北野天満宮の大福梅授与と迎春行事

京都を代表する北野天満宮では、毎年12月になると新しい年を迎える準備が本格化します。その中でも特に注目を集めているのが、無病息災を祈願する縁起物「大福梅(おおふくうめ)」の授与です。境内では巫女たちが手際よく大福梅の包装作業を進め、参拝者の安全と幸せを願う伝統が続いています。

大福梅とは?

大福梅は、北野天満宮の神職や巫女が丹精込めて育て、6月の梅の実の収穫から丁寧に塩漬け・土用干しを経て作られた干し梅です。長い時間をかけて仕上げられるこの梅は、12月13日から「事始め」の日に授与が始まり、正月の元旦にお茶に入れていただくことで、その年の無病息災や家内安全、招福を祈るとされています。

授与の時期と流れ

  • 授与期間:2025年12月13日(土)~12月25日(木)(なくなり次第終了)
  • 授与開始時間:8:30~(予定)
  • 場所:北野天満宮 境内
  • 授与料:700円

12月13日は京都では「事始め」として正月準備を始める特別な日です。北野天満宮の境内で準備された大福梅は、巫女たちが奉書紙にひとつひとつ丁寧に包んでいきます。これは新しい年に向けて心を込めて作業することで、ご利益がより増すと考えられています。

大福梅づくりのこだわり

北野天満宮の大福梅は、その年の6月上旬から境内で採取された梅を、神職や巫女総出で塩漬けし、梅雨明けには「土用干し」を行います。約4週間、すのこの上でじっくり干し上げられた梅は、その後も11月下旬まで樽で熟成され、最終的に12月に授与用として包装されます。

  • 使用される梅は境内で育った約2.5トンにも及びます。
  • 土用干しの伝統的な工程は、天日でしっかりと梅を乾燥させ、ご利益を確かなものにするという意味があります。
  • 梅が仕上がると、奉書紙に包み「大福梅」として授与されます。

正月に大福梅をいただく意味

正月の朝、いただいた大福梅を白湯やお茶に入れて飲むことで、その年の無病息災や家内安全、家族の健やかな成長を願う習慣が受け継がれています。また、新年の祝膳の際にこの「初茶」としていただくことは、京都の多くの家庭でも古くから行われている重要な儀式です。

北野天満宮の年末・迎春行事と梅の信仰

北野天満宮は学問の神様として知られる菅原道真公を御祭神としています。道真公が生前に特に梅を愛したことから、境内には約1500本・50種に及ぶ梅が植えられ「天神さんの梅」として親しまれています。毎年2月25日には「梅花祭」も開催され、梅の花とともに新年の幸せを願う人々で賑わいます。

  • 12月13日:大福梅授与開始(「事始め」)
  • 2月初旬~3月下旬:梅苑の公開、2月25日「梅花祭」など、梅に因んだ春の行事も充実しています。

こうした行事を通して、道真公への信仰とともに、厄除けや家族の健康を願う人々の温かな気持ちが北野天満宮に息づいています。

大福梅の現代的な意味と郵送授与

現代では疫病退散や家内安全はもちろん、ささやかな幸せや心の安らぎを願うお守りとして全国から注文が寄せられるようになっています。また、遠方の方や参拝が難しい人のために郵送授与も受け付けており、伝統が現代の生活にも自然に息づいています。

他地域の正月菓子 「福梅」 との関係

北陸・金沢では正月を祝う伝統菓子「福梅」づくりも12月中旬から下旬にかけてピークを迎えます。福梅は主にお菓子ですが、縁起物として新年の無病息災や幸福を願う点で、北野天満宮の「大福梅」と通じるものがあります。日本各地で形は異なれど、人々が新年に健康と幸福を祈る風習が連綿と続いていることが分かります。

北野天満宮の大福梅を通じて広がる幸せ

北野天満宮の大福梅は、新年を迎える大切な節目に、健康と幸福への強い願いと共に贈られる京都の象徴的な縁起物です。年末の厳かな空気の中、丁寧に調製された大福梅を受け取り、家族そろっていただくことで、日々の暮らしに幸せの種がまかれていきます。伝統と祈りが息づく冬の京都――北野天満宮の大福梅は、これからも多くの人々の心に寄り添っていくでしょう。

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