マミーマート、過去最高の増収増益を達成 新業態戦略が奏功
食品スーパーのマミーマートを傘下に持つマミーマートホールディングス(さいたま市北区)が11月14日に発表した2025年9月期の通期連結決算は、営業収益が前年同期比20.5%増の1936億8900万円、営業利益が4.8%増の67億4400万円と、ともに過去最高を更新しました。純利益も前年比10.8%増の52億4600万円となり、経常利益は3.5%増の71億9700万円に達しました。この好調な業績は、新業態への転換と既存店の継続的な成長という好循環によってもたらされたものです。
既存店の堅調な成長が基盤
今期の業績を支えた最大の要因は、既存店売上高の9.9%増という堅調な成長です。来店客数は6.5%増、客単価も3.2%増と、顧客数の増加に加えて購買単価も向上しており、マミーマートの経営施策が顧客に支持されていることが伺えます。
営業利益の増加を見る上で注目すべき点は、既存店の成長が想定以上の成果を生み出したことです。新規出店や既存店の改装による設備投資と出店関連費用の増加が発生しているにも関わらず、既存店の強い売上に支えられて増益を実現することができました。さらに、クレジットカード利用比率の上昇(先々期の45%程度から今期は47%程度に上昇)も、売上増加の要因となっています。
新業態への転換戦略が成功
マミーマートホールディングスの成長を大きく牽引しているのが、新業態への転換戦略です。従来のマミーマート店舗を、低価格を重視した「生鮮市場TOP!」と、品質追求を重視した「マミープラス」の2つの新業態へと転換させることで、より多様な顧客ニーズに対応する取り組みを推し進めています。
9月末時点での店舗構成は、マミーマートが35店舗、生鮮市場TOP!が34店舗、マミープラスが15店舗となっており、前期比で見るとマミーマートが8店舗減少した一方で、生鮮市場TOP!が7店舗増、マミープラスが7店舗増加しています。つまり、新業態への転換により、既存店舗を活かしながらカテゴリー分けを進めることで、より効率的な事業展開を実現しているのです。
新業態の展開は、単なる店舗数の増減ではなく、市場のニーズに対応した商品ポートフォリオの構築を意味しています。低価格化と品質追求という相反する要素を異なる業態で実現することで、より広い顧客層にアプローチし、購買促進につながっています。
セグメント別の業績動向
セグメント別に見ると、「スーパーマーケット事業」の売上高は1931億9600万円(20.5%増)、セグメント利益は66億6500万円(4.3%増)となりました。一方、「その他の事業(温浴事業・葬祭事業)」は、売上高が4億9300万円(16.0%増)、セグメント利益が7900万円(87.3%増)と、2桁の増収増益を達成しており、非食品事業の成長も見逃せません。
スーパーマーケット事業が全体に占める比率が極めて高いため、この部門の好調さが全社業績を大きく左右することは明らかですが、その他の事業セグメントの利益が大幅に増加していることは、多角化経営の成果を示しています。
営業利益増加の構造
営業利益の増加メカニズムを詳しく見ると、新規出店・業態転換を伴う改装により営業総利益が増加し、出店関連費用や賃金改定といった販売費及び一般管理費の増加分を吸収するという構造になっています。
売上高は前期比120.5%と大きく伸びていますが、営業総利益率は1.4ポイント低下しており、営業総利益額は前期比114%となっています。一方で、販売費及び一般管理費は前期比115.7%と増加していますが、既存店の好調さにより、結果として営業利益を増やすことに成功しています。このバランスの取り方は、マミーマートホールディングスの経営陣が、成長投資と利益確保の両立をいかに巧妙に実現しているかを示しています。
今期の見通しと中期戦略
マミーマートホールディングスは、2026年9月期の業績見通しについて、営業収益を2250億円(16.2%増)と予想しています。これは、当初の中期経営計画では2150億円でしたが、売上が好調に推移しているため、100億円を上乗せしたものです。営業利益は70億円(3.8%増)、経常利益は76億円(5.6%増)、親会社に帰属する当期利益は53億円(1.0%増)を見込んでいます。
特に注目すべきは、経常利益が4期連続で過去最高益を更新する見通しとなっていることです。この継続的な成長の背景には、新業態への転換を中心とした構造改革と、既存店の定着による安定した事業基盤の構築があります。
出店と改装による成長戦略
今期、マミーマートホールディングスは新規出店6店、改装10店を実施しています。既存店の継続的な成長が安定した事業基盤を築き、さらなる成長へ向けた新規出店と改装につながるという好循環を生み出しているのです。
この好循環は、単なる数字の上での成功ではなく、顧客の信頼を勝ち取ることで実現されています。低価格化と品質追求という異なるコンセプトの業態を並行して展開することで、多様な消費者ニーズに応え、結果として来店客数と客単価の両方を増加させるという成果につながっています。
今後の展望
マミーマートホールディングスの今期決算は、既存店の好調さと新業態転換戦略の成功を示す、極めて良好な結果となりました。営業収益と営業利益が過去最高を達成し、4期連続で最高益を更新する見通しは、同社が市場で確かな地位を確立していることを示しています。
今後、マミーマートホールディングスがどのように店舗展開を進め、新業態をさらに浸透させていくのか、また既存店の成長をいかに継続させるのかが、投資家や業界関係者の注目を集めています。低価格志向と品質志向の両方の顧客ニーズに応える戦略は、今後の成長を支える重要な経営資産となるでしょう。




