ウナギ全種の国際取引規制案がワシントン条約会議で否決 日本政府は12月5日の本会議での再可決を阻止へ

ウズベキスタンで開催されているワシントン条約の締約国会議で、ニホンウナギを含むウナギ全種を国際取引の規制対象にする提案が27日、委員会で否決されました。この決定は日本の食文化と経済に関わる重要な議題として注目を集めています。

委員会での否決、そして12月5日の再投票へ

ワシントン条約の締約国会議は11月24日からウズベキスタンのサマルカンドで12月5日まで開催されています。ヨーロッパ連合(EU)などが提案していた「ウナギ全種を国際取引の規制対象にする案」は、27日の委員会での採決で、賛成が3分の2に届かず否決されました。

ただし、この結果で決定したわけではありません。委員会の結論に対して異議が唱えられた場合、12月5日に開催される全体会合で再度投票が行われることになっています。つまり、今後の展開次第では結果が逆転する可能性も残されているのです。日本政府は、12月5日の本会議での再否決に向けてさらに働きかけを強める方針を示しています。

EUが規制を主張する背景 資源量の減少と密漁問題

EUがウナギ全種の規制を提案している背景には、複数の深刻な問題があります。まず、ニホンウナギを含む各種ウナギの資源量が著しく減少していることが挙げられます。ニホンウナギは古くから日本文化の一部として親しまれてきた食材ですが、近年その個体数は大幅に減少しており、国際的にも懸念が高まっています。

さらに重要な問題として、密漁と密輸の蔓延があります。すでにワシントン条約で規制されているヨーロッパウナギが、別の種類に偽って国際取引されているという実態が報告されています。規制の抜け穴を利用した違法な取引により、本来の資源管理が機能していないという状況が、EUの提案を後押ししているのです。

日本政府の反対姿勢と経済的懸念

これに対して日本政府は、ニホンウナギは現在のところ絶滅の恐れがないと主張し、提案に反対の立場を鮮明にしています。日本政府は他国にも提案への反対を働きかけ、各国の支持を取り付ける外交活動を強化してきました。その結果が、委員会での否決という形で実を結んだわけです。

日本がこれほど強く反対する理由の一つは、経済的な影響の大きさにあります。仮にウナギが国際取引の規制対象になれば、輸出に許可書が必要となり、手続きコストが大幅に増加します。この追加コストは最終的には商品価格に上乗せされ、消費者負担の増加につながる恐れがあります。日本の養鰻業界や飲食業界にとって、規制の採択は経営を脅かす重大な懸念事項となっているのです。

資源管理と国際的な協調が求められる課題

今回の否決は、日本の外交的勝利と見ることもできますが、根本的な問題は解決していません。ウナギ資源の減少傾向や密漁・密輸問題は実在する課題であり、国際的な協調のもとでの対応が必要とされています。

単なる規制強化だけでなく、資源の持続可能な利用、密漁・密輸対策の強化、養殖技術の向上など、複合的なアプローチが必要です。日本政府としても、国際社会に対してニホンウナギの適切な管理体制が機能していることを示しながら、実質的な資源保護対策を推し進める必要があるでしょう。

12月5日への注視

委員会での否決により一度は難を逃れたウナギ規制案ですが、12月5日の全体会合での再投票に向けて、日本とEUの攻防が繰り広げられることになります。わずかな票差で結果が変わる可能性もあり、今後の外交活動がどのように展開するかが注目されます。

ウナギという限定的な1種の動物を巡る議論が、国際的な資源管理、違法取引対策、そして日本の経済まで関わる大きなテーマとして浮上している状況が、このニュースの本質です。12月5日の全体会合での決定は、日本のみならず世界のウナギ資源管理に大きな影響を与えることになるでしょう。

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