ガソリン暫定税率廃止で地方財政に打撃 年内実施が正式決定
11月27日、ガソリンの暫定税率廃止をめぐる動きが大きく進展しました。与野党6党の合意により、ガソリンの暫定税率を2025年12月31日に廃止することが正式に決定され、衆議院では全会一致で可決されました。軽油の暫定税率についても2026年4月1日の廃止が予定されており、今月28日にも法案が成立する見通しです。
半世紀続いた暫定税率がついに廃止へ
ガソリンの暫定税率は、1974年のオイルショック以来、約50年間にわたって継続されてきた税制です。1リットルあたり25.1円の暫定税率が廃止されることで、国民1世帯あたり年間約12,000円の負担軽減が見込まれています。さらに、暫定税率の廃止に伴い消費税も減少するため、消費税分を含めると実質的には約27.6円/リットルの負担軽減となる見通しです。
政府はすでに移行措置として、11月13日からガソリン価格を引き下げるための補助金を段階的に拡充してきました。11月27日時点で補助金は20円/リットル、軽油は17.1円/リットルまで引き上げられており、年内廃止までに段階的に調整が進められています。12月11日には補助金がさらに25.1円/リットルまで拡充される予定で、廃止当日に急激な価格変動は生じない見通しです。
地方自治体への影響が深刻 群馬県の例
ガソリン暫定税率の廃止は、多くの地方自治体の財政に直結する重要な課題となっています。群馬県の山本一太知事は、暫定税率廃止に伴う県税収減について「国の責任で財源確保を」と強く主張しています。群馬県では暫定税率廃止により、年間約94億円の県税収が減少することが見込まれており、地域の行政サービスや公共事業に大きな影響を与えることが懸念されています。
軽油の暫定税率については、都道府県税である軽油引取税に関わるため、地方自治体の財政への影響がより深刻です。補助金は11月27日の時点で暫定税率分と同水準に達していますが、2026年4月1日の正式廃止に向けて、地方団体の財政年度が開始する時期に合わせた調整が行われています。地域によっては、廃止に伴う財源確保策の検討が急務となっており、国と地方の協議がさらに活発化することが予想されます。
ガソリン価格は引き続き下落傾向
補助金の段階的拡充により、全国のガソリン価格は継続して下落しています。福井県では11月27日時点でガソリン価格が1リットルあたり171円まで低下しており、3週連続での下落が続いています。この価格低下は、段階的に拡充されている政府補助金の効果が徐々に市場に反映されているためです。
消費者にとっては家計負担の軽減につながる朗報である一方、石油元売り各社や地方自治体にとっては経営・財政上の課題をもたらしています。特に地方のガソリンスタンドなどの関連事業者や、税収減に直面する地方自治体への支援策が注視されています。
与野党の協議で合意形成 野田代表も関与
ガソリン暫定税率廃止にあたっては、野党側の積極的な取り組みが大きな役割を果たしました。野党は2025年6月から廃止を求める法案を国会に提出し、その後の与野党協議を通じて合意形成を進めてきました。参議院での野党の影響力が強まる中、野田佳彦代表らも「次の内閣」での打ち合わせを通じて、政策実現に向けた動きを進めています。
今回の廃止決定は、与党2党と野党4党の6党合意により実現されたもので、今月25日には衆議院本会議で全会一致で可決されました。28日にも参議院での審議を経て法案が成立する見通しであり、半世紀近く続いた税制が大きく変わろうとしています。
今後の課題と展望
暫定税率廃止によるガソリン代の低下は、一般消費者にとって歓迎される政策です。しかし、地方自治体が失う税収をどのように補填するかが、引き続き大きな課題となります。群馬県の事例に見られるように、年間数十億円規模の税収減に直面する都道府県が多く存在しており、国からの代替財源や交付金の在り方についての協議が進められる必要があります。
また、軽油の暫定税率廃止が2026年4月1日に予定されていることから、トラックやバスなどのディーゼル車事業者にとっても経営環境の変化が見込まれます。段階的な補助金拡充により混乱を最小限に抑える工夫がなされていますが、物流業界への影響についても今後注視が必要です。
今月28日の法案成立を控え、ガソリン暫定税率廃止は歴史的な税制改正として実行されようとしています。消費者の負担軽減と地域経済のバランスを取りながら、円滑な移行を実現できるかが、政府の手腕を試す重要なポイントとなるでしょう。




