マンダムのMBO、TOB価格を3割引き上げ 成立の可能性が大きく高まる

化粧品・日用品メーカーのマンダムは2025年11月27日、経営陣による自社買収(MBO)に伴う株式公開買い付け(TOB)の価格を大幅に引き上げることを発表しました。当初の1株1960円から3割増となる1株2520円に変更され、買い付け期限も12月4日から12月18日に延長されました。この決定により、MBOの成立可能性が大きく高まることになりました。

TOB価格引き上げの背景

マンダムは9月、英国投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズと組んでMBOの実施を発表していました。当初のTOB価格は1株1960円に設定されていましたが、その後の株価推移に影響を与えた重要な出来事が発生しました。

「物言う株主」として知られる村上世彰氏の長女である野村絢氏らが、TOB価格が著しく割安であると主張し、マンダム株を大量に取得するなどの対抗姿勢を見せたのです。この対抗勢力の動きにより、マンダム株の市場価格は当初のTOB価格を大きく上回る水準で推移することになりました。

主要株主との応募契約締結

今回の価格引き上げに伴い、マンダムは複数の主要株主との間でTOB応募契約を締結することを発表しました。具体的には以下の投資グループが含まれています。

  • シティインデックスイレブンス(村上ファンド系の投資会社で、マンダム株の20%超を保有)
  • 野村絢氏をはじめとする共同保有者
  • ひびき・パース・アドバイザーズ(シンガポール拠点の資産運用会社で、マンダム株の5%超を保有)

これらの主要株主がTOB応募に合意したことは、MBO成立に向けて極めて重要な進展です。特に20%超の株式を保有するシティインデックスイレブンスの協力は、MBO成立可能性を大幅に高めるものとなりました。

MBO実施体制の整備

このMBOは、欧州の大手プライベートエクイティ(PE)ファンドであるCVCキャピタル・パートナーズの傘下企業、カロンホールディングスが実施主体となっています。カロンホールディングスは9月26日にTOBを開始し、当初は1株1960円での買い付けを予定していました。

しかし市場環境の変化と主要株主の対抗姿勢を受け、より実現可能な買い付け価格への調整が必要になったわけです。3割の価格引き上げは、現在の市場環境におけるマンダムの適正な評価を反映したものとも言えます。

買い付け期間の延長について

TOB期間が当初の12月4日から12月18日に延長されたことも、成立に向けた重要な施策です。この3度目の期間延長は、より多くの株主にTOBに応募する機会を提供し、必要な応募率を達成するための配慮です。十分な期間を設けることで、一般株主の判断や意思決定を円滑にする狙いがあります。

マンダムとMBOの意義

マンダムは日本を代表する化粧品・日用品メーカーとして、長年にわたり事業を展開してきました。MBOによる非上場化は、経営の自由度を高め、中長期的な経営戦略の実行を可能にするものです。CVCキャピタル・パートナーズのような大手PEファンドとのパートナーシップにより、グローバル展開やデジタル化などの成長戦略を加速させることが期待されています。

市場への影響と今後の展開

今回のTOB価格引き上げと主要株主との応募契約締結により、マンダムのMBO成立の公算が大きく高まりました。当初、価格面での対立があった野村絢氏らとの合意に至ったことは、ステークホルダー間での利害調整が進んだことを意味しています。

12月18日の買い付け期限に向けて、TOBは最終段階に入ります。主要株主の協力と応募契約の締結により、必要な応募率の達成と取得価格の実現が見込まれます。マンダムの経営陣とCVCキャピタル・パートナーズにとって、このMBOの成功は、次のステップとなる企業価値向上や新たな成長戦略の実行につながることになるでしょう。

結びに

マンダムのMBO実現に向けた一連の調整は、企業買収における利害関係者との交渉の難しさと、その解決過程を示す好例となっています。3割の価格引き上げという決定は、市場の声に耳を傾け、より実現可能で公正なスキームを構築する必要性を表現しています。今後、マンダムが新たなオーナーシップの下でどのような成長を遂行するのか、市場の関心が集まることになります。

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