キヤノン、キヤノン電子を完全子会社化へ 1株3650円でTOB実施、親子上場を解消
キヤノンは2025年11月28日、連結子会社であるキヤノン電子に対して公開買付け(TOB)を実施し、100%完全子会社化することを発表しました。買付価格は1株3650円で、買付期間は12月1日から2026年1月19日までとなります。この発表により、キヤノン電子は今後、上場廃止となる見通しが立てられました。
TOBの詳細と実施背景
キヤノンは現在、キヤノン電子株の55%を既に保有しており、今回のTOBを通じて残りの株式を取得することで、完全な支配を確立します。買付価格の1株3650円は、発表当日の終値である2756円に対して約3割のプレミアムが付与されています。
買付予定数の下限は473万100株(所有割合11.58%)で、上限は設定されていません。TOBが成立した場合、キヤノン電子は所定の手続きを経て上場廃止となる見込みです。東京証券取引所は11月28日付で、キヤノン電子を監理銘柄(確認中)に指定しています。
注目すべきは、キヤノン電子がこのTOBに対して賛同の意見を表明し、株主に対してTOBへの応募を推奨していることです。これにより、TOB成立の可能性が高まると考えられます。
親子上場解消による経営効率化
親子上場とは、親会社と子会社が同時に上場している状態を指します。キヤノングループがこれを解消する理由は、経営効率の向上と資本配分の最適化にあります。完全子会社化により、グループ内の意思決定が迅速化され、重複する機能を削減することが可能になります。
キヤノンは、この取引を通じて以下の目標を掲げています:
- キヤノン電子の既存事業における収益性の向上と資本効率の改善
- 資源配分の最適化
- 経営の効率化
- グループ全体の競争力強化
宇宙事業の強化が重要な戦略
今回のTOB実施の背景には、宇宙関連事業の強化があります。キヤノン電子は近年、宇宙分野に注力しており、超小型人工衛星の開発などを進めています。また、宇宙ベンチャーであるスペースワンの株主でもあります。
キヤノンは、対象企業の宇宙関連事業を強化する方向で相乗効果を生み出すことを目指しています。完全子会社化により、キヤノングループ一丸となったM&Aを含む機動的な事業展開が可能になり、宇宙産業のバリューチェーン全体への拡大が期待されています。
キヤノン電子の事業内容と歴史
キヤノン電子は、カメラ用シャッターユニットや絞りユニット、ドキュメントスキャナーなどを手掛ける精密機器メーカーです。同社の創業は1954年で、秩父英工舎として始まり、1964年にキヤノン電子に社名変更されました。1981年に東証二部に上場した歴史を持っています。
近年の業績の中では、宇宙関連分野への投資が注目を集めており、超小型人工衛星の開発プロジェクトに取り組んでいます。キヤノンが所有する一眼カメラをそのまま搭載した人工衛星を開発・打ち上げるなど、ユニークな事業展開も特徴です。
財務的インパクト
今回のTOB実施に必要な資金は、株式会社みずほ銀行による融資により調達される予定です。親子上場の解消により、キヤノングループは財務面での効率化も実現できるようになります。
また、キヤノン電子は下期配当を見送ることが決定されており、これはTOB実施のための経営判断の一環と考えられます。
市場への影響と今後の展開
このニュースは、日本の大手電機メーカーにおける親子上場解消の動きを示す重要な事例となります。経営効率化と事業の選択と集中を進める動きが、今後さらに加速する可能性があります。
キヤノングループは、完全子会社化後、キヤノン電子の既存事業における収益性向上と、宇宙産業への本格的な進出に向けた経営資源の集中投下を計画しています。宇宙ビジネスが急速に成長する市場環境の中で、グループの競争力を強化する戦略的な意思決定といえるでしょう。
TOB期間は2025年12月1日から2026年1月19日までの約50日間に設定されており、この期間内にキヤノン電子の完全子会社化が完了することが予想されています。



