2025年インフルエンザ流行が早期化、新変異株「サブクレードK」が日本全域で拡大中
例年より1ヶ月以上早い流行開始、医療機関への負荷が急増
2025年のインフルエンザシーズンは、これまでの流行パターンとは大きく異なる展開を見せています。新たな変異株「サブクレードK」の出現により、日本を含む複数の国・地域でインフルエンザA型(H3N2)の流行が加速しており、専門家からは今後の動向に対する警戒が強まっています。
通常、インフルエンザの流行ピークは年末から年始にかけてですが、今シーズンは例年よりも1ヶ月以上早い時期から流行が始まっている地域があることが報告されています。東京都内では11月3日から11月9日の患者報告数が警報基準を超えており、さらなる拡大が見込まれている状況です。また、兵庫県の淡路島地域でも患者が急増し、警報レベルに達し、相次ぐ学級閉鎖が実施されるなど、全国的な流行の広がりが懸念されています。
サブクレードKの特徴と感染力の強さ
今回の流行の中心となっているサブクレードKは、オーストラリアで記録的な規模の流行を起こしたH3N2系統の「子孫」とされています。南半球で出現したこの変異株は、その後イギリスなどで流行し、現在は日本を含む複数の地域で主流になりつつあります。
サブクレードKが注目される理由は、その感染拡大のスピードと広がりやすさにあります。抗原ドリフトと呼ばれる自然界での変異により、これまでの免疫やワクチンで獲得した抗体を一部すり抜けやすくなっている可能性が指摘されています。その結果、1人の患者から次の何人に感染が広がるかという平均値が通常のシーズンより高く推定されており、同じ期間でも患者数の増え方が急カーブになることが予想されています。
英大手紙ガーディアンの報道によると、「変異による免疫すり抜け」「流行開始の早さ」「ウイルスの広がりやすさ」といった複雑な要因が組み合わさることで、サブクレードKは10年に1度クラスのシーズンを引き起こす可能性があると警告されています。このため、救急や入院ベッドが一時的にパンクしやすくなるリスクが指摘されているのです。
初期症状の多様性に注意が必要
インフルエンザの初期症状を見極めることは、早期治療と感染拡大防止の重要なポイントです。サブクレードKによるインフルエンザの症状は、通常のA型インフルエンザとほぼ似ていますが、その出現パターンに新たな特徴が報告されています。
一般的なインフルエンザの主な症状は以下の通りです:
- 38℃以上の高熱(85.2%の患者に見られる)
- 鼻水(80.3%の患者に見られ、特に頻度が高い)
- 咳(77.0%の患者に見られる)
- 喉の痛み(60.7%の患者に見られる)
- 頭痛(57.4%の患者に見られる)
- 関節痛または筋肉痛
- 全身のだるさ・疲労感
- 吐き気や下痢などの消化器症状(特に小児に見られる傾向)
特に注目すべき点は、「鼻水」の頻度が80.3%と非常に高いことです。一般的にインフルエンザといえば「突然の高熱と強い関節痛」というイメージがありますが、直近の事例では関節痛・体の痛みは9.8%と意外なほど少なく、むしろ鼻水や咳といった一般的な「風邪症状」が強く出る傾向が見られています。
さらに、2025年シーズンは「上気道症状が先行し、発熱が遅れて出るパターン」が南半球で報告されており、症状の出方に幅があることに注意が必要です。つまり、先に鼻水や咳が出て、その後に発熱するというケースもあり、最初は風邪と区別しにくい場合があるのです。
加齢に伴う重症化リスクと胃腸症状
インフルエンザA型は、B型よりも熱が高くなりやすく、炎症反応も強い傾向にあります。血液検査での白血球数やCRP(炎症の程度を示す数値)がB型よりも有意に高い結果となっており、また息苦しさを感じやすく、呼吸器系への負担が大きい特徴が見られています。
特に高齢者は警戒が必要です。A型インフルエンザで入院する患者の背景には、喫煙者や慢性肺疾患(喘息やCOPDなど)を持っている割合が高いという統計が示されており、こうした基礎疾患を持つ人はより注意深い観察が求められます。
一方、インフルエンザに伴う胃腸症状については、子どもがB型に感染した場合に吐き気・嘔吐や下痢といった消化器症状が多く見られる傾向があります。ただし、A型でも消化器症状が出ることはあり、サブクレードKの流行に伴い、予期しない症状が出現する可能性についても念頭に置く必要があります。
医師が警告する異常行動の可能性
インフルエンザ感染に伴う懸念事項として、医療専門家の間では異常行動への注意喚起が強まっています。テレビ番組『スッキリ』などのメディアでも、インフルエンザ感染患者の異常行動に関する警告が繰り返し報道されており、特に高熱が出ている時期での予期しない行動には保護者や周囲の注視が必要とされています。
医学的には、高熱時の脳への影響により、通常では見られないような行動が引き起こされる可能性が指摘されています。この異常行動は一定の確率で発生するもので、全ての感染者に見られるわけではありませんが、高熱が出ている場合は注意深い見守りが重要です。
早期治療の重要性と検査方法
インフルエンザの治療において最も重要なのは迅速な対応です。高熱や全身倦怠感が強い場合、発症からできるだけ早い時期(目安:48時間以内)に抗インフルエンザ薬を開始することで、症状の期間短縮や合併症のリスク低減が期待できます。
病院での検査は、迅速抗原検査やPCR検査により「A型インフルエンザ(H3N2)」として検出されます。サブクレードKかどうかの詳しい区別は、国や自治体の衛生研究所・大学などでの検査が必要になります。
医学的には、38℃以上の発熱が続く、または急に悪寒・関節痛・頭痛が出てきた場合は医師の診察を受けることが推奨されています。特に以下の症状がある場合は緊急対応が必要です:
- 息苦しさ、胸の痛み、強い倦怠感がある場合
- 水分が取れない、尿量が極端に少ないなど、脱水が疑われる場合
- 39℃以上の高熱が続く場合
ワクチン接種の効果と予防対策
2025年11月時点で使われているワクチンについて、専門家はサブクレードKによる重症化や入院をある程度防げていると報告しています。ただし、感染そのものを完全には防げないため、感染予防対策の継続が重要です。
特に流行開始が早い今シーズンは、まだワクチン接種を受けていない人が多いタイミングでウイルスが広がりやすくなるリスクがあります。流行の初期段階での予防接種実施と、基本的な感染対策(手指衛生、マスク着用、飛沫防止対策など)の継続が求められています。
日常生活での注意点
インフルエンザ流行期に上気道症状(特にのど、咳、鼻水、発熱、頭痛)がある場合には、軽視せずにインフルエンザも念頭に置いた行動が求められています。今シーズンは症状パターンの多様性があるため、従来の「高熱が出たらインフルエンザ」という単純な判断では見落とされる可能性があるのです。
家族や職場での感染防止対策として、以下の点が推奨されています:
- 症状が出た場合は、できるだけ早く医療機関を受診する
- 医師の指示に従って適切な隔離期間を設ける
- 高齢者や基礎疾患を持つ人との接触を避ける
- 十分な睡眠と栄養補給で免疫力を維持する
- 室内の湿度管理(50~60%程度)でウイルスの活性化を抑える
今シーズンのインフルエンザは、その流行パターンと症状の多様性において例年以上の注意が必要な状況となっています。サブクレードKという新たな変異株の特性を理解し、自分自身および周囲の健康を守るための適切な対応が求められているのです。


