インフルエンザが異例の大流行中 新変異株「サブクレードK」が急速に拡大

2025年のインフルエンザシーズンは、かつてない規模での流行が進行しています。新しい変異株「サブクレードK」の出現により、感染者数が前年同時期の22倍に達するなど、医療現場は対応に追われています。特に懸念されるのは、高齢者を中心とした重症化のリスクと、子どもたちの間での急速な拡大です。

記録的な速度で広がるインフルエンザ感染

11月時点での統計によると、国内のインフルエンザ感染患者は既に15万人に達しており、感染者数が前年同時期の22倍となっていることが報告されています。さらに感染者数は1.4倍の勢いで増加を続けており、学級閉鎖などの措置が8,817件に上っています。

通常、インフルエンザのシーズンは年末にピークを迎えることが多いのですが、2025年は1カ月以上早いペースで推移しているのが特徴です。この異例の早期流行は、新しい変異株の登場と密接な関係があります。

サブクレードKとは何か

サブクレードKは、H3N2型インフルエンザウイルスから変異した新しい株です。専門的には「J.2.4.1」という系統に属しており、南半球のオーストラリアで出現した後、イギリスなどで急速に広がっています。日本で流行しているインフルエンザウイルスの8割がH3型で、その中でサブクレードKが急速に増加していることが確認されています。

東京大学医科学研究所の河岡研究室による解析では、医療機関から提供されたA型H3N2の41検体中、40例からサブクレードKが検出されており、この変異株がいかに広がっているかを示しています。

なぜサブクレードKはこんなに広がりやすいのか

サブクレードKが従来のウイルスよりも急速に拡大している理由は、複数の要因が組み合わさっています。

最も重要な特徴は、ウイルスの表面にある「ヘマグルチニン(HA)」というタンパク質に多くの変異が起きていることです。特に注目されるのは、144番目のアミノ酸が変化した「S144N変異」で、これによりウイルスの表面に新たな「糖の鎖」(グライカン・シールド)がくっつくようになったことです。この「糖鎖の盾」により、ウイルスはこれまでの免疫やワクチンで獲得した抗体を一部すり抜けやすくなっています。

さらに、サブクレードKは通常のシーズンより高い「広がりやすさ」の指標を持っています。一人の患者から次の複数の人に感染が広がる平均値が上昇することで、同じ期間でも患者数の増え方が急カーブになり、ピーク時の医療への負荷が跳ね上がります。

流行開始の早さが引き起こす問題

今シーズンの懸念点として、通常よりも1カ月以上早くシーズンが立ち上がることがあります。この早期流行により、まだワクチン接種を受けていない人が多いタイミングでウイルスが広がりやすくなる状況が生まれています。

イギリスではすでに、子どもや若い世代を中心に先に流行が起こり、その後時間差で高齢者に広がっていくパターンが見られています。日本でも同様の傾向が懸念されており、特に高齢者への感染が急速に進む可能性があります。

高齢者が注意すべき「インフル脳症」

インフルエンザが脳に炎症を起こす「インフル脳症」は、特に高齢者にとって深刻な合併症です。今回の大流行の中で、高齢者は特に警戒が必要だと専門家が指摘しています。

インフル脳症は、高熱に伴う意識障害や痙攣などの症状を引き起こし、重症化すると後遺症が残ったり、命に関わることもあります。高齢者は基礎疾患を持つことが多く、インフルエンザの重症化リスクが高いため、予防とワクチン接種がより一層重要になります。

ワクチン接種は重症化予防に効果あり

サブクレードKに対する懸念が広がっていますが、朗報もあります。2025年11月時点で使われているインフルエンザワクチンは、サブクレードKによる重症化や入院をある程度防げていると報告されています。

ワクチンが変異株の感染を完全に防ぐことはできないかもしれませんが、重症化を予防する効果は十分に期待できます。英国の大手紙ガーディアンの報道によれば、今年のインフルエンザ流行は「10年に1度の規模になる可能性」があると指摘されています。こうした大流行を前に、ワクチン接種の重要性はさらに高まっています。

優先的なワクチン接種対象者

特にインフルエンザの重症化リスクが高い以下の方々には、優先的なワクチン接種が推奨されています。

  • 高齢者:免疫機能の低下により、重症化のリスクが高い
  • 持病のある方:糖尿病、心臓病などの基礎疾患がある場合、合併症のリスクが増加
  • 妊婦さん:妊娠中は免疫機能が変化し、インフルエンザが重症化しやすい
  • 小さなお子さん:免疫システムが発達途上であり、重症化のリスクが相対的に高い

これらの方々は、シーズン前のワクチン接種を検討することで、重症化や入院のリスクを大幅に下げることができます。

医療現場への影響と今後の見通し

インフルエンザ感染の急増は、医療現場に大きな負担をかけています。患者数の増え方が急カーブになることで、救急や入院ベッドが一時的にパンクしやすくなるリスクがあります。学級閉鎖が8,817件に上っている状況は、教育現場にも大きな影響を与えています。

東京都内では、インフルエンザ定点医療機関からの11月3日から11月9日の患者報告数が警報基準を超えており、さらなる拡大が見込まれています。

今からできる予防対策

個人レベルでできるインフルエンザ予防対策も重要です。手洗い、うがい、マスク着用などの基本的な感染対策に加えて、十分な睡眠と栄養摂取による免疫力の維持が必要です。症状が出た場合は、早期の医療機関への受診が重症化を防ぐために重要です。

サブクレードKという新しい変異株の登場により、今シーズンのインフルエンザ対策は例年以上に注意深いアプローチが求められています。ワクチン接種、早期の医療受診、そして日々の予防対策を組み合わせることで、この異例の大流行を乗り越えることができるのです。

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