政府が18.3兆円の補正予算案を閣議決定、物価高対策と成長投資を強化
高市早苗首相率いる政府は、2025年度の補正予算案18兆3034億円を11月28日に閣議決定しました。この補正予算は、物価高騰への対応と経済成長の実現を目指した包括的な対策として位置づけられており、国民生活の安定と日本経済の強化に向けた重要な施策となります。
経済対策の全体像と規模
今回の経済対策は、予備費を含めた総規模で21.3兆円に達する大規模なものです。一般会計からの支出が17.7兆円、減税や特別会計を含めた「国費」ベースでは21.3兆円となっており、前回の経済対策規模と比較すると44%の大幅な増加となっています。
政府全体の公共事業費は約2.6兆円で、前年度をおよそ1割上回る水準となりました。特に防災・減災、国土強靱化対策に関する公共事業費が重点的に配置されています。
経済対策の3つの柱
今回の経済対策は、以下の3つの柱で構成されています:
- 生活の安全保障・物価高への対応(11.7兆円)
- 危機管理投資・成長投資による強い経済の実現(7.2兆円)
- 防衛力と外交力の強化(1.7兆円)
- 予備費(0.7兆円)
物価高対策が最も大きな配分となっており、国民生活への直接的な支援が重視されていることがわかります。
家計を支える主要な支援策
物価高対策には、家計に直結する複数の支援が含まれています。
重点支援地方交付金(2兆円)は、都道府県・市町村を通じて生活者支援を行うもので、食料品物価高騰への支援として、プレミアム商品券やお米券の発行などが予定されています。また、低所得者・高齢者世帯への支援として、LPガス使用世帯への補助が検討されており、子育て世帯支援では小中学校等の学校給食費の負担軽減が実施される見通しです。さらに、水道料金などの生活コスト軽減や、省エネ家電への買い替え支援も盛り込まれています。
電気・ガス料金負担軽減支援事業(0.5兆円)により、冬季の暖房需要に対応したエネルギーコスト削減が図られます。
ガソリン暫定税率の廃止(1.0兆円)に関連して、ガソリンについては12月11日から25.1円/ℓまで補助額が引き上げられ、軽油は11月27日までに17.1円/ℓまで補助額が引き上げられています。これは12月31日に予定されている暫定税率廃止までのつなぎ措置です。
子育て応援手当(0.4兆円)では、子ども1人当たり2万円の給付が実施される予定となっています。
これら施策の合計は5.1兆円であり、マクロの家計可処分所得を1.5%ほど押し上げることが期待されています。「標準世帯」(夫婦と子供2人、有業者は1人のみ)を想定すると、今後1年程度の可処分所得が11.1万円増加する計算となっています。
自治体からは懸念の声も
経済対策が発表される一方で、実施主体となる自治体からは懸念の声も上がっています。特にお米券の配布については、自治体からの反応が芳しくないとの指摘があります。自治体は「新たな負担が発生する」として、事業の実施に際して追加的な準備や管理コストが必要になることを懸念しています。実際の運用にあたって、国と自治体の間で調整が必要な課題が残されています。
投資促進策と安全保障関連
投資促進策(7.2兆円)には、経済安全保障、食料安全保障、エネルギー・資源安全保障、国土強靱化、未来投資の拡大が掲げられています。ただし、現時点では各項目の具体的な予算措置額はまだ明らかにされておらず、今後の詳細な予算編成過程で明確化される予定です。
安全保障関連(1.7兆円)については、防衛力と外交力の強化に向けた投資が行われます。
財政規律を保ちながらの対策
政府は大規模な経済対策を実施する一方で、財政規律への配慮も明示しています。2025年度の新規国債発行額が前年度を下回る見込みであり、当初予算と補正予算を合わせた補正後の国債発行額は、昨年度の補正後42.1兆円を下回る見込みと強調されています。これは、自民党「責任ある積極財政を推進する議員連盟」の提言である補正予算25兆円規模からも規模が抑制されたことを示しており、バランスの取れた財政運営姿勢が伺えます。
予備費の位置づけ
経済対策に計上された0.7兆円の予備費は、自然災害、更なる物価高、クマ被害への対応などが想定されています。もともとの予備費残額が0.3兆円弱であることから、補正予算が成立すれば予備費は年度末までで1兆円程度確保されることになります。これは、当初予算で措置される予備費が毎年1兆円程度であることを踏まえると、かなり規模が大きく、2026年1-3月期中に追加の家計・企業支援策が講じられる可能性や、2026年度補正予算の財源に回される可能性も想定されています。
今後のスケジュール
11月28日に閣議決定された補正予算案は、今後国会での審議を経て、12月中の成立を目指しています。補正予算が成立することで、各支援策の具体的な実施内容や金額、開始時期が各自治体によって決定されることになります。現時点では閣議決定の段階であり、自治体からの懸念事項も含めて、今後の調整が重要となります。
この経済対策により、物価高に苦しむ国民生活の安定と、日本経済全体の成長が同時に実現されることが期待されています。ただし、自治体との協働による円滑な実施と、国民への丁寧な情報提供が成功の鍵となるでしょう。




