日本一の高級住宅街「六麓荘」が激変 中国人富裕層の”爆買い”でチャイナタウン化の懸念
兵庫県芦屋市にある日本一の高級住宅街として知られる「六麓荘」で、いま異変が起きている。ここ数年の間に、中国人富裕層による不動産の買い占めが加速し、地域の景観や住民構成に大きな変化をもたらしているのだ。コロナ禍以降、急増した外国人投資家の動きは、単なる投資活動にとどまらず、ご近所トラブルまで引き起こしている。日本を代表する高級住宅地で、いったい何が起きているのか。
中国人富裕層が次々と買い占める理由
六麓荘は、固定資産税が600万円を超えるような超高級物件が立ち並ぶ、日本の最高級住宅街である。従来、この地域の住民は、パチンコホールのオーナーや医療・美容整形業界の経営者など、日本国内の成功者たちが大半を占めていた。しかし、ここ最近の状況は大きく変わってきた。
中国人富裕層が六麓荘に殺到する背景には、いくつかの理由がある。まず、中国国内の政治経済情勢の不安定性がある。中国では、土地やマンションをいくら購入しても、所有権は国家に帰属し、購入者には使用権しか与えられない。これに対して、日本の法律では外国人であっても土地を所有することができる。この法的違いが、中国の富裕層にとって日本の不動産が極めて魅力的に映っているのだ。
さらに重要な要素として、相場を大きく上回る価格で物件を購入してくれることが挙げられる。不動産会社の営業担当者の証言によると、「相場とかけ離れた値段で物件を購入してくれるのは、中国人しかいない」という状況が生まれている。六麓荘の土地相場の2倍や3倍の値段で物件を購入することも珍しくないため、日本人の売却希望者にとって、中国人買い手は最高の顧客となっているわけだ。
中国人富裕層の購入目的は、投資というよりも、来日した際の別荘として活用することが主流である。5億円以上の高額な物件でも躊躇なく購入する富裕層の存在が、六麓荘の不動産市場を大きく動かしているのだ。
着実に増える中国系住民と”チャイナタウン化”の懸念
現在、六麓荘には約10軒前後の中国人富裕層が所有する豪邸が存在するとされている。この数字は一見すると少なく思えるかもしれないが、コロナ禍以前にはほぼ存在しなかった現象である。わずか数年の間に、これだけの物件が中国人の手に渡ったという事実の重みは大きい。
より深刻な問題は、一度中国人富裕層が購入した物件は、日本人には戻ってこない可能性が高いということだ。中国人の現有者が物件を手放す際、別の中国人へ高値で転売することが多いため、日本人購入者が物件を取得する機会が失われてしまうのだ。このようなメカニズムが続いた場合、六麓荘が「チャイナタウン化」してしまうのではないかという懸念が、一部の住民から上がり始めているのである。
実際に、「いつの間にか、お隣さんに中国の方が住んでいた」というように、引っ越し後に新たな隣人の国籍に気づくケースも報告されている。六麓荘では従来、日本人富裕層のコミュニティとしての一体性が保たれてきたが、この均衡が崩れかけているのだ。
顕在化するご近所トラブルと文化的摩擦
中国人住民との共存で、実際のトラブルも発生し始めている。2024年に起きた問題の発端は、関西で有名な歯科医から中古の豪邸を購入した中国人が、自宅から行き来できるウッドデッキを増改築したことだった。この際、近隣住民にも町内会にも何の説明もなされず、事後報告となったため、近隣住民との間に軋轢が生じたのである。
興味深い点として、すべての中国人住民がトラブルを起こしているわけではないということだ。米国に住んでいた中国出身者で、トランプ政権の移民政策に嫌気がさして六麓荘に移住した人物は、日本語がほとんど話せないにもかかわらず、六麓荘の住環境をよく理解し、地域住民との良好な関係を築いているケースもある。
一方で、新築で移り住んだ中国人富裕層が、近所の人々を招いてホームパーティを開催するという新しい習慣も広がり始めている。従来は一流シェフを招いて高級フレンチを振る舞うことが慣例だったが、今後は高級中華料理が振る舞われるケースが増える可能性もある。文化的な違いが、地域の風景や習慣にも影響を与え始めているのだ。
日本人富裕層の流出と新しい住宅地の力学
興味深いことに、中国人富裕層が山の上の六麓荘へ登ってくる一方で、日本人富裕層は山を降りている傾向が見られる。加齢に伴って、歩きやすい平坦な土地を求める日本人富裕層は、駅近物件へシフトしているのだ。大阪へのアクセスが良い阪急線やJR線の駅近エリアは人気が高く、土地の坪単価が300万~500万円に達する地域もある。
つまり、六麓荘で起きている現象は、単なる中国人による買い占めではなく、日本人富裕層のニーズ変化と、中国人富裕層の購買力の高さが相互作用した結果なのだ。利便性を重視する日本人が手放した物件を、資金力に恵まれた中国人が次々と購入する。このメカニズムが、六麓荘の人口構成を急速に変えているのである。
六麓荘の将来への懸念と課題
六麓荘の町内会では、「自宅に使用せよ」というルールは設けられていない。別荘や投資目的での購入は、現在のところ規制の対象になっていないのだ。その結果、外国人でも別荘として購入することに何ら法的障害がない。さらに、相場を大きく上回る価格を提示してくれる買い手に対して、売却希望者が反対する理由も見当たらない。
このような構造的な問題が、六麓荘のチャイナタウン化を加速させている。不動産の売り手にとってみれば、「どんな人に売ろうが関係ない。日本人だろうと外国人だろうと、要求を満たした金額で買ってくれるなら誰でもいい」というのが本音なのだ。つまり、カネを優先する一部の売却希望者の存在が、地域全体の将来を左右する事態へと発展しているのである。
今後の六麓荘がどのような地域になるのか、その答えはまだ見えていない。しかし確かなことは、日本を代表する高級住宅街で、国際化と地域の伝統のせめぎ合いが、激しさを増しているということだ。外国人富裕層の活動を完全には規制できない日本の法制度と、加速する国際化の流れの中で、六麓荘は新しい時代への対応を迫られている。
