ウクライナ出身・安青錦が大関昇進を決定
大相撲の新たな歴史が刻まれました。2025年11月26日、日本相撲協会は臨時理事会を開催し、関脇の安青錦(あおにしき あらた)の大関昇進を全会一致で承認しました。安青錦は平成16年3月23日生まれの21歳で、ウクライナ・ヴィンニツャ出身。身長182.0cm、体重140.0kgの体格を持つ力士です。
安青錦は令和5年9月場所に初土俵を踏んでから、わずか14場所での大関昇進という異例のスピード出世を成し遂げました。その快進撃は、令和7年11月の大相撲九州場所での初優勝で大きく加速しました。この優勝が大関昇進の決め手となり、相撲界内外から期待と祝福の声が上がっています。
外国出身大関の歩み、ウクライナは6カ国目
安青錦の大関昇進は、単なる個人の成功に留まりません。大相撲における外国人力士の活躍を象徴する出来事です。安青錦はウクライナ出身の大関として、外国出身大関としては6カ国目の国からの昇進者となります。
これまで大相撲の大関を輩出した外国は、ハワイ、ブルガリア、グルジア、モンゴル、そして今回のウクライナとなります。かつて大相撲は日本人力士の独壇場でしたが、昭和後期から平成にかけて外国人力士が増加し、令和の現在では大関という最高位に近い地位に外国出身力士が到達することが珍しくなくなっています。
安青錦の大関昇進は、大相撲が真の国際化を進んでいることを示す重要なマイルストーンとなりました。新興国からの力士受け入れ拡大の中で、ウクライナという国からの大関輩出は、相撲の国際的な広がりを改めて認識させるものです。
大関昇進伝達式とシンプルな口上
11月26日、使者として浅香山親方(元大関魁皇)と大島親方(元関脇旭天鵬)が福岡・久留米市の安治川部屋を訪れ、昇進伝達式が行われました。昇進伝達式は、大関への昇進が正式に決定したことを本人に知らせる重要なセレモニーです。この時、安青錦は新しい地位にふさわしい言葉を述べることが慣例となっています。
安青錦の口上はシンプルかつ誠実でした。新大関として臨んだ伝達式で、彼は「大関の名に恥じぬようまたさらに上を目指して精進いたします」と宣言しました。この言葉には、大関という新しい地位の重責を受け止めつつ、さらなる高みを目指すという強い決意が込められています。
短い口上の中に、大関という最高位に相応しい謙虚さと野心が両立している安青錦のコメント。力士の個性が表れる昇進口上の中でも、この簡潔さは多くの相撲ファンの心に響いています。
ハワイ勢と同じ「左曲げ」のまげ結い
安青錦の大関昇進に関連して、注目されている特徴があります。それは彼の「左曲げ」のまげ結いです。大相撲の力士のまげの結い方は流派によってさまざまで、力士の出身地や所属する相撲部屋によって特徴が異なります。
安青錦と同じ「左曲げ」のまげ結いは、ハワイ出身の大関たちが用いていた結い方と同じ様式です。このような細部にも、大相撲の国際化と、各国の力士たちがそれぞれの伝統や特性を保ちながら相撲界で活躍している様子が表れています。
外国出身力士が大関という最高位に昇進する背景には、相撲技術の高さはもちろん、日本の相撲文化に対する敬意と同時に、自らの個性や文化的背景も大切にする姿勢があるのです。安青錦の「左曲げ」のまげも、そうした多文化共存の象徴的な表現と言えるでしょう。
安治川部屋の快進撃と今後の期待
安青錦が所属する安治川部屋も、この昇進によって大きな注目を集めています。安治川部屋から大関が誕生すること自体が、この部屋の指導力の高さを証明するものです。部屋の親方をはじめとするスタッフの育成方針が、短期間での大関昇進という成果に繋がったと言えます。
安青錦の今後の活躍に期待が寄せられています。大関という地位は、単なる栄誉ではなく、新たな責任の始まりでもあります。大関に昇進した力士は、優勝や好成績を重ね続けることが期待される立場です。安青錦がウクライナ出身の大関として、そしてハワイ勢と同じ「左曲げ」のまげを結う力士として、大相撲の新しい時代を象徴する活躍を見せるか、相撲ファンの関心は一層高まっています。
大相撲の国際化を象徴する快挙
今回の安青錦の大関昇進は、大相撲という日本の伝統文化がいかに国際的な広がりを見せているかを改めて示す出来事となりました。ウクライナという遠い国からやってきた青年が、わずか数年で大相撲の最高位に近い大関という地位を手にしたことは、相撲の魅力と可能性を世界に発信するものです。
大関昇進の決定が全会一致で承認されたことは、安青錦の実力と人格が相撲協会内でも広く認められていることを示しています。新しい時代の大関として、安青錦がどのような活躍を見せるのか、令和7年初場所以降の彼の相撲に注目が集まっています。



