ツルハを巡る最新動向――イオンによるTOBに揺れる業界、レデイ薬局の完全子会社化も

はじめに

日本のドラッグストア業界は今、大きな変革期を迎えています。中でも2025年後半、ツルハホールディングス(以下、ツルハ)を巡る「TOB(株式公開買付)」や、「レデイ薬局の完全子会社化」の話題は、業界関係者や投資家の注目を集めています。この記事では、イオンによるTOBの背景や今後の展望、ツルハの企業動向まで、わかりやすく解説します。

イオンによるツルハHDへのTOB――その目的と波紋

まず最も注目されるのは、イオン株式会社によるツルハHD株のTOB(株式公開買付)です。イオンは、ウエルシアホールディングス(以下、ウエルシア)との経営統合後、ツルハに対してTOBを実施し子会社化する計画を明らかにしました。このプロセスは業界最大級のM&Aとされ、今後のドラッグストア市場の勢力図を大きく塗り替える出来事です。
公開買付価格は1株あたり2,280円(株式分割前は11,400円)とされており、2025年12月上旬からの開始が予定されています。これは、2025年4月10日時点の終値2,080円に対し9.6%の上乗せです。

  • 公開買付者:イオン株式会社
  • 買付価格:2,280円(株式分割前11,400円)
  • 買付株数:57,012,650株(株式分割後)
  • 主な目的:ツルハとウエルシアの統合による、日本最大のドラッグストアグループ形成
  • 公開買付代理人:野村證券

しかし、このTOBは発表と同時に暗雲が立ち込めています。ツルハの株価はウエルシアと同様、2025年11月中旬に年初来高値を更新。その要因には、両社の好調な業績や経営統合に対する期待感がありました。そのため、TOB価格が株価上昇分を十分に反映していないという指摘や、既存株主の反発も強く、アクティビスト(もの言う株主)から物言いもつきやすい構図となっています。

ツルハとウエルシアの経営統合――業界最大グループ誕生へ

ツルハとウエルシアの経営統合は、2025年12月1日付で「株式交換」を通じて実施される予定です。これにより、ツルハがウエルシアを完全子会社化し、イオンはその持株比率を高める計画です。統合グループの売上高は2兆円超、店舗数は5,000店以上となり、マツキヨココカラ&カンパニーなど他の大手チェーンを抜く業界最大の連合体が誕生します。

  • 統合スケジュール(予定):
    • 2025年12月1日:ツルハHD・ウエルシアHDによる株式交換効力発生
    • 2025年12月上旬:イオンによるツルハHDのTOB開始
  • 統合後グループ規模:売上高2兆円超、店舗数5,000店以上
  • 狙い:仕入れや運営効率向上、競争激化への対応、消費者への更なる低価格化

この巨大グループの誕生は、小売業界や消費者、取引先など幅広い層に大きな影響を及ぼす見込みです。背景には物価高騰を受けた消費者の節約志向強化があり、ドラッグストア業界がその役割拡大を迫られています。

既存株主と市場の反発――TOB価格への疑問

TOB価格2,280円は一見プレミアムつきですが、経営統合発表後のツルハ株価は急騰し、TOB価格と市場価格の乖離が広がっています。「もっと高い価格でなければ株主の納得は得られない」との声もあり、買収の成否や交渉の行方に大きな注目が集まっています。

  • TOB価格が市場価格に比べ低く設定されており、既存株主に利益をもたらすか不透明
  • 今後の交渉次第で、TOB条件やプレミアムの見直しも余地あり
  • アクティビストなど外部株主からの動きも警戒されている

一方、イオンとしては「日本最大のドラッグストア連合体創出」という狙いがありますが、価格面での調整や株主説得には時間や労力が必要と見られています。証券会社なども今後の推移を注視しています。

ツルハ、レデイ薬局の完全子会社化で地域強化へ

TOB騒動と並行して、ツルハは2025年11月、中国・四国エリア中心に展開するレデイ薬局を完全子会社化すると発表しました。母体となるフジから195億円で残り49%の株式を取得し、100%子会社化を実現。これにより、ツルハは西日本での基盤を固め、さらなる商圏拡大と競争力強化を目指します。

  • レデイ薬局とは:中国・四国地方を中心とする有力チェーンで、幅広い医薬品や日用品、ヘルスケア商品を取り扱う
  • 取得額:195億円(株49%分)
  • 戦略的意義:
    • レデイ薬局の完全子会社化で西日本地方のネットワークを強化
    • スケールメリットによる調達・物流効率化、店舗運営ノウハウの共有
    • 全国規模でのブランド力、協業による売上・利益拡大

この動きは、店舗間の連携や販促戦略統一など、今後さらにグループシナジーを発揮する土台になると期待されています。

ツルハが目指す未来――ドラッグストア業界の再編と成長戦略

ツルハホールディングスは、全国最大規模の店舗ネットワークと利益規模を背景に、「予防・健康・生活支援」を深める新たな取組みを進めています。特に、ドラッグストアの役割は処方箋調剤、緊急時の薬提供、生活必需品の安定供給という点で、都市部のみならず、地方においても今後ますます重視される存在となっています。

  • 経営統合やM&Aによるスケールメリットの追求
  • 多様な業態との協業(調剤薬局・食品スーパーなど)
  • 物流・調達プラットフォームの効率化
  • デジタル化や顧客データ活用による新サービス開発

業界自体が再編の波にあるなかで、ツルハや統合グループには消費者のニーズ対応力や、サプライヤーとの交渉力、デジタル化対応力などが強く求められています。

まとめ

2025年末、イオンによるツルハのTOBと、それに対する既存株主の反発、ツルハによるレデイ薬局の完全子会社化――ドラッグストア業界では複数の大きな動きが同時進行しています。今後は、TOBの成否によるグループ再編の是非、地域拡大戦略の進捗、そしてそれらが消費者や従業員にどのような影響を及ぼすのか、注目が集まります。

ツルハ・イオン・ウエルシア連合が小売の未来をどう変えていくのか、日本のドラッグストア業界が次にどのようなステージへ進むのか――今後も動向から目が離せません。

参考元