長崎で半世紀続く中国人墓地清掃──草の根の日中友好が紡ぐ温かな輪
長崎市で2025年11月24日、「中国人墓地」の清掃活動が約150人の市民や中国駐長崎総領事館の参加で行われました。国際情勢が冷え込みを見せる中、50年以上続くこの活動が改めて地域の日中交流の大切さ・あたたかさに注目を集めています。本記事では、長崎で根付く草の根交流の意義、活動の様子、参加者それぞれの思いや歴史的背景をやさしい言葉で解説します。
稲佐悟真寺国際墓地──長崎と中国のゆかりの場所
今回清掃が行われたのは長崎市稲佐町に位置する稲佐悟真寺の国際墓地です。ここは約400年前、1602年に中国から渡来した「唐人」をはじめ、海外貿易に携わったオランダ人、ロシア人など異国の方々が葬られた歴史ある墓地です。近世の長崎は日本における「海外への窓口」として栄え、こうした国際墓地の存在がその歴史を今に伝えています。
草の根の友好──墓地清掃に込められる想い
清掃活動は1974年、日中の国交正常化を受けて長崎県日中親善協議会が始めました。今年で52回目を迎えた伝統行事です。中国駐長崎総領事館をはじめ、地元企業や住民、学生から高齢者まで幅広い世代が集い、約2時間かけて草刈りや落ち葉の清掃に汗を流しました。
- 参加者のほとんどは長崎市の日本人住民で、中国出身の方々は「長崎の人々は本当に優しい」と感謝の言葉を述べています。
- 子どもと一緒に参加する親もおり、「ここでしかできない貴重な経験だから」と親子での参加を楽しむ姿も。
- 活動が進むにつれ「きれいになっていくのを見ると気持ちがいい」と語る方も多く、日中友好に寄せる思いが伝わってきます。
「民間交流こそ友好の力」──中国総領事の言葉から
今回の清掃には中国駐長崎総領事館の陳泳総領事も初めて参加し、現場でこう語りました。
「清掃活動は長崎と中国との古くから続く友情を体現しているものであり、市民が中国の華僑・華人に寄せる思いやりと温かい気持ちが示されている。総領事として私は必ず参加すべきだと考えている。民間交流には公式な交流を促進する力があり、これからも続けていきたい」
総領事はこの活動を「長年にわたる友好の伝統」と評価し、「民間による交流や信頼が両国の懸け橋を作っている」と強調しました。
長崎に根付いた友好の歴史と、未来への橋渡し
長崎華僑総会の楊爾嗣会長は「政治と民間交流とは別に考えていかないと。長崎だからこそできること。半世紀続いてきたからこそ、次の50年もつなげてほしい」と呼びかけました。
- 政治的な意見や国同士の関係がどれだけ変わろうとも、地域の人びとが互いに理解し合い、手を携える姿は揺るぎのないものです。
- 参加者のひとりは「上の人たち(=政治家など)がけんかしても、市民同士は仲良くしたい。輪になって一つになったほうがいい」と語り、穏やかな交流の大切さを伝えました。
地元住民と中国出身者、互いへの感謝を胸に
中国出身の参加者は毎年多くの日本人がすすんで掃除をしてくれることに触れ、「長崎の方は本当に素晴らしい、とても優しい。感謝しかありません」と述べています。
一方、日本側の参加者には「中国人の方々にとっても、この行事が少しでも心の安らぎや誇りにつながれば」という優しい想いがあります。市民同士が国籍や背景にとらわれず自然と手を取り合う姿は、国際都市・長崎ならではの柔らかな日中友好の現れです。
「清掃活動」という日中友好の架け橋
清掃活動は、ただ物理的に墓地をきれいにするだけの行事ではありません。異文化への理解や尊重、世代を超えるつながり、そして未来への希望が、参加者ひとりひとりの行動に込められています。
- 「みんなが輪になって一つに」──こうした思いが日中草の根の交流を育み、長崎の町に静かに息づいています。
- 長崎県日中親善協議会も「この清掃活動を日中友好の架け橋として今後も続けていきたい」としています。
- 公式な行事以上に、日々の暮らしと心に根ざした温かな交流が、両国の信頼と理解を積み重ねているのです。
子どもたちへ受け継がれる「優しい友好」の伝統
清掃活動には多くの子どもたちが親とともに参加しています。小学生の一人は「きれいになればいいなと思って」と純粋な気持ちで掃除をし、大人たちは「この経験が将来につながってくれたら」と語ります。
国際都市・長崎に生きる子どもたちにとって、多文化や異国の人びととの出会いはごく身近なもの。この清掃活動が実際に「優しい友好」の心を体験し、自然に受け入れていく大切な場となっています。
変わらぬ輪──日中市民交流の意義を問い直す
近年、日中両国の関係は時に緊張し、政府間レベルでは厳しい意見の応酬も報じられることがあります。しかし、長崎の清掃活動は「民間同士の信頼と友情は失われていない」ことを、静かに、そして力強く証明しています。
- 「上の人たちが何と言おうと、私たちは普通に仲良くしたい」と参加者が語るように、政治だけに左右されない人と人との結びつきが地域に根付いています。
- このやわらかな交流の輪が、これから先も日本と中国の平和と友好の土台となるでしょう。
まとめ──未来へつなぐ日中友好のかたち
清掃活動は、長崎の歴史と国際性、市民のやさしさが凝縮された行事です。参加者の多くが、「清掃しながら人と人の輪を築くことで、少しずつでも世の中を良くしていきたい」と願っています。
地道な行動こそが友情の種となり、やがて大きな信頼の花を咲かせます。「日中友好」を自他ともに支え合う草の根の交流が、長崎の街に深く、そして静かに根を下ろし続けています。
関連情報
- 清掃活動の主催:長崎県日中親善協議会
- 会場:長崎市稲佐町 悟真寺国際墓地
- 参加者:約150人(市民・企業・中国総領事館など)
- 清掃活動開始年:1974年
- 清掃の内容:草刈り、落ち葉掃除、献花など
- キーワード:日中友好・草の根交流・地域の日常と国際理解



