アリババがAI搭載スマートグラス「Quark AI Glasses」を中国で発売開始
自社AI「Qwen」を搭載した新型ウェアラブルデバイス
中国の大手テクノロジー企業であるアリババが、2025年11月27日に自社のAIモデル「Qwen」を搭載したAI搭載スマートグラス「Quark AI Glasses」を発表しました。このデバイスは、アリババとしては初となるAIスマートグラスシリーズで、中国市場での販売が開始されています。
Quark AI Glassesは、音声と視覚を融合させることで、リアルタイムでのAIインタラクションを可能にする革新的なウェアラブルデバイスです。アリババのAIモデルであるQwenと、AIアプリケーション「Qwen App」を搭載しており、「Hello Qwen（ハロー、クウェン）」という音声コマンドやタッチ操作で、いつでもどこからでもAIアシスタントにアクセスすることができます。
フラグシップ「S1」と廉価版「G1」の2つのシリーズ
Quark AI Glassesには、フラグシップモデルの「S1」と、廉価版の「G1」の2つのシリーズがあります。さらに、各シリーズには複数のバリエーションがあり、S1シリーズは3つのモデル、G1シリーズも3つのモデルが用意されており、合計で6つのモデルが展開されています。
上位モデルのS1には、一日中快適に装着できる洗練されたデザイン、明るくクリアなデュアルマイクロOLEDディスプレイ、高性能デュアルチップ、そして骨伝導技術を用いた高度な音声認識機能が搭載されています。業界初の交換可能なデュアルバッテリーシステムを採用しており、最大24時間のバッテリー駆動が可能なことが特徴です。S1の販売価格は約3799元（約8万4000円）からとなっています。
一方、廉価版のG1は、より手頃な価格で提供されており、約1899元（約4万2000円）からの価格設定となっています。これにより、より多くの消費者がこのAI技術にアクセスできるようになります。
豊富な実用機能とアリババエコシステムとの深い連携
Quark AI Glassesは、複数の実用的な機能を備えています。AIを活用することで、外出先での翻訳、会議のメモ取り、スマートリマインダー、ライブテレプロンプター、近隣スポットの検索、スケジュール管理といった機能が利用可能です。
さらに重要な点として、このデバイスはアリババのエコシステムと深く統合されています。具体的には、決済サービスの「Alipay」、地図アプリケーションの「Amap」、ECプラットフォームの「Taobao」、旅行サービスの「Fliggy」といったアリババ傘下のサービスと統合されています。さらに、中国を代表する音楽ストリーミングサービスである「QQ Music」や「NetEase Cloud Music」とも連携しており、ユーザーはこれらのサービスを直接グラスから操作することができます。
例えば、商品撮影によってTaobao上での価格表示が可能になったり、QQ Musicの楽曲を直接再生したりできるなど、日常生活の様々なシーンでこれらの統合機能が活躍します。
高性能なカメラシステムで優れた映像品質を実現
S1モデルに関しては、カメラ機能も強化されています。0.6秒のインスタントフォトキャプチャ、滑らかな3K動画、AI強化の4K出力、そして卓越した低照度性能により、写真撮影でも動画撮影でも驚異的なクオリティの映像描写が可能です。さらに、独自の「Super Rawテクノロジー」により、夜間撮影でも鮮明で鮮やかな映像を撮影することができます。
アリババ経営陣が語る製品への期待
アリババのウー・ジア副社長は、Quark AI Glassesについて次のようにコメントしています：
「AIグラスはAIアシスタントに求められるあらゆる要素を備えた、他に類をみない強力なウェアラブルデバイスです」「将来を見据えると、AIグラスはAI時代においてコンピューターとのインタラクションの革新的な方法への扉を開くものです」と述べています。
また、「Quark AI GlassesはQwenと緊密に統合されており、ユーザーはいつでもどこでもQwenにアクセスでき、AIが現実世界とシームレスに接続し、かつてない規模で価値を提供できるようになります」とも語っており、このデバイスへの強い期待が伝わってきます。
中国市場での販売開始と今後の国際展開への期待
Quark AI Glassesは、アリババの中国のECプラットフォームで販売されており、2025年11月27日に販売が開始されました。
現在のところ、アリババがこれらのグラスを中国国外で発売する予定があるかは不明確ですが、興味深いことに両モデルとも中国のECプラットフォームで販売されています。実は、このデバイスは今年7月に上海で開催されたWAIC（World Artificial Intelligence Conference）で初公開された経緯があり、今後の国際展開も期待できそうです。
今後、このAIスマートグラスが世界市場にどのように展開されていくのか、そして各国のユーザーにどのような影響を与えるのかは、AI技術とウェアラブルデバイスの発展を考える上で注目すべきポイントとなるでしょう。
AI時代における新しいインタラクション方法の実現
Quark AI Glassesの登場は、単なる新製品の発売ではなく、AI時代におけるコンピューターとのインタラクション方法の大きな転換を象徴しています。スマートフォンの時代から、より自然で直感的なAIとの対話が可能になるウェアラブルデバイスの時代へと移行していく過程を示す重要な事例となるでしょう。
アリババの自社AI「Qwen」と深く統合されたこのスマートグラスは、ユーザーの日常生活をより便利で効率的なものにするために設計されており、AI技術の実用化における新しい方向性を示しています。
