JR東海、東海道新幹線でAIを活用した外国人案内サービスの実証実験を開始

JR東海(東海旅客鉄道株式会社)は、2025年12月15日から翌年3月中旬にかけて、東海道新幹線品川駅で訪日外国人向けAI多言語案内サービスの実証実験を行うことを発表しました。近年、訪日外国人観光客の増加に伴い、鉄道駅構内での言語面や案内面の課題が浮き彫りになっていましたが、AI技術を活用することで、スムーズで親しみやすい案内体制の構築を目指します。

実証実験の背景と目的

東海道新幹線は、日本の三大都市圏である東京・名古屋・大阪などを結び、日本国内はもとより、海外からの旅行者にとっても重要な交通インフラです。近年、コロナ禍を経て訪日旅行需要が急速に回復し、多くの外国人観光客が東海道新幹線を利用するようになりました。しかし、言語の壁や駅ナカの複雑な導線、券売機や改札機の使い方などで戸惑う外国人が多いという現状が、新たな課題として指摘されていました。

こうした状況を受けて、JR東海は従来の有人窓口や案内表示だけでなく、AIを活用した多言語対応のチャットサービスを導入し、観光立国推進や「おもてなし」強化に取り組むこととなりました。

AI案内サービスの特徴

  • 多言語対応:AIチャットは、英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語など複数の主要言語に対応し、訪日外国人が自身のスマートフォンから直接利用可能です。
  • 自然な対話形式:スマートフォンを通じて、駅構内の案内やきっぷ購入、乗り換え方法などについて自然な会話形式で質問・相談できます。これにより、スタッフが対応できる時間外や、混雑時でも安定した案内が期待されます。
  • 画像認識やリンク機能:実際のきっぷ売場や掲示物の写真をアップロードして質問できるなど、視覚的なサポート機能も検証されます。さらに、公式サイトや動画案内へのリンクも提案可能です。
  • 結論誘導型案内:「成田空港から新大阪まで行きたい」など目的を伝えるだけで、最適な経路、必要なきっぷ、乗り場までを案内します。きめ細かな対応が可能です。

利用方法・流れ

  1. 品川駅構内に設けられる専用の掲示などからQRコードを読み取り、スマートフォンでAIチャットを起動します。
  2. 言語を選択し、質問内容(例:「名古屋まで行くには?」「新幹線のきっぷ購入方法を知りたい」)をチャットで入力します。
  3. AIがリアルタイムで回答・提案を行い、必要に応じて関連画像や公式動画へのリンクも案内します。
  4. 利用者は、わからない点があれば追加質問を行うことができ、係員の補助が必要な場合は有人案内への誘導も行います。

実証実験の詳細と今後の展望

本実証実験は2025年12月15日から翌年3月中旬まで品川駅で実施され、期間中の利用者の反応や実際の案内内容、AIの精度などを検証する予定です。

今後の展開として、実証実験の結果をもとにAIサービスの精度向上や機能追加を図り、東海道新幹線の他主要駅や他路線への導入拡大を検討するとのことです。また、急増する外国人観光客の多様なニーズへの対応や、「国際観光都市・日本」の実現に向けて、鉄道のDX推進が大きく前進することが期待されています。

気になるAI案内サービスの強み

  • 多様な言語と使いやすさ

    訪日外国人は英語だけでなく中国語や韓国語など様々な言語を母語とするため、AI案内は多言語での即時回答ができることが強みです。
  • スタッフの負担軽減とサービス向上

    繁忙期や人手不足の場面でも安定して利用者対応ができ、スタッフはより複雑な問い合わせやケアが必要な場合に集中できます。全体的なサービス品質の底上げに寄与します。
  • 持続的なアップデートとデータ利活用

    実際の利用データをもとに頻出する質問や困りごとを分析し、AIの改善や駅の案内体制の強化に活かせます。将来的には観光案内や近隣施設との連携強化も期待されます。

AI案内導入に向けた社会的意義

「おもてなし」×テクノロジー

政府は2030年までに訪日外国人旅行者6000万人の目標を掲げており、観光業の国際競争力向上や地域活性化の観点からも、より柔軟で高品質な案内サービスが求められています。AI導入により、日本ならではの「おもてなし」精神と、最先端技術の融合が実現します。

鉄道利用者の多様化・国際化に対応するため、大きな転換点となる本取り組みが日本全体の観光体験向上にも貢献することが期待されています。今後も、実証実験の成果をもとに全国的なサービス普及・拡大が注目されます。

まとめ:さらなる進化が期待されるJR東海のAI案内実験

  • 品川駅を皮切りにしたAIチャットによる多言語案内は、訪日外国人の利便性と満足度向上に直結する挑戦です。
  • 今後も多様な利用データやユーザーフィードバックをもとに、サービス範囲や質の向上が見込まれます。
  • 鉄道を通じて「やさしい日本」「先端技術立国日本」の発信が加速し、円滑なインバウンド受け入れのモデルケースとして注目されます。

関連情報

  • 実証期間:2025年12月15日~2026年3月中旬(予定)
  • 場所:JR品川駅 東海道新幹線エリア
  • 案内内容:きっぷ購入、乗換案内、駅施設利用、観光情報提供など
  • 対応言語:英語・中国語(簡・繁)・韓国語 ほか

今後の課題と展望

AI案内はまだ発展途上の段階にあります。今後は
表現の自然さや多様な表現への対応力、文化的な感覚への配慮などの課題がありますが、JR東海はこれらの困難を乗り越えつつ、安全で快適な新幹線利用体験の提供を目指しています。

利用者の声やデータを積極的に取り入れたサービス改善と、AI技術のさらなる高度化が、今後の観光立国における鉄道の重要な役割を後押しすることは間違いありません。

参考元