小澤征悦が伝えるサステナブル最前線――余材から生まれる新しい価値「Ping-pong Block Project」
はじめに
2025年10月、東京・虎ノ門ヒルズで開催された「ETHICAL DESIGN WEEK TOKYO 2025」は、国内外から多彩なゲストと企業、そして若いクリエイターが集い、持続可能な社会へのアイデアと実践が交錯する注目イベントとなりました。なかでもひときわ注目を集めたのが、俳優・小澤征悦さんの参加と、中学生たちが作り上げた「端材の卓球台」、そして小澤さんが着用した“赤パンツ”です。この記事では、その背景やプロジェクトの詳細、エシカルデザインの最前線を分かりやすくお伝えします。
卓球台は“余材”から生まれる――Ping-pong Block Projectとは
イベントのメイン会場・オーバル広場で存在感を放っていたのは、色とりどりの“端材”で作られた卓球台です。このユニークな卓球台は、中野区にある新渡戸文化学園の中学生たちと博展、そして国内卓球ブランドバタフライの協力による「Ping-pong Block Project」から誕生しました。プロジェクトの主役は、ラケットの製造過程でどうしても生じてしまう端材(余材)です。本来であれば廃棄されるこれらの材料を、再び価値ある素材として生まれ変わらせる取り組みなのです。
Ping-pong Blockは、様々な色や模様の余材を組み合わせることで、まるでパズルのような趣きの卓球台やキーホルダー、ストリートファニチャー(ベンチ)として生まれ変わります。イベント期間中は、中学生たちが来場者と直接卓球を楽しんだり、自作のキーホルダーが当たるカプセルトイを案内したりと大忙し。ものづくりを通した“体験型サステナブル教育”の一環としてプロジェクトは進行しました。
“赤パンツ”に込められたメッセージ――小澤征悦さんの登場
今回のイベントで話題となったもう一つのシーンが、俳優・小澤征悦さんが「サステナブルな赤パンツ」を身に着けて登場したことです。彼の参加は、サステナビリティやエシカルなものづくりのムーブメントをより多くの人々へ広げる強いメッセージとなりました。
この“赤パンツ”自体も、再生可能な素材や環境に配慮した新しい資材を使用して製作されたもの。エコでありながら遊び心も感じさせるデザインが、人々の日常にサステナブルな選択肢を自然に取り入れるきっかけとなることを目指しています。小澤さんはイベント内で「身につけるもの一つでも、未来への責任や選択肢は広がる」という想いを語りました。
サステナブルなものづくりを支える技術と工夫
- ラケット端材を組み合わせて作られた卓球台は、バタフライのラケット同様に多彩なカラーデザインが特徴的です。パーツごとの色合いの違いや、組み合わせの妙によって他に類を見ない“アートピース”のような一台が完成しました。
- ピンポンブロックとして生まれ変わった端材の中には、凹凸のある素材も活用され、それがゲームに程よいアクセントを加えます。「失敗作」「ゴミ」ではなく、「素材」として新たな命が吹き込まれているのです。
- 会場内では、家具に使われないベニヤ板の端材などで作ったストリートファニチャー(ウッドベンチ)も展示されていました。木工クリエイティブディレクター・大西功起さんら職人が、一つひとつ丁寧にやすりがけし、寄せ木細工のようなオシャレなアイテムへ再生させています。
- 博展はイベント資材そのものについても、使い捨てにせず、再生可能・循環型の新素材に積極的に切り替えています。こうした取り組みがイベント全体にエシカル&ウェルビーイングのムードを与えています。
サーキュラーデザインとエシカル消費――「暮らし」に近いサステナブル
今回のイベントが伝えた最も大きなメッセージは、「私たちの暮らしも確実にサステナブルに変えられる」という点です。端材から生まれる新しいアイデアやデザインは、日常に“楽しさ”や“豊かさ”をもたらします。来場者は、実際に卓球台で友人や家族と遊んだり、カプセルトイでサステナブルなキーホルダーを手に入れたり、寄せ木ベンチで一息ついたり――持続可能な「循環」を五感で体験することができました。
とくに新渡戸文化学園の中学生たちがプロジェクトの推進役を担っていたことは、教育現場における探究学習の成功例とも言えるでしょう。身近な環境問題から「自分ごと」として考え、手を動かし、社会へ発信する。そのプロセス自体こそが、次世代に向けた持続可能な社会の構築へ着実に繋がっています。
企業・団体の連携が生むエコイノベーション
Ping-pong Block Projectの実現には複数の企業・団体の連携がありました。卓球用品ブランド・バタフライは、国内を代表する卓球メーカーとして長年培ってきたものづくりの技術や、サステナブル素材への関心でプロジェクトをサポート。博展はイベントのための什器や材料、その選定基準を抜本的に見直し、循環型の資材開発・利用へ取り組みました。
そして、新渡戸文化学園の生徒たちが主体となり、「身近にある環境問題をどのように解決するか」をテーマに研究(探究学習)を続け、発表する場としてETHICAL DESIGN WEEKのプロジェクトを選び、地域社会との連携を深めてきたのです。
会場全体に広がる“サステナブル体験”
- 会場には、あと6回もプラスチックに再生できるアクリル板や、廃材をリサイクルした什器など、実験的かつ実用的なサステナブルアイテムが満載でした。
- イベントを訪れた多くの人が、遊びや体験を通じてリサイクル・再生素材の魅力や可能性に触れ、「エシカル消費」「循環型社会」への意識を高めています。
- 小澤征悦さんの“赤パンツ”は、再生材料を使った上でユーモアや個性を忘れない、ファッションにおけるエシカルデザインの一例としてSNSなどでも大変な反響を呼びました。
人と環境がつながる未来へ
ETHICAL DESIGN WEEK TOKYO 2025に現れた「Ping-pong Block Project」は、“余材をゴミにしない”というシンプルながら力強いメッセージに満ちています。そして、俳優・小澤征悦さんや生徒たちの挑戦が、「再生」「循環」「共創」という未来につながるキーワードを現実のものとしています。
今後も、端材や余材といった一見「不要」に見えるものが、アイデアと技術、そして社会を巻き込んだ連携によって新たな価値を生み出し続けるでしょう。豊かな暮らしとサステナブルな社会は、まさに私たちの「すぐそば」にあるのです。
おわりに――誰もが参加できるサステナブルな社会づくりへ
イベントを訪れた人々の姿、ピンポンブロックを作る中学生たち、赤パンツでメッセージを伝える俳優――「ETHICAL DESIGN WEEK TOKYO 2025」は、誰もが楽しく前向きに参加できるサステナブルな社会の実現に向け、小さな「一歩」を大切にする意義を改めて教えてくれました。
それぞれの立場でできることに取り組み、明るい未来を育んでいく。その輪が社会全体に広がっていくことを願ってやみません。

