吉村紗也香とフォルティウス、ミラノ冬季五輪への最終決戦へ
33年の人生をかけた初五輪への挑戦
北海道出身のカーリング選手・吉村紗也香(33)が率いるチーム「フォルティウス」が、ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックの出場をかけた世界最終予選に向けて、最後の調整を進めています。2025年12月5日からカナダ・ケロウナで開催される予選に出場する日本女子代表が、8か国中わずか2枠のオリンピック出場権を勝ち取ろうとしています。
吉村選手は、チームの司令塔を務めるスキップとして、初のオリンピック出場を目指しています。2014年の大学卒業と同時にフォルティウスに加入し、2018年からスキップを担当してきた彼女にとって、今回の最終予選は人生をかけた勝負の舞台となります。北海道北見市で1992年に生まれた吉村選手が、33年の歩みの中で最も重要な時を迎えようとしているのです。
7大会連続出場の伝統を守る重責
日本女子カーリングが背負うのは、並大抵ではない重圧です。長野オリンピックから現在まで7大会連続で五輪の舞台に立ち続けてきた日本女子カーリング。2022年北京五輪では銀メダルを獲得するなど、世界的なレベルを維持し続けてきました。
しかし今、フォルティウスはその伝統を継承する最後の関門に直面しています。吉村選手は「長野からつなげてきたオリンピックを、私たちでつなぎたい」と語り、先輩たちが積み重ねた歴史への責任感をにじませています。このプレッシャーは並大抵のものではありませんが、チームの結束がそれを支えています。
スポンサー契約終了からの苦難の道のり
フォルティウスの道のりは決して順風満帆ではありませんでした。2021年にメインスポンサーとの契約が終了し、チームは存続の危機に直面しました。新たなスポンサーを獲得するためには、勝ち続けることが絶対条件だったのです。
吉村選手は「応援してもらえるチームになるには、常に結果を出さなければいけませんでした。一年一年が勝負で、負けたら先がないという気持ちで戦っていました」と、その時代の厳しさを振り返ります。経済的な不安定さの中で、チームは粘り強さを磨いていきました。逆境を共に乗り越えたことで、5名のプレーヤーの絆はより深まっていったのです。
ユニークなチーム体制と結束力
興味深いことに、フォルティウスには公式なキャプテンが存在しません。吉村選手はスキップとしての役割を果たしながらも、各メンバーがそれぞれリーダーシップを発揮する形でチームを運営しているのです。年齢差がある少人数チームであるにもかかわらず、敬語をまったく使わずタメ口でコミュニケーションを取るというユニークな体制が、チームの一体感を生み出しています。
メンバーは吉村紗也香(スキップ)、近江谷杏菜、小野寺佳歩、小林未奈、小谷優奈の5名。年齢や経験が異なる彼女たちが、「絶対オリンピックに出たい」という共通の強い思いでひとつになっています。吉村選手は「今のチームが結束できているのは、絶対オリンピックに出たいという個々の強い思いがあってこそ」と語っています。
国際経験とアイスへの対応力
世界で勝つためには、経験が不可欠です。フォルティウスは2025年秋も1~2か月の長期遠征をカナダで実施し、数多くの国際試合に出場しています。吉村選手は「会場によってアイス(氷面)の特徴も違い、アイスを読む力や対応力、どう戦っていくかが勝負の分かれ目になる」と指摘しています。
世界のトップチームはすべて長期遠征を行い、様々なコンディションでのプレー経験を積みます。フォルティウスもこの戦略を実践することで、本番の大舞台に向けた準備を整えてきたのです。
スキップ吉村の最後のショット
11月18日、札幌市内での公開練習で、吉村選手は自分の役割について語っています。「私の最後のショットは、勝負を決める1投、2投になってくる。しっかりと最後の1、2投を決めきれる、その自信をつけてカナダに行きたい」と述べました。
スキップとしての吉村選手の最後のショットは、試合の勝敗を大きく左右する重要な局面で行われます。冷静さと正確性が求められるカーリングにおいて、この瞬間に全チームの思いが集約されるのです。
12月5日からの最終予選
いよいよ迫った世界最終予選は、2025年12月5日からカナダ・ケロウナで開催されます。この会場で8か国が争う中、日本は上位2か国に入ることでミラノ冬季五輪の出場権を獲得できます。わずか2枠という厳しい現実の中で、吉村選手とフォルティウスは「必ずオリンピアンになって帰ってくる」という強い決意を胸に、戦いに臨みます。
吉村選手は「これまで積み上げてきたものを、最終予選でしっかりと自分自身、そしてチーム全体で力を出し切ってオリンピックの枠をしっかり獲得できるように、一投一投、一戦一戦、全力で戦ってきます」と意気込みを語っています。
33年の集大成、そして新たな歴史へ
吉村紗也香は、小学校4年生の時にカーリングを始めました。その時から現在まで、彼女が積み重ねてきた経験と技術がすべてこの最終予選に結実しようとしています。2018年にスキップとなってから、チームを率いてきた7年間。そして2021年のスポンサー危機から、チームが一丸となって立ち直ってきた4年間。
フォルティウスの挑戦は、単なる1チームのオリンピック出場枠獲得ではなく、長野から続く日本女子カーリングの伝統を守る戦いでもあります。吉村選手たちが12月5日のケロウナで手にするのは、自分たちの夢であると同時に、多くの先輩たちから引き継いだ五輪への切符なのです。
「そこだけを重くは感じてなくて、自分たちができることをやれば勝てると信じている」という吉村選手の言葉には、圧倒的な自信と、チームへの信頼が込められています。最後のショットを決め切る覚悟を持った司令塔と、逆境を乗り越えた5人の選手たちが、今、ミラノへの最後の坂を登ろうとしています。
世界への挑戦は続く
カーリングはどんな場面でも冷静さを求められる競技です。しかし、吉村選手たちのチームは「チーム全員、熱い気持ちを胸に秘めて戦っています」と吉村選手は語ります。アジアのレベルも年々上がっている中での国際戦。フォルティウスが培った粘り強さと結束力が、世界の強豪チームにどう立ち向かうのか。12月5日の最終予選は、日本のカーリング史において重要な一ページになることは確実です。
吉村紗也香とフォルティウスの最終決戦が、もうすぐ始まります。



