッカー連盟)に伝えたと述べています。
タージ会長自身もビザの発給を拒否されました。一方で、アミール・ガレノエイ監督を含む代表団の4人にはビザが発給されたということです。しかし、主要な幹部がビザを取得できない状況では、連盟として正式な参加が難しいと判断したと考えられます。
米国とイランの長年の対立
米国とイランの関係は40年以上にわたって対立関係が続いています。特に最近の対立は、核問題を中心とした深刻なものとなっています。2025年4月から両国は核問題について高官協議を行っていましたが、イランのウラン濃縮活動を巡って対立が深まりました。
さらに、2025年6月には状況が急速に悪化しました。イスラエルがイランへの爆撃を開始し、12日間の戦争が勃発。この戦闘に米国も一時的に参戦し、イランの核施設を攻撃しました。これにより、両国間の協議は頓挫し、関係はより冷え込んでしまいました。
このような背景の下で、米国が例外を除きイランからの入国を禁止しているという状況が生まれています。連盟の広報は、この制限がスポーツイベントにまで影響を及ぼしていることに強く反発しています。
タージ会長の強い非難
タージ連盟会長は、ビザを発給しない決定は「政治的なもの」だと非難しました。同氏はFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長に対して、「これは純粋に政治的な見解であり、FIFAは米国にこのような行為をやめるよう伝えるべきだ」と申し入れたとされています。
イランの連盟は、今回のビザ発給制限がスポーツと無関係な政治的決定であることを国際サッカー連盟に明確に伝えています。スポーツイベントは本来、国家間の政治的対立を超えた中立的な舞台であるべきという立場を示しています。
イラン国民からの怒りの声
このニュースはイラン国内でも大きな波紋を呼んでいます。イラン国民からは「許せない」「なんてひどいことだ」「世界をめちゃくちゃにぶち壊したな」「抽選会への参加を邪魔するなんてありえない」といった強い不満と怒りの声が上がっています。
サッカーを愛するイラン国民にとって、ワールドカップへの参加は国家的な誇りです。そのイベントの準備段階である抽選会から国の代表団が締め出されるという事態は、政治的対立をスポーツの領域にまで拡大させるものとして受け止められています。
イランのワールドカップにおける実績
イランはサッカーにおいて決して弱い国ではありません。現在のFIFAランキングで20位にランクされており、アジア地域では有力な国の一つです。今回の2026年ワールドカップは、イランにとって通算7回目の出場となり、4大会連続出場という記録も達成することになります。
つまり、イランは世界的に認められた実力を持つサッカー国家であり、ワールドカップの重要なチームの一つです。そのような国の代表団がビザ発給を受けられないという事態は、大会そのものの公正性や中立性に対する疑問も生じさせています。
FIFAの立場と大会への影響
イランの連盟はFIFAに対して、この問題はスポーツと無関係な政治的問題であることを強調しています。FIFAは国際的なスポーツ統治機構として、政治的対立がスポーツイベントに影響を与えることを防ぐ責任があります。
しかし、ワールドカップは米国、カナダ、メキシコの共催で開催されるため、開催国の入国管理制度の影響を受けるという構造的な問題があります。このジレンマは、大規模なスポーツイベントの開催において、政治と国際関係がどれだけ複雑に絡み合っているかを示しています。
本大会での対応に注視が集まる
抽選会のボイコット問題が大きな話題となっているなか、多くの関係者や国民がワールドカップ本番でのイランへの対応がどのようになるのかに注目しています。抽選会で参加できないという状況が本大会にまで波及するのか、それとも何らかの解決策が見つかるのか、世界が注視しています。
この問題は、単なるビザ発給の技術的な問題ではなく、国際スポーツイベントにおける政治と外交の関係性を問う根本的な課題となっているのです。
スポーツと政治の関係を改めて問う
今回のイランのボイコット決定は、オリンピックやワールドカップなどの国際的なスポーツイベントにおいて、政治的対立がどのように影響するかを改めて浮き彫りにしました。スポーツを愛する多くの人々にとって、政治的な理由でスポーツの舞台から排除されるという事態は、許されるべきではないという想いがあります。
イラン国民の声や連盟の抗議から見えてくるのは、スポーツが持つ普遍的な価値を守りたいという強い意志です。国家間の政治的対立があったとしても、スポーツの舞台では公正で中立的な環境が保障されるべきだという原則が改めて問われています。
2026年のワールドカップが、このような課題にどのように向き合い、解決していくのかが、スポーツの将来にとって重要な転機となる可能性があります。



