湯崎英彦知事が16年の任期を終了 — 広島県政の新時代へ

2025年11月28日、広島県の湯崎英彦知事(60歳)が4期16年の任期を終え、正式に退任を迎えました。同日午後には記者会見を開き、長年の県政運営を振り返るとともに、広島県の発展に対する思いを語りました。約600人の県庁職員に見送られながら県庁舎を後にした湯崎知事。その16年間の歩みと、退任にあたっての思いを詳しくお伝えします。

16年間の県政を振り返る

湯崎知事は退任会見の中で、「広島県の底力を引き出すために汗をかいた16年だった」と自身の任期を総括しました。2009年の就任以来、リーマンショックによる世界的な経済危機、政権交代、新型コロナウイルスの蔓延、そして相次ぐ豪雨災害など、前例のない難局に直面してきました。

このような試練の中で、湯崎知事が掲げたキャッチフレーズは「広島の底力を引き出す」。この理念のもと、県政運営に当たってきたのです。

成果として認識される取り組み

4期16年間の成果について、湯崎知事は「結構広島は元気になったのではないかと思う」とコメント。具体的には、以下のような実績が挙げられています:

  • 広島県の認知度向上 — 全国での広島県の存在認識が高まった
  • 県民満足度の上昇 — 調査データ上、県民の満足度が向上した
  • 観光客の増加 — 観光振興により訪問客が増えた

湯崎知事は会見の中で、「いわゆる満足度的な調査があるが、これは高まって、全国に広島県の存在を再認識してもらっているところ」と述べ、県民の生活満足度が改善されたことに手応えを感じていることが伝わりました。

平和行政における舞台裏

広島県といえば、平和行政が重要な施策の一つです。今回の報道では、平和行政の舞台裏についても注目が集まっています。式典での挨拶について、湯崎知事は「毎年プレッシャーでした」と明かしており、重要な式典での挨拶内容をスマートフォンにメモして準備していたとのこと。

この証言からは、広島の平和を発信する知事としての重責と、その言葉一つ一つを大切にしていた姿勢が見えてきます。全国、さらには世界に向けて平和のメッセージを発信する立場ならではの緊張感と真摯な態度が感じられます。

残された課題と課題の構造的な性質

一方で、4期16年の中でやり残した課題があることも率直に認めています。湯崎知事が指摘した課題は以下の通りです:

  • 男性活躍の推進
  • 社会増減の問題 — 若者の転出超過など

特に注目すべきは、湯崎知事が「これらは構造的な問題であるがゆえに、なかなか簡単に県だけの力で解決することは難しい」と述べている点です。つまり、単なる県レベルの施策では対応しきれない、全国的な社会構造に根ざした問題であることを指摘しています。若者の地方離れは広島県に限った問題ではなく、日本全体が直面する課題です。

職員への伝言 — 3つの視点と3つの心がけ

退任に際し、湯崎知事は県庁職員に対して、今後心掛けてほしいことを伝えました。その内容は以下の通りです:

3つの視点:

  • 真の県民視点の徹底
  • 現場主義
  • 成果志向

3つの心がけ:

  • 卓越性の追求
  • スピード感
  • リーダーシップ

これらの言葉には、広島県政の継続と発展への強い思いが込められています。次期知事である横田新知事に向けても、「広島県政発展のためにしっかりと取り組んでもらいたい」とエールを送りました。

次期知事への引き継ぎ

28日午後2時からは、横田新知事が知事室を訪れ、事務の引き継ぎが行われました。新知事は「ありがとうございます。しっかり引き継いでまいりますので、どうぞよろしくお願いします」と、湯崎知事の16年間の経験と蓄積を受け継ぐ決意を示しました。

一方、湯崎知事は「新しい時代が明日から始まります。皆さんも存分にこれからの県政に取り組んで、活躍していい広島県を作っていただきたい」と、県庁職員を激励。16年間の責任を完全に引き継ぎながらも、新体制への期待を表明しました。

就任時からの願い — 「広島に生まれて良かった」

湯崎知事は就任時に「広島に生まれて良かったと思えるようになってほしい」という願いを掲げていたとされています。この言葉は、単なる経済成長や観光客数の増加ではなく、県民の心の満足度や幸福度の向上を重視する姿勢を示しています。16年を経た今、県民満足度の向上が実現されたことは、この初心が一定程度果たされたことを意味しています。

退任後について

今後の身の振り方については、湯崎知事は「白紙」とコメント。ただし、「政治活動は続ける」ことを明言しています。近日のテレビ出演時には「自分の気持ちがまだわからない」とも述べており、今後どのような形で広島県の発展に関わっていくのかについては、まだ本人の中でも思案中の模様です。

新しい広島県へ

約600人の県庁職員に笑顔で見送られながら県庁を後にした湯崎知事。その16年間の足跡は、広島県の観光客増加や認知度向上など、数多くの成果として残されています。同時に、若者の転出超過や公文書偽造問題など、解決すべき課題も次世代に引き継がれることになります。

これからの広島県政は、横田新知事の手で新たな段階を迎えることになります。湯崎知事が16年間かけて培った「底力」を土台としながら、新知事がどのような広島県の未来を築いていくのか。その動向に全国の関心が注がれることになるでしょう。

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