サイゼリヤの“注文アプリ”はなぜ話題?〜その背景と現場の変化〜
イタリアンファミリーレストラン「サイゼリヤ」が2025年秋以降、順次導入している注文アプリ。スマートフォンを使った新しいオーダー方式は、利便性の向上や現場効率化を狙った取り組みでありながら、公式発表やIT系メディア、SNS上で多くの議論を生みました。この記事では、その詳細や導入の狙い、ユーザーや店舗側の反応について、分かりやすく優しい口調でご紹介します。
導入背景:なぜアプリ方式?紙のオーダーからDXへの進化
2025年10月29日以降、南大沢駅前店をはじめとした一部サイゼリヤ店舗で、これまで長年親しまれてきた紙のオーダー用紙が廃止され、テーブルに設置されたQRコードを読み込むモバイルオーダー方式が採用されました。
この取り組みは、世界的なDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れや、飲食業界全体の人手不足、コロナ禍による非接触ニーズ拡大を背景に進められ、投資対効果や現場オペレーションの最適化を目指したものです。サイゼリヤの広報担当は「お客様への利便性向上と従業員の働きやすさを同時に実現するため」と説明し、タブレットの導入よりもコストパフォーマンスが高いと判断したとしています。
アプリの使い方と仕組み:シンプル設計のこだわり
- テーブルごとに設置されたQRコードをお客様が自身のスマホで読み取ります。
- スマホ上に注文ページが開き、まず人数を入力します。
- 続いて、紙のメニューやテーブル番号を見ながら、希望するメニュー番号と数量を入力します。
- 注文かごに商品を追加し、内容確認のうえ注文ボタンを押せば完了です。
この方式ではアプリのダウンロードは不要で、ウェブブラウザを利用した非常にシンプルなUI(ユーザーインターフェース)構成となっています。紙のメニュー表は引き続き各テーブルに設置され、家族や友人と複数人で同時にメニューをチェックできる点も特徴です。
導入後の反響:ユーザーの賛否と多様なリアクション
サイゼリヤの注文アプリ導入に対し、SNSや口コミサイト、ブログ媒体などで賛否両論の声が上がっています。
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「使いやすい」「時代に合っている」
直感的な操作やアプリ不要の簡単さを評価する声が目立ちます。
「スマホに慣れていれば迷わない」「家族全員でメニュー表を見ながら相談できるのが便利」といった肯定的な意見が数多く見られました。 -
「紙オーダーが良かった」「年配者や端末が苦手な人には不便」
一方、これまでの紙記入方式が好きだった人や、スマートフォン操作に不慣れな世代からは「最初は戸惑う」「高齢の親と行くときは説明が必要」などの指摘も。「端末がない場合や充電切れには対応できる?」といった懸念も寄せられています。 -
「UIが地味で分かりにくい」「ユニバーサルデザインが不十分」
見た目が昔ながらでシンプルすぎるため、「もう少し見やすくして欲しい」「スマホ表示だと小さく感じる」といった改善要望も指摘されています。
多様なお客様を対象とした全国チェーンゆえ、デジタル化の進度に個人差が現れやすい点が賛否の根底にあるようです。
店舗スタッフの声と現場の変化
スタッフの業務負担やオペレーションにも変化がありました。注文アプリ導入により、注文を聞く・伝票を起票する・ホール内を移動する頻度が減るため、「忙しい時間帯でも余裕を持ってサービスできる」「厨房との連携がスムーズになった」など、生産性向上の手応えが現場からも報告されています。
一方、「注文できず困っているお客様がいればすぐ案内やサポートに入りたい」という意識も強く、サイゼリヤでは全席を一律デジタル化するのではなく、紙の注文用紙やスタッフ対応も併用可能な運用が次第に検討されているようです。
他ファミレスチェーンとの違いとサイゼリヤならではの工夫
他の大手ファミレスチェーンでは近年、テーブル備え付けのタブレット端末によるセルフオーダー方式が主流となっています。その中で、サイゼリヤが全テーブル導入型タブレットではなくスマホアプリ方式を選んだ理由は以下の通りです。
- 導入コストの低減:タブレット端末を全席設置せず、専用アプリ開発投資や端末管理負担を減らす。
- 慣れた紙メニュー併用:家族やグループで実物のメニュー表を見ながら相談できる。
- 自分の端末で気軽に操作:アカウント登録やダウンロード不要、手持ちのスマホですぐ注文ができる。
これにより、経済合理性とユーザー体験の両立を狙った独自戦略となっています。
今後の課題・展望とユーザーへのメッセージ
デジタル化の推進は飲食業界全体で不可避の潮流です。しかし、すべての利用者に快適な体験を提供するためには、ITに不慣れな層への配慮や、誰もが迷わず使えるわかりやすい画面設計、紙オーダー等とのハイブリッド運用など、今後もきめ細かい改善が求められます。
サイゼリヤ自身、「現場スタッフの声やお客様のご意見を反映しつつ、より良い形を模索していく」としており、今後も段階的なアップデートやサポート強化が期待されています。
まとめ
- サイゼリヤの注文アプリは客席のQRコードを使ったスマートフォン型セルフオーダー方式。
- 低コストでの全店舗DX化、現場効率化が導入理由。
- スマホに慣れている人には便利、一方で高齢層やIT弱者には課題も。
- 現場スタッフの業務効率も向上したが、今後は「誰でも使いやすい」運用とサポート体制の拡充が期待される。
変わるファミリーレストランのオーダー体験。サイゼリヤの注文アプリ導入は、テクノロジーが飲食現場やお客様の日常にどのように定着していくか、そのひとつの象徴的な事例と言えるでしょう。今後の進化をやさしく見守りたいですね。



