自賠責保険からの繰入金5700億円、一括返還へ 高市首相が明確な意向
2025年11月19日、大きな注目を集めたニュースが飛び込んできました。それは「自賠責保険」から一般会計に繰り入れられていた資金のうち、約5700億円が一括で返還される方向で政府が調整を進めているというものです。この動きは、長年議論されてきた問題にようやく大きな進展が見られたもので、自動車ユーザーの間でも大きな関心を集めています。
自賠責保険とは?
自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は、日本で自動車を運転するすべての人が加入が義務づけられている保険です。この保険の目的は、交通事故に遭った被害者を迅速に救済すること。保険料は自動車ユーザーが支払い、そのお金は「自動車安全特別会計(特会)」という専用の財源として管理されています。
特会に集められた資金は、主に交通事故で重い後遺症を負った方の治療費やリハビリ費用、事故防止対策、自動車の検査・登録業務などに使われています。つまり、自賠責保険のお金は「被害者支援」や「安全対策」のために使われるべきものなのです。
なぜ繰り入れが問題になっていたのか?
しかし、1994年と1995年の2年間、国の財政難を理由に、自賠責保険の特会から一般会計に計1兆1000億円以上が繰り入れられました。これは、本来被害者支援などに使われるべき資金が、国の予算不足を補うために使われたということです。
その後、2003年までに一部は返還されましたが、その後の返還は長期間滞っていました。2018年度からは少しずつ返還が再開されましたが、それでもまだ5700億円以上が未返還のままになっていました。この状態が長く続いていたため、「本来の目的に使われるべきお金を返してほしい」という声が、国民や野党から繰り返し出されていました。
一括返還の動きが加速
今回、自民党の小林鷹之政調会長が国民民主党の浜口誠政調会長と会談し、「高市早苗首相の意向として、完全に解決したい」と伝えました。そして、2025年度の補正予算で約5700億円を特会に戻す方向で調整が進められていることが明らかになりました。
浜口政調会長は会談後、「首相の決断に敬意を表する」と述べ、国民民主党の玉木雄一郎代表も「自動車ユーザーにとっての負担軽減にもつながる大きな一歩だ」と評価しています。この動きは、与野党の間で実務的に共有され、補正予算案に盛り込まれる見通しです。
返還で何が変わる?
この5700億円が特会に戻れば、交通事故の被害者支援や安全対策の財源が厚くなります。特に、重度の後遺障害を負った方の専門医療施設の運営などに支障が出ることも懸念されていましたが、返還によってこうした問題の解消が期待されます。
ただし、返還がすぐに保険料の値下げにつながるとは限りません。保険料は制度収支や事故発生の動向、将来の見通しなど複数の条件で決まるため、返還だけですぐに安くなるわけではありません。それでも、本来の目的に資金が戻ることで、制度の安定化や透明性の向上が図られるのは確かです。
国民の声が後押し
近年、SNSなどでは「スピードが遅い」「全額を早く返してほしい」という声が根強くありました。こうした国民の声や、野党の要望が、今回の補正予算での一括返還という踏み込みにつながったと考えられます。
今後は、返還された資金の使途や、被害者支援・事故防止の効果を具体的な指標で公開していくことが求められます。また、費用構造の見える化や、審議会での丁寧な説明、データ公開の拡充なども重要です。
制度の透明性と信頼回復
自賠責保険の資金は、自動車ユーザーの負担によって成り立っています。そのお金が本来の目的に使われることで、制度の透明性が高まり、ユーザーの信頼も回復します。今回の返還は、制度のガバナンス(統治)の原則を確認する意味でも大きな一歩です。
今後は、費用構造の点検や業務効率化の成果を審議会で継続的にレビューし、契約者に説明していくことが求められます。返還が「当然」のことであるという認識を広げていくことも大切です。
まとめ
自賠責保険からの繰入金5700億円の一括返還は、長年の課題に終止符を打つ大きな動きです。被害者支援や安全対策の財源が厚くなり、制度の安定化や透明性の向上が期待されます。自動車ユーザーにとっては、負担軽減にもつながる大きな一歩です。今後の補正予算案の国会審議や成立、そして執行の動きに注目が集まります。




