宇垣美里と家族に伝わる「初代 諏訪蘇山の香炉」の物語―歴史と価値、そしてつながりを紡ぐ瞬間

宇垣美里が明かした一族の系譜と“教科書に載る親族”

宇垣美里さんは、兵庫県神戸市出身で、TBSのアナウンサーを経て現在はフリーアナウンサーや女優として幅広く活躍しています。その宇垣さんが、2025年11月18日に放送されたテレビ東京の人気番組「開運!なんでも鑑定団」にゲスト出演し、スタジオに大きな驚きを与えました。

宇垣さんが番組内で語ったのは、自身の高祖父(曽祖父の父)の弟が教科書に載っている人物だという事実です。その親族は宇垣一成という名前で、大正から昭和前期にかけて陸軍大臣や内閣の重職を歴任し、特に「宇垣軍縮」で歴史的に知られる人物でした。

番組では、「家にはいろんな珍しいものがあって『なぜこんなものがあるんだろう』と子どもの頃から不思議に思っていた」と語り、宇垣家のルーツや歴史に思いを馳せる素直な気持ちも披露しました。

「初代 諏訪蘇山の香炉」―お宝の来歴と鑑定依頼のきっかけ

この日の宇垣さんの“お宝”として持ち込んだのは、家族の間で大切に受け継がれてきた初代 諏訪蘇山(すわ そざん)作の青磁袴腰香炉でした。これは、宇垣一成が手に入れ、大事に所蔵していたとされています。

「もし本物でなかったらどうしよう」と心配しながら、宇垣さんは大切な品を番組に持ち込む決意を語りました。「家族にも“もしかしたら偽物かも”と話したことがあるけれど、それでも私たちにとっては大事な家族の思い出。でも、専門家の鑑定で本当の価値を知りたい」という気持ちが素直に伝わる場面でした。

初代 諏訪蘇山とは何者だったか

初代諏訪蘇山(1847−1918)は、明治から大正期に活躍した、日本を代表する陶芸家の一人です。特に中国・南宋時代の“砧青磁”の色彩や質感に強く傾倒し、日本独自の技術と美意識で再現することに心血を注ぎました。そのため、彼の作品は当時の中国でも本物と誤認されるほどの完成度でした。

代表作のひとつである「青磁袴腰香炉」は、透明感のある淡い青色が特徴で、蘇山はこの色を出すために粘土に金属性クロムを混ぜ、独自の釉(うわぐすり)をかけて焼成していました。

また、あまりにも精巧だったため、中国の北京で一時“偽物”扱いを受けたことから、以後、全ての作品に自らの判子(印)を押すようになったという逸話も残っています。この香炉は、彼が晩年となる大正6年から11年(1917〜1922年)の間に作られたものと断定されています。

開運!なんでも鑑定団での鑑定と驚きの結果

番組では、焼き物・茶道具分野の権威である中島誠之助鑑定士によって鑑定が行われました。香炉を手に取った中島氏は「間違いなく初代諏訪蘇山の作品」と太鼓判を押し、「青磁袴腰香炉」で間違いないと断言しました。

蘇山独自の「龍泉窯の砧青磁」を再現しようとした技術背景や、その色味の出し方、作品の銘や形状など、複数の観点から本物との見解が述べられました。香炉の状態も非常に良く、「大正期の名品」と高く評価されました。

そして番組恒例である“本人評価額”に対し、鑑定結果はなんとその3倍もの価値があると発表され、宇垣さんやその家族を大いに驚かせました。

宇垣家に受け継がれる「宝物」とは―家族と教科書の接点

宇垣さんが手にした初代諏訪蘇山の香炉は、単なる美術工芸品としての価値だけでなく、家族の歴史の象徴でもありました。奥深い青磁の色と柔らかな姿、そこに込められた陶芸家・蘇山の挑戦の歴史、そしてそれを見出し残してきた宇垣一成の存在。

「教科書に載っている人が家族の中にいることが、ただ誇らしいというよりも、自分たちのルーツや誇り、そしてその人が大事にしていたものを次世代につなげていくことの大切さを感じます」とコメントする宇垣さん。“名士の血”というよりは“思い出の品”としてのぬくもりや誇りが溢れていました。

番組を見た人々からも「家族の歴史が香炉に刻まれている感じがして素敵」「宇垣さんが大事にされてきた理由がよくわかった」という温かい声が寄せられました。

香炉がつなぐもの―歴史、美、家族、そして未来へ

  • 諏訪蘇山の香炉は、日本陶芸史に残る傑作であり、当時中国でも本物として扱われたほどの名品
  • 宇垣家では宇垣一成を介して大切に伝来し、家族の歴史や思い出の中心的存在
  • 宇垣美里さんの「教科書に載っている親族」は、個人のルーツや家族のアイデンティティについても新たな視点を投げかけた
  • 「なんでも鑑定団」での驚きの鑑定結果は、宇垣家にとって特別な思い出となり、視聴者にも歴史や伝統の価値を再認識させる機会になった

宇垣美里さんが語る「家族や先祖がどんな時代を生き、どんなものを大切にしてきたのか」という物語は、今を生きる私たちにも「自分のルーツをたどることで新しい発見や誇りが得られる」ことを教えてくれます。

改めて感じる“家族の歴史を見つめる時間”の意義

鑑定団を通じて判明した香炉の価値もさることながら、その背後にあった家族の思い出や親族とのつながり、普段は意識することのない自分自身のルーツ。「教科書に載った偉人」と「日常を重ねる家族」が、ひとつの器を介してつながっていることに、多くの人が心を動かされたのではないでしょうか。

品物やお金だけでは測り切れない“家族の歴史”の価値、一見平凡な生活の中にも潜む驚きや誇り。そして、それを丁寧に語り継ぎ、次世代へ残していくことの大切さを、宇垣美里さんの体験を通じて改めて思い起こさせられます。

「先祖が大切にしてきたものを今の自分が手にすることで、その時代や人の息遣いを感じられる。きっと、これからもずっと大切に守っていきたい」――宇垣さんのこうした言葉には、時を超えて家族の心がつながっている確かな実感が込められています。

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