千賀滉大、メッツ残留を希望 トレード拒否権を活用して球団と交渉

ニューヨーク・メッツに所属する日本人投手・千賀滉大(32歳)が、今オフのトレード候補として取り沙汰される中、メッツへの残留を希望していることが明らかになりました。契約に残された2年分の条件と、複数球団へのトレード拒否権を背景に、千賀は現在の球団での復活を目指す意向を示しているとのことです。

シーズン途中のマイナー降格から一転

2025年シーズンの千賀滉大は、波乱万丈のシーズンとなりました。メジャー3年目となる今季、千賀は6月までは防御率1点台という好成績をマークしていました。しかし6月12日のナショナルズ戦で足を負傷し、1ヶ月間の離脱を余儀なくされました。

復帰後の千賀の成績は思わしくなく、7月21日からの8先発では防御率6.56まで悪化。8月31日の先発後、千賀はマイナー3Aシラキュースへの降格を受け入れることになりました。最終的に今シーズンの成績は22試合登板で7勝6敗、防御率3.02に終わっています。

メッツの先発投手陣の要となるはずが…

メッツがポストシーズン進出を逃した最大の要因は、先発投手陣の不調にありました。ニューヨークのテレビ局SNYは「メッツの2025年のローテーションに最も影響を与えたのはコウダイ・センガの登板内容だった」と指摘しており、千賀の成績不振がチーム全体に大きな悪影響を与えたことは間違いありません。

メッツが2023年オフに千賀と契約した際には、5年7500万ドル(約114億5000万円)という大型契約を結びました。メジャー1年目の2023年には、オールスター選出と新人王投票2位という素晴らしい成績を残し、この契約は「お買い得」と評価されていました。しかし2024年は肩、ふくらはぎ、太ももの怪我で悩まされ、わずか1試合の登板に終わってしまいます。

トレード放出の可能性も浮上

このような状況を背景に、SNYを含む米メディアの間では、メッツが千賀をトレード放出すべきではないかという議論が高まっています。理由としては、千賀が「メカニクスと球種の組み合わせに苦戦しているだけでなく、これまで怪我も多い」という点が挙げられています。

実際、過去2シーズンで千賀が投げたイニング数は118イニング2/3に過ぎず、メッツとしても先発ローテーション投手としての信頼を完全には取り戻していない状況です。メッツの先発陣には、ノーラン・マクリーン、ブランドン・スプロート、ジョナ・トン、ショーン・マナイア、クレイ・ホームズ、デービッド・ピーターソンなど、すでに顔ぶれが揃っており、今オフはさらなる先発投手の補強に動く可能性もあります。

千賀の強みと残留を支持する理由

一方で、千賀の残留を支持する意見も存在します。その理由として、メジャー1年目の2023年と今シーズンも離脱までは、先発ローテーション投手に相応しい投球を続けていたという点が挙げられます。さらに「伸びしろがある上に今後2シーズンは年俸も比較的お得」という経済的な観点からも、残留させるべき根拠があるとされています。

千賀が武器としているのが、独特の変化球「ゴーストフォーク」です。このフォークボールは高い評価を受けており、2025年シーズンでもこの球種で多くの三振を奪っていました。防御率3.02という数字は、シーズン全体を通じては決して悪くない成績です。

交渉の重要な材料となる契約条件

千賀がトレード交渉で有利な立場にあるのは、契約に残された条件によります。契約はまだ2年分が残っており、その総額は3000万ドル。さらに重要なのが、10球団へのトレード拒否権を持っているという点です。この条件により、千賀は希望しない球団へのトレードを拒否することができます。

これは千賀にとって大きな武器となります。不本意なトレードを避けることができるため、メッツとの交渉を有利に進める可能性があります。また、残されている2年の契約期間も、年俸が比較的安いという点が、トレード交渉の際に球団が提示する理由になり得ます。

投手不足の球団が候補に浮上

複数の米メディアは「投手不足の球団が必ずいる」と指摘しており、千賀の放出は今オフが最適なタイミングだと分析しています。メジャーリーグでは先発投手の需要が常に高く、千賀の防御率と奪三振数は、他球団にとって十分な魅力があると考えられます。

ただし、懸念材料は怪我の多さです。ここ2年で肩やふくらはぎの怪我に見舞われており、これが交渉の際にどう評価されるかが重要になります。しかし、メディアは「交渉では防御率を武器に」すべきだと指摘しており、数字の上での成績をしっかり主張することが重要だとしています。

千賀の復活への希望

シーズン終了後、千賀自身は「濃いオフを過ごせたらなと思っている」とコメントしており、来季への復活を目指す意欲を示しています。メッツにできるのは、千賀と協力して希望を持ち続け、復活を待つことだけという状況です。

メッツのフランシスコ・リンドア球団社長代理は「その才能を引き出すために、私たちはあらゆる手を尽くすつもりだ」とコメントしており、球団としても千賀の復活を望んでいる姿勢が伝わります。一方で「来季30試合に先発するという目標を彼に課すことができるだろうか。それは愚かな行為だと思う」と、現実的な状況判断も示しています。

今オフの動向に注目

結局のところ、メッツは千賀をアテにすることができないというのが現実です。ただし、千賀が戦力になるという期待が完全にないわけではありません。メジャー1年目の活躍と、その後の怪我からの復帰可能性を考えると、完全に見切りをつけることは難しい状況となっています。

今オフの交渉がどのように進むかについては、複数の球団が千賀の動向を注視しているとされています。トレード拒否権を持つ千賀がメッツ残留を強く希望するのか、それとも新天地での挑戦を求めるのか、その判断が今オフの大きな注目ポイントとなるでしょう。契約条件と本人の意思が一致することになれば、千賀はメッツで復活の機会を得られることになります。

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