台湾との「断交ドミノ」が逆回転か、ホンジュラス大統領選が転機に

2025年11月30日、中米ホンジュラスで行われた大統領選が、台湾との外交関係の行方を大きく左右しようとしています。この選挙は、2023年3月に台湾と断交して中国と国交を樹立したシオマラ・カストロ現大統領の政党に対する評価が焦点となっており、複数の野党候補が台湾との国交回復を公約に掲げています。

ホンジュラスが台湾と断交してから約2年8ヶ月。当初は中国との経済的な利益を期待していた国民でしたが、その期待は大きく裏切られることになりました。中国との国交樹立によって何が起きたのか、そしてなぜ今、台湾との関係復活が焦点になっているのかを理解することは、国際政治の複雑さを知る上で重要です。

断交までの経緯と背景

2023年3月26日、台湾の外交部はホンジュラスとの外交関係を終了することを発表しました。この決定は、ホンジュラスが中国政府との国交樹立交渉を進めていたことに対する対抗措置でした。ホンジュラスのシオマラ・カストロ大統領は3月14日、自身のツイッターでエドゥアルド・レイナ外相に対し、中国との国交樹立に向けた手続きの開始を指示したと明らかにしていました。

当時のホンジュラス政府は「世界に1つの中国が存在することを認め、中国政府が中国全土を代表する唯一の合法的な政府と認識する」と表明し、中国外交部は3月26日に国交樹立文書にサインしたと発表しました。その直後の6月には、カストロ大統領は訪中し、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」への正式参加を決定しています。

中国との経済関係が期待と異なる現実

水産業が壊滅的な打撃を受ける

しかし、台湾との断交から現在に至るまで、ホンジュラス経済は期待していた繁栄とは程遠い状況に陥っています。最も深刻な影響を受けたのが、国の主要産業であるエビ養殖業です。

台湾は2022年、ホンジュラス産エビの最大輸出先であり、全輸出の約40%を占めていました。しかし断交後、全国養殖漁業協会(ANDAH)によると輸出は67%も減少し、1万4,000人の雇用が失われてしまいました。これはホンジュラスの労働者にとって、極めて深刻な経済危機を意味します。

ホンジュラスの外交部長エドゥアルド・エンリケ・レイナ氏も、中国市場への参入の難しさを認め、3月には台湾と協力して他の市場開拓を模索していると発表せざるを得ませんでした。これは、中国との国交樹立当初の楽観的な見通しが大きく外れたことを示唆しています。

経済的困難が政治の転機に

ホンジュラスの経済的困窮は、国民の間に大きな不満を生み出しました。米国の中南米問題専門家の指摘によると、ホンジュラスは2023年に台湾と断交し中国と国交を樹立したものの、中国の貿易面での約束が果たされず経済が低迷しているとのことです。

加えて、ホンジュラスでは送金収入がGDPの25%以上を占めており、米国が最大の輸出市場です。このため、国民の多くが米国との関係改善を望むようになり、台湾との国交復活はその一歩として認識されるようになってきました。

2025年11月大統領選と台湾国交回復への道

野党候補が台湾との国交復活を掲げる

このような背景のもとで、2025年11月に行われたホンジュラスの大統領選では、複数の野党候補が台湾との国交復活を政策に掲げています。中道派リベラル党のサルバドール・ナスラジャ元副大統領は、4月の討論会で「当選すれば台湾と国交を復活し、中国の搾取と不公正な貿易協定による植民地化を非難する」と明言しています。

米国の専門家は、ホンジュラスが複数の大統領候補を背景に、台湾との国交復活の可能性が高まっていると指摘しており、11月の大統領選が台湾との国交再開の契機になる可能性があるとの見方を示しています。

米国の外交方針との一致

台湾との国交復活が実現すれば、台湾の国交国数は現在の12から13へ増加し、ここ20年で初の外交的同盟国の増加となります。米国政府は、中南米での中国の影響力抑制を外交方針としており、歴代政権が台湾の外交的同盟国維持を支援してきた経緯があります。

この政策的背景があるため、米国との関係改善を目指す野党候補にとって、台湾との国交復活は米国との関係修復の有効な手段となるのです。

予測される選挙結果

汚職スキャンダルや経済不振により、カストロ大統領が属する与党リブレ党の再選は厳しいとみられています。米国の専門家は、大統領選でリベラル党またはナショナル党が勝利すれば、ホンジュラスは台湾と国交を再開する可能性が高いと予測しており、これは2007年にカリブ海のセントルシアが国交を復活させて以来の歴史的事例となるとしています。

国際外交の複雑さを示す事例

「断交ドミノ」の逆転可能性

台湾の蔡英文総統は2023年3月26日、ホンジュラスとの外交関係断絶に対し、「非常に遺憾だ。台湾は中国と意味のない金銭外交の競争はしない」とコメントしていました。しかし2023年当時、台湾の国交国が減少する「断交ドミノ」は続いていると懸念されていました。

今、その状況が逆転しようとしています。ホンジュラスの経済的困窮が、政治的な転換をもたらそうとしているのです。これは、国際政治において経済的な現実と外交政策の関係がいかに密接であるかを示す重要な例となっています。

台湾外交部の対応

台湾の林佳竜外交部長は、ホンジュラスの大統領選の一部候補が国交回復を掲げていることに対し、歓迎の意向を表明しています。また、ホンジュラスで主要産業の一つであるエビ養殖業が断交後に悲惨な状況になっていることを説明し、国交国の中米ベリーズのエビ養殖業に対する支援を例に挙げて、政府として国交を結ぶ国々の繁栄を支援することを示唆しています。

林氏は、現時点で国交の回復や締結について問い合わせてきた国があるものの、まだ成熟した段階には至っていないと言及しており、慎重ながらも前向きな姿勢を見せています。

結論:地域的影響と今後の展望

ホンジュラスの大統領選は、単なる一国の国内政治問題ではなく、東アジアと中米の関係、米国と中国の影響力競争、さらには台湾の外交戦略に大きな影響を与える可能性があります。

経済的な困難が政治的な転換をもたらすこのケースは、国家間の関係において、理想よりも現実が重要であることを教えています。ホンジュラスの国民が経験した水産業の衰退と失業は、政治的な選択を迫る強い力を持つのです。

今後、ホンジュラスの新政権がどのような選択をするのか、そして台湾との国交が本当に復活するのかは、引き続き注視する価値のある国際政治の焦点となるでしょう。

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