デンソー、カーエアコン用ホース・配管事業をマルヤス工業へ譲渡検討 ―業界最大手が下した決断
株式会社デンソー(本社:愛知県刈谷市)は2025年11月18日、グループ企業である「株式会社デンソーエアシステムズ」が手がけるカーエアコン用ホース・配管事業について、競合であり協業関係のあるマルヤス工業株式会社(本社:愛知県岡崎市)への譲渡を検討することで基本合意したと正式に発表しました。この事業は、国内でおよそシェア5割を誇る大規模なものです。そのため、今回の発表は自動車業界や投資家のみならず、広く社会や株式市場にも大きな関心を呼んでいます。
本記事では、このニュースがなぜ大きな注目を集めているのか、譲渡の背景や今後の見通し、さらに投資家の関心が高いデンソーの株価への影響について、できるだけ分かりやすく解説します。
1. 譲渡の概要と当事者企業について
- 譲渡対象:デンソーエアシステムズの全株式およびデンソーが保有する同事業の製造機能の一部
- 譲渡候補先:マルヤス工業株式会社(自動車部品の熱交換器や配管分野で知られる企業)
- 現時点での合意:「基本合意」(今後さらに詳細項目を検討し、最終合意を目指す)
※譲渡実行は各国地域の競争法当局の審査承認などが条件になる予定です
デンソーエアシステムズは1974年よりデンソーが資本参加し、エアコン部門の中核として車室空間の快適性や省エネルギーに大きく貢献してきた会社です。この事業が生み出す製品は、自動車の環境負荷低減や省エネ技術発展とも深く関わってきました。
2. 国内シェア5割の重要性―なぜ話題になっているのか?
デンソーのカーエアコン用ホース・配管事業は、国内シェアの約半分を握る実力者です。この規模の事業譲渡は、部品業界の技術力・産業構造、取引の流れ全体に影響しうるため、多くの企業や市場関係者が注目しています。
特に自動車メーカー各社にとって、カーエアコンの冷媒を循環させるホースや配管は「安全・快適・環境性能」を支える必須部品であり、その安定供給体制の維持は極めて重要とみなされます。
このため、国内外のメーカー、関連の株式市場、サプライチェーン全体が今回の発表に非常に敏感に反応し、業界紙だけでなく一般メディア、投資家まで巻き込んだ大きなニュースとなっています。
3. デンソーとマルヤス工業の思惑と背景
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デンソー側の意図:
・今後はさらなるEV、ZEVの領域や知能化・自動運転技術など、次世代に向けたコア領域へ自社リソースを集中させる狙いがあります。また、「持続可能な供給体制の構築」や「事業競争力の強化」のため、より専門性と競争力のあるパートナーへの承継が望ましいと判断しました。 -
マルヤス工業側の狙い:
・これまで吸排気、燃料、冷却水配管など多様な車両配管をカバーし、高度な技術・生産体制を構築してきました。デンソーのホース・配管事業吸収でさらに事業拡大・多角化を図り、「世界有数の知見」を持つサプライヤーとして存在感の強化が期待されます。
4. 業界・取引先・従業員への影響
この譲渡により、エアシステムズの技術・人材が新たな体制のもとで更なる成長を目指す一方、デンソーは競争力あるパートナーに事業を託すことで、取引先各社の安定的な部品供給体制を確保し、車両の省エネ・脱炭素技術の普及を後押しできるとしています。関係する従業員についても、新体制下でこれまで以上に専門性を発揮し、相互の企業基盤を活かし合うことが方針として掲げられました。
これにより、お客様や社会に「より大きな価値提供」を行う狙いがうかがえます。
5. 今後の流れ(2025年11月時点)
- 今後、譲渡内容の詳細条件や事業譲渡のスケジュールについて、両社で具体的協議が進められます。
- 最終的な譲渡実施には、各国・地域の競争法当局の承認などが条件となり、これらのクリアが必要とされています。
- 引き続き公式発表や進捗情報などが、デンソーやマルヤス工業から発表される見込みです。
6. デンソーの株価への影響
デンソーの株価は、このような経営資源のシフトや非中核事業の整理が「成長分野への集中」「収益性向上」など企業全体の将来性につながると見なされ、一定の注目・期待が集まりやすいタイミングです。今回の発表は、短中期的に投資家心理の材料となる可能性が高いと考えられます。
一方で、カーエアコンホース・配管事業は製販の規模も大きいため、譲渡に伴う損益、構造改革コスト、取引先との関係再編、譲渡の進展タイミングなどは注意ポイントです。株価が上昇するか下落するかは、こうした詳細条件や今後の全体戦略次第となるため、市場関係者も引き続き動向を注視しています。
そのため、今後しばらくは「譲渡条件」「業績見通し」「デンソーとしての次の成長戦略」「マルヤス工業のシナジー効果」など関連情報がデンソー株の値動きに影響を与え続けるでしょう。
7. まとめ
- デンソーが国内シェア5割の重要事業分野を譲渡する決断は、業界に構造転換をもたらしうる大きな動きです。
- 株価など市場の反応は今後の戦略や市場環境、最終合意の詳細発表、譲渡後の成長ストーリーに左右されます。
- 今後も公式な発表や経過報告に注意し、最新ニュースを確認することが大切です。
今後もデンソーは、モビリティ社会の発展とともに、より価値ある製品創りや持続的成長を続けていくことが期待されます。



