懐かしのブルートレインが大井川鉄道によみがえる!地域を救う「再生請負人」の挑戦
往年の名列車が静岡の山あいを走る
経営難と災害に苦しむ大井川鉄道で、かつての栄光を象徴するブルートレインが新たな命を吹き込まれました。11月16日、JR西日本から譲り受けた12系客車が営業運転を開始し、鮮やかなブルーの車体が大井川の渓谷を駆け抜けています。この取り組みは、単なる懐かしさの復活ではなく、ローカル鉄道の未来を切り開く戦略的な挑戦なのです。
2009年に東海道線を走っていた寝台特急「富士・はやぶさ」が引退して以降、県内からは「ブルートレイン」の姿が消えていました。あれから16年、その面影が大井川鉄道に蘇ったのです。同社は国鉄の機関車風に塗装した電気機関車に「富士」のヘッドマークを付け、往年の寝台特急を巧妙に再現しました。昭和を知る世代にとっては懐かしく、若い世代にとっては新しい、そんな独特な魅力を持つ列車となっています。
会社創立100年の節目での大胆な決断
この復活劇の背景には、大井川鉄道が創立100周年を迎える2025年という節目があります。7月にJR西日本から廃車予定だった12系客車を譲り受け、整備を進めてきた同社は、この古い車両を新しいシンボルに変えることで、会社の意志を社会に示そうとしているのです。
鳥塚亮社長は「やる気のない会社が新しい車両導入しません。だから、これは我々がやるんだぞというシンボルなので」と語り、この取り組みの意味の深さを伝えています。単に昔の列車を走らせるのではなく、困難に直面する会社が前に進もうとする姿勢そのものが、乗客に希望を与えるということなのです。
3月の電気機関車登場から11月の客車デビューまで
ブルートレイン復活のプロジェクトは、2025年3月に電気機関車「ED31 4」のブルー塗装完成から始まりました。春の終わりに実現したこの電気機関車は、当初SL急行の最後部で働く「縁の下の力持ち」でしたが、やがて堂々と先頭に立つ「晴れ舞台」へと昇進することになります。
その後、6月から7月にかけて、この電気機関車が牽引する「ブルートレイン急行」(すまた号、かわかぜ号、奥大井号)が土日祝日限定で運転されました。好評を受けて、7月から8月にかけて13日間の追加運転も決定。そして満を持して11月16日、12系客車の営業運転が開始され、ついに往年の名列車の姿が完成したのです。
経営難と災害からの復興への道のり
なぜ大井川鉄道はここまで力を入れてブルートレイン復活に取り組むのでしょうか。その理由は、同社が置かれた現状にあります。コロナ禍以降、赤字が続く大井川鉄道は、3年前の台風被害によってさらに大きなダメージを受けました。現在も川根温泉笹間渡駅と千頭駅の間は運休のままで、設備の老朽化も深刻な状況が続いています。
こうした状況の中で、鳥塚社長は「ローカル鉄道の再生請負人」として知られ、次々とアイデアを形にしてきました。去年12月には、旧型客車とSLによる夜行運転を実施し、今年12月には食堂車のイベントも開催予定です。こうした取り組み一つ一つが、地域の人々と観光客の心をつかみ、経営を支える力となっているのです。
夢を一緒に叶えるという強いメッセージ
「夢はみんなで一緒に叶えていきたい」—これが鳥塚社長からのメッセージです。ブルートレイン復活は、単に昭和の懐かしさを蘇らせるものではなく、地域全体で困難を乗り越え、未来を創造するという共通の目標を象徴しています。
大井川鉄道は、まず下泉駅までの2年以内の部分復旧を目指し、全線開通は2028年度を目指しています。その過程で、ブルートレインはただの観光列車ではなく、地域の復興とチャレンジの象徴として走り続けることになるのです。懐かしいブルーの客車は、過去への郷愁と未来への希望の両方を乗せて、大井川の渓谷を駆け抜けているのです。
乗客たちが求める「ブルートレインの残像」
運行初日の11月16日には、多くの鉄道ファンが駆け付けました。人々が求めていたのは、単なる乗車体験ではなく、高度経済成長期を象徴するブルートレインという存在そのもの、そしてそこに込められた日本の歴史と思い出なのです。
この列車に乗ることで、乗客たちは自分たちが経験した時代の良さを再確認し、同時に地域の未来を応援するという形で参加することができます。ブルートレイン復活は、単なる懐古ではなく、過去と現在、そして未来を結ぶ新しい物語なのです。
地域と一緒に進む「再生」の物語
大井川鉄道のブルートレイン復活は、日本全国で課題となっている地方路線の活性化に対する一つの答えを示しています。経営難と自然災害という二重の困難に直面しても、創意工夫とチャレンジの精神で乗り越えようとする姿勢。そして、地域の人々や観光客と共に夢を叶えようという想い。こうした取り組みが、ローカル鉄道の未来を切り開く可能性を示唆しているのです。
昭和の名列車ブルートレインが大井川の山あいを走る姿は、日本が失いかけていた「もう一度チャレンジしよう」という前向きなエネルギーを呼び戻すものとなるでしょう。今月20日からは、ブルートレイン塗装の12系客車が土日祝日中心に運転される予定です。懐かしい青い客車に乗ることで、あなたも大井川鉄道の復興の物語の一部になることができるのです。



